R3レポート「ほとんどの中央銀行デジタル通貨は大口を対象とする」
中央銀行デジタル通貨はホールセールが主な対象
米大手ブロックチェーン企業R3によると、現在、各国の中央銀行が構想している中央銀行デジタル通貨(CBDC)のほとんとは、消費者向け(リテール)のものではないという。
R3は4月に「中央銀行デジタル通貨、決済イノベーション」と題したレポートをリリース。その中で現在のところ、基本は消費者向けのCBDCの開発は進めていないという。
レポートによると、CBDCは大口を対象とするもの(ホールセール)と消費者を対象とするもの(リテール)に分類できる。前者は参加者が金融機関に限定されており、後者は企業または個人まで参加できるとの設定だ。
大口CBDCは中央銀行にとってシステムを最新化するステップになるが、リテールCBDCは「中央銀行デジタル通貨へのアクセスをより拡大する機会になり得る」と見られる。
「リテールCBDCを作成する試みは現在のところほぼない。一般的には、中央銀行の資金に直接アクセスできない企業など一般社会向けだ。よって、リテールに向けたCBDCは、今までになかった新たな試みとなる」、とR3は指摘し、一部の中央銀行がリテールCBDCについても可能性を探り始めたところだと付け加えた。
3種類の小口CBDC
レポートによると国際決済銀行(BIS)は、リテールCBDCのアプローチを3つ挙げている。
- ハイブリッド型
- 間接型
- 直接型
ハイブリッド型は、中央銀行がCBDCを発行するが、仲介機関がリテール決済を促進するもの。
間接型では、例えば商業銀行など中央銀行ではない機関が、中央銀行に裏付けされたステーブルコインを発行する。
直接型は、中央銀行が、利用者に直接CBDCを発行し、届けるものである。
CBDCがすでに実験段階にある中国では、中国人民銀行がリテールCBDCを発行し、国内商業銀行のネットワークを通じて償還するハイブリッドモデルの可能性について議論しているという。
現在のところ、デジタル人民元発行の仕組みとしては、中央銀行が金融機関の同額の準備金と引き換えにデジタル人民元を発行。さらに、その金融機関が利用者の預金やキャッシュとデジタル人民元を交換するという構想が有力だ。
デジタル人民元は現在、4つの地域で試験運用されており、蘇州では5月に公務員が受け取る手当の一部(交通費手当)がデジタル元で支給される予定。さらに、中国のマクドナルドやスターバックス、サブウェイなど19の小売企業は試運転対象店舗として招待されている。
参考:R3
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します