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暗号資産の申告分離課税とは?税率20%・適用時期・対象範囲を解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

暗号資産の利益にかかる税金が、いまの最大およそ55%から20%程度へと引き下げられる見通しになりました。株式やFXと同じ申告分離課税に移るためです。

ただし、税率がすぐに変わるわけではありません。制度を定める法律は2026年に成立したものの、適用は2028年以降になる見通しで、対象も国内登録業者が扱う特定暗号資産に限られる見込みです。

本記事では、現行の課税との違い・施行のタイミング・対象となる取引について紹介します。

暗号資産の申告分離課税とは?現行の雑所得課税との違い

申告分離課税がどんな仕組みか、そして現行の雑所得課税と何が違うのかを解説します。

現行の雑所得課税と新制度の申告分離課税

現在、暗号資産の利益は原則「雑所得」に区分され、総合課税の対象になります。給与などほかの所得と合算され、金額に応じて税率が上がる累進課税で、所得税と住民税を合わせて最大で約55%に達します。

課税されるタイミング

  • 日本円に換えたとき:(例)保有するビットコインを売却し日本円を受け取った場合
  • 別の暗号資産に交換したとき:(例)ビットコインをイーサリアムに交換した場合
  • 支払いに使ったとき:(例)暗号資産で商品やサービスの代金を支払った場合

なお、ステーキングやレンディングの報酬は、受け取ったときと売ったときの2段階で課税されます。受け取り時はその時点の時価が雑所得となり、売却時は受け取り後の値上がり分が課税対象になります。

一方、保有しているだけで値上がりした「含み益」には課税されません。売却などで利益を確定させて初めて、税金がかかります。

※税額の計算や確定申告の手順は、記事末尾の関連ガイドもご覧ください。

改正後は、この利益をほかの所得と切り離し、一律の税率で課税する申告分離課税へ移る見込みです。所得の大小にかかわらず同じ税率が適用され、上場株式やFXに近い扱いへと変わります。

出典:金融庁「令和8年度税制改正大綱(金融庁関係の主要項目)」(2025年12月)

現行制度と新制度の違い一覧

現行制度と新制度の違いを5つの観点でまとめました。なお新制度には、まだ確定していない見込みの部分が含まれます。

現行制度と新制度の違いの5つのポイント

項目 現行制度(雑所得・総合課税) 新制度(申告分離課税・見込み)
課税方式 総合課税 申告分離課税
税率 累進・最大約55% 一律20%程度*
損益通算 雑所得の中のみ 暗号資産の所得内で通算(見込み)
損失の繰越 不可 翌年以後3年間可能(改正法で規定済み・適用は施行後)
確定申告 原則必要 原則必要(源泉徴収の仕組みは設けられない見込み)
*所得税15%+住民税5%を基本とした税率(復興特別所得税等を除く)。

変更されるのは税率だけではありません。今は繰り越せない損失を翌年以降に持ち越せる点も、注目のメリットとなりそうです。

なぜ分離課税に変わるのか|金融商品取引法への移行という背景

なぜ分離課税へと変わるのか、背景にある金融商品取引法への移行について解説します。

資金決済法から金融商品取引法へ|「金融商品」となる意味

日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)によると、国内の口座数は2026年6月末で約1,444万口座に達しています。多くの人が関わる以上、株式並みに投資家を守るルールも必要になってきます。税制が海外に見劣りすると資金が国外へ流れかねないとの声もあり、長年のテーマとなっていました。

これまで暗号資産は、資金決済法のもとで「支払いの手段」として扱われてきました。今回の改正では、暗号資産の位置づけが金融商品取引法(金商法)のもとへ移り、株式などと並ぶ「金融商品」として扱われます。土台となる改正法は、2026年7月15日に参議院本会議で可決・成立しました。決済の手段から投資の対象へと、法律上の役割が大きく変わります。

出典:JVCEA「暗号資産取引月次データ(2026年6月次)」

参照:CoinPost「暗号資産を金融商品に」金商法改正案が参院本会議で成立(2026年7月15日)

【WebX2026】金商法・税制改正の舞台裏

2026年7月開催のWebX2026では、ビットバンク廣末紀之氏・bitFlyer加納裕三氏・河合健弁護士が登壇し、この制度転換がどのような経緯で実現したかを語りました。分離課税の実現には金商法の枠組みへの移行が前提になるという議論が業界内で広がり、タスクフォースを組んで当局と交渉を重ねてきた経緯が明かされています。

セッションの全文レポートはこちら:日本のクリプト大転換期 金商法・税制改正の舞台裏(WebX2026)

申告分離課税はいつから適用されるのか

制度が実際に適用されるまでのスケジュールと、移行期に気をつけたいポイントを解説します。

成立から施行、そして2028年以降の適用へ

実際に適用されるまでには、法律の成立から施行まで3つの段階を経ます。

分離課税が適用されるまでの3ステップ。2026年3月に法律成立(確定)、2027年に金商法改正の施行(見込み)、2028年1月以降に税率適用(見込み)

適用までの3ステップ

  • 法律の成立
    分離課税を盛り込んだ改正所得税法は、2026年3月31日に成立・公布済み
  • 金商法改正の施行
    分離課税はこの施行を条件に動き出します。施行は2027年との見方が有力ですが、正式な日付は今後の政令で決まり、まだ確定していない
  • 税率の適用
    施行日を含む年の翌年1月1日以後の譲渡などから適用されると定められている

施行が2027年なら、その翌年、2028年1月1日以後の利益から対象になると言われています。もっとも施行日は政令待ちのため、確定ではなく2027年中の売却がどちらの課税になるかも現時点では定まっていない状態です。

出典:金融庁「令和8年度税制改正大綱(金融庁関係の主要項目)」(2025年12月)

移行期に気をつけたい3つのポイント

適用開始をまたぐ売却では、注意したい点が3つあります。売却時期を検討する際は、以下のようなポイントを意識しておくとよいでしょう。

移行期の注意点

  • 適用前の売却益
    分離課税が始まる前に売却した利益は、これまでどおり総合課税の対象になる見込み
  • 長期保有分の扱い
    昔に買って長く持ってきた暗号資産でも、適用開始後に国内の取引所で売却すれば分離課税の対象になるとされ、取得時の価格を計算し直す必要はない
  • 移行前の損失
    制度が切り替わる前に確定させた損失は、新制度の利益とは相殺できない見込み

参照:泉絢也税理士事務所「暗号資産の分離課税の適用開始と経過措置」

出典:国税庁「令和8年度 譲渡所得等のあらまし」

税率と損益通算はどう変わるのか

税率20%の内訳と現行制度との差、損益通算・損失の繰越の変化をまとめて解説します。

20%の内訳と、現行の最大約55%との差

改正後の税率は一律20%とされ、内訳は所得税15%と住民税5%で、いずれも改正所得税法に定められています。復興特別所得税を含めると20.315%になり、上場株式やFXの利益にかかる税率と同じ水準です。

現行の総合課税では復興特別所得税まで含めて最も高い場合で55.945%に達するため、最も高い税率の層に限ればおよそ35ポイントも下がる計算になります。

ただし、復興特別所得税を含めた20.315%という数値の明示や、暗号資産向けFAQの改訂など、細かな取り扱いは今後固まっていくとされています。なお、もともと税率が低い層では恩恵の受け方も変わります。詳しくは後述します。

出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」国税庁「令和8年度 譲渡所得等のあらまし」

損益通算と損失の繰越はどう変わるか

損失の扱いについても、現行と新制度で主に以下のような変更があります。

損失の扱いの変化

  • 現行制度
    暗号資産の損失は雑所得の中でしか差し引けず、給与などとの相殺も翌年への繰り越しも不可
  • 新制度
    分離課税の対象取引で出た損失は、翌年以降3年間繰り越し可能(改正法で規定済み)。ただし実際に使えるのは適用開始後で、繰り越しには損失が出た年も含めた確定申告が必要
  • 株式との通算
    暗号資産の損益を上場株式などと相殺することは、現時点ではできない見込み。改正法では、暗号資産の損失は他の所得との損益通算が認められておらず、通算できるのは特定暗号資産の取引内に限られます。暗号資産の所得は株式とは別のグループとして扱われるため、税率が同じでも通算は不可

出典:金融庁「令和8年度税制改正大綱(金融庁関係の主要項目)」(2025年12月)

【コラム】「暗号資産も株と同じ20%になる」は本当かどうか

「暗号資産も株と同じ20%になる」という風に受け止めている方も多いかもしれません。ただし、注意点もあります。

分離課税の対象になるのは、一定の要件を満たす特定の暗号資産を、国内の登録された業者を通じて売却した場合に限られるとされています。同じビットコインでも、取引の方法によって税制上の扱いが異なる可能性があります

今後は「どこで売るか」という取引の経路そのものが、税負担の面でも重要になります。自身の取引がどちらの扱いになるのかは、早めに意識しておきたいところです。

同じ暗号資産でもどこで売るかで税率が変わる。国内の登録業者を通じた売却は申告分離課税20.315%(見込み)、海外取引所・DEXでの売却は総合課税で最大約55%のまま

暗号資産の税制改正で他に何が変わるか

税制以外に加わる投資家保護のルールや罰則強化について解説します。

投資家保護と無登録業者への罰則強化

金融商品として扱われると、税制以外にも次の2つのルールが追加される見込みです。

新たに加わる投資家保護ルール

ルール 内容 狙い
インサイダー規制 未公表の重要な事実を知る立場の人による、公表前の売買を禁止 一部の関係者だけが有利に取引できる状況を防ぐ
情報開示の義務 特定暗号資産の発行者に年1回の情報公表を義務づけ 取引の透明性を高める

あわせて、ルールを破る側への取り締まりも強まる見通しです。報道によれば、無登録で暗号資産の取引業を営んだ場合の罰則は、拘禁刑の上限が3年から10年へ、罰金も300万円から1,000万円へ引き上げられる方向とされています。

また、上場投資信託(ETF)を組成する点についても整備が進んでいます。ETFの仕組みや投資の方法は、記事末尾の関連ガイドで扱っています。

出典:金融庁「令和8年度税制改正大綱(金融庁関係の主要項目)」(2025年12月)

分離課税になると投資家にどう影響するか

利益規模や売却タイミングによって有利・不利がどう分かれるか、具体的に解説します。

利益規模と売却タイミングで分かれる有利・不利

利益が積み上がるほど税率が上がる現行制度から一律20%程度へ移れば、大きな利益が出ている人ほど税負担は軽減されます。1,000万円の利益に最も高い税率がかかっている人なら、税額が数百万円単位で変わることもあります。

ただし、すべての人が減税になるわけではありません。有利か不利かは、課税所得の水準によって異なります。

課税所得の水準別に見た分離課税の影響。330万円超は有利になりやすい、195万〜330万円はほぼ変わらない水準、195万円以下は不利になる場合も

課税所得の水準別に見た分離課税の影響

課税所得の水準 現行の税率(住民税込み) 分離課税への移行
330万円超 30.42%以上 有利になりやすい
195万〜330万円 20.21% ほぼ変わらない水準
195万円以下 15.105% 不利になる場合も

分離課税は「利益が大きい人ほど得をする」制度と考えておくのが実態に近いでしょう。

【コラム】結論が持ち越された論点3つ

今回の改正で税制が完成したわけではなく、次の課題が持ち越されています。

次回で問われる3つの課題

  • ETFの扱い
    暗号資産のETFを株式と同じ枠組みで課税する仕組みには、まだ詰められていない部分が残る
  • DeFi・ステーキングの扱い
    DeFiやステーキングで得た報酬が分離課税の対象になるかは、現時点では明確ではない
  • 施行の時期
    前提となる政令がまだ定められておらず、いつ動き出すかは未確定

制度が本格的に固まるのは、政省令や国税庁の指針が出てからになりそうです。

よくある質問(FAQ)

暗号資産の分離課税についてよく寄せられる質問にお答えします。

暗号資産の申告分離課税はいつから適用されますか?

2028年以降が有力ですが、まだ確定していません。適用は金商法改正の施行翌年1月1日からですが、施行時期を定める政令が現時点で出ていないためです。

税率は何%になりますか?

一律20%程度になる見込みです。所得税15%と住民税5%で、復興特別所得税を含め20.315%とされます。ただし復興特別所得税込みの20.315%の明示や、暗号資産向けFAQの改訂はこれからで、現時点では見通しの数値となります。

過去に出した損失も繰り越せるようになりますか?

新制度で出た損失は翌年以降3年間繰り越せます(改正法で規定済み)。ただし実際に使えるのは適用開始後です。一方、制度が始まる前に確定させた損失は、さかのぼって新制度の利益と相殺できません。

株式の損益と相殺できるようになりますか?

暗号資産の損益を株式と相殺することは、できないとされています。暗号資産の所得は株式とは別のグループとして扱われるため、税率が同じ水準でも通算の対象にはなりません。

申告分離課税になると確定申告は不要になりますか?

確定申告が不要になる可能性は低いとされています。株式のような源泉徴収の仕組みは暗号資産には設けられない見通しで、利益が出た年は申告が必要になりそうです。とくに損失の繰り越しを使う場合は、利益が出ていない年でも申告が求められる可能性があります。

まとめ

国内での暗号資産の税金は、大きな転換点にあります。

本記事のポイント

  • 制度は成立ずみ、適用はこれから
    法律は2026年に成立したものの、適用開始は2028年以降になる見通し
  • 税率は最大約55%から20%程度へ
    復興特別所得税を含めると20.315%とされ、上場株式と同じ水準になる見込み
  • 対象は限られる
    分離課税が使えるのは国内の登録業者を通じた特定暗号資産に限られ、海外取引所やDeFiは総合課税のまま残るとされている
  • 損失は3年繰り越せる(改正法で規定済み・適用は施行後)
    株式との相殺はできず、繰り越しには毎年の申告が必要

制度が切り替わってから記録をたどり直すのは大変なため、売買の日付・金額・取引所は今からでも残しておくと良いかもしれません。

なお本記事は2026年8月時点の情報に基づくものです。実際の税額や、いつ売るのが得かは状況で変わるため、迷ったときは税理士など専門家に相談しましょう。

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