ビットコイン半減期から3日、見えてきた「最新状況」 100万円突破の裏でマイナーの適者生存競争
ビットコイン半減期から3日、見えてきた「最新状況」
仮想通貨市場は14日〜15日にかけて、ビットコインが急伸。再び100万円の大台に達し、米ドル建て1万ドルも視野に入る。
ビットコイン半減期を目前に1時間で14万円幅下落した市場価格も回復。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が景気に強い警戒を示したことで、大幅続落したダウ工業株30種平均に逆相関した。
米株価指数S&P500の相関性も、コロナ危機の世界経済の混乱に影響された3月〜4月水準から大幅に低下。4月16日の0.53から0.15へ、直近2カ月で最も低い数値を記録した。
コロナ禍の経済不確実性
2020年に入り、ビットコイン関連取引を視野にいれるヘッジファンドも増加傾向にある。
2020年4月以降にジェームズ・シモンズ率いるルネッサンス・テクノロジーズ、ポール・チューダー・ジョーンズ率いるチューダーBVIグローバルファンドと有力ヘッジファンドが続き、JPMorgan Chaseも米仮想通貨取引所を相手方に銀行サービスの提供を許可した。
半減期を経て、供給量が年間1.7%に減少することでデジタル・ゴールドとしての性質が強まったビットコインは、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、世界経済は高い不確実性と重大な下振れリスクが高まるなかで、金融資産、リスクヘッジ資産としての見直しが進んでいる。株式市場の低迷と金利引き下げが、ビットコインの追い風になっている状況だ。
米国経済については米国時間13日、ピーターソン国際経済研究所が主催するバーチャルイベントで公演を行なったパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が、新型コロナウイルスに伴う景気悪化に強い懸念を示し、「第2次世界大戦以降のどの不況よりもはるかに悪い」との認識を示した。
数多くの経営破綻や失業の長期化を危惧し、新型コロナウイルス感染拡大の経済への打撃を和らげるため、政府の取り組みをより一層強化する必要性を強調した。
各国で経済を優先した行動規制の緩和が行われているが、コロナ収束の目処が立たない中で、冷えた消費行動は元に戻ったとは言い難い。
中央銀行や国家の経済対策を好感した株買いが優勢となる一方、実体経済の悪化が表面化する中で、世界中の国が大きな債務を抱える問題も浮き彫りになりつつある。コロナ禍が長引くと金融危機につながる可能性も危惧されるところだ。
CMEは先週末の窓埋め
14日に急伸したビットコインは、現物取引の高値は9945ドルをつけた。当時、意識されたのはCME(米シカゴ・マーカンタイル取引所)の窓埋めアノマリーだ。
ビットコインが急伸した当時、CMEのビットコイン先物は現物との乖離を伴い1万ドルに到達。半ば強引な窓埋めを完了した。
株式市場でも大幅ギャップアップ・ギャップダウンした場合の「窓埋め」はチャートパターンとして意識されやすく、ビットコイン市場でもコロナ危機前の2月24日、半減期直前の5月7日も1万ドル到達時に意識されたのがCMEの窓埋めとなっていた。
半減期後、本当にビットコインマイナーは問題なかったのか?
金融市場からビットコインの資産性が見直される中、改めて冷静に判断したいのが、ビットコインを取り巻く環境だ。
半減期直後は、ハッシュレートの大幅な低下は見られず、半減期に備えてきたマイナーの稼働継続と一旦は状況に安堵感が見られていたが、どうも半減期から2日たった状況を見る限り、安易にそうとは言えない状況が見えてきた。
まずはデータから見ていく。
ビットコインハッシュレートの変化
ハッシュレートは、ビットコイン半減期から2日後から下落する傾向が見られており、半減期直前の120EH/sから90EH/sに減少した。半減期6時間前に一時144EH/sまで増加したハッシュレートから考えれば、大幅な減少値だ。
また、プール別のハッシュレートでみると、半減期前にハッシュレート上位に位置していたプールのハッシュレートが減少。一方、新規にハッシュレートを強めるプールも出てきていることがわかった。全体のハッシュレート見れば、予想を超える大幅な減少傾向とまでは至っていないが、プールごとの適者生存競争は水面下で行われていることを示すデータだ。
メモプール推移
ビットコイン(BTC)のメモリプール(mempool)もマイニングハッシュレートの影響を受け、急増している。
メモリプール(mempool)とは、ユーザーによって送信された取引が一時的に置かれるプールのことで、正しいnonceを発見したマイナーが、メモリプールからブロックを作成しブロックチェーンにつなげる権利を獲得。ブロックが生成される。
ビットコインでメモリプールが急増したのは4月から数えて3度目。1回目は、ハッシュレート高に伴い難易度が大幅に上昇したことを受け、ハッシュレート低下が影響。2回目は価格が100万円まで急騰したタイミングで、トランザクションが増加したことも影響した。
一方、今回はハッシュレートとトランザクションの両側面が影響しているものとみられる。すでに直近数ヶ月で最も高い水準までトランザクションが詰まっており、トランザクションの処理が間に合っていない状況が確認されている。
CMEオプション出来高が急増
また、マイニング業者の動向を見る上で、CMEのビットコイン関連取引の出来高も注目したいデータだ。
CMEのビットコインオプション取引は、ビットコイン半減期から大幅高となっており、マイナーが収益運用の際に用いるヘッジニーズも影響している可能性がある。
新たに勢力図を伸ばすプールも
上述したように、半減期を経て事業規模を縮小するプールもあれば、存在感を示すプールも出てきている。
注目すべきは、中華系プール「Lubian.com(路边)」だ。
これまで実名プールとして稼働していなかった点から、プールスタッツを表示するサイトによっては「Unknown」で表示される。
ビットコインネットワークの6%近くのシェアを獲得しており、全プールでも5位〜7位あたりに位置している。
Lubianはプールの実名プールとなっているが、ホームページを見る限り、現時点ではEメールのみで受付している状況。中国事情通のDovey Wanによると、ハッシュレート自体が急上昇しているわけではないため、元プライベートプールから、半減期のタイミングで存在感を示した可能性がある。
業界の声は?
デジタルアセットマネージメントcapriole.ioの責任者Charles Edwardsは今回三回目のビットコイン半減期について、価格と採掘コストのネガティブ乖離について見解を披露し、「ビットコイン歴史で、最も残酷な半減期」と指摘した。
理由は、現在の価格ではこれまで全てのマイナーが事業を維持できないことだ。
Edwardsによると、半減期による報酬減額で、多くのマイナーが事業を維持できるビットコインの生産コストは1BTCあたり、14000ドルになる試算だ。現在の価格では、損失が出るマイナーも出ていると指摘する。
2回目の半減期(2016年)では、10%の生産赤字に留まったが、今回の半減期後に、FOMO(パニック買い)が起きなかった場合、30%ほどのマイナーが降伏するかもしれない。
生産コストの参考金額については、2019年12月に多くのマイナーや大手ファンドCoinsharesから取得した証言によるものだ。電気代として0.04ドル/kWhが基準、その他にはマイニングマシン代、人件費やマイニングファームの借地などの固定コストが重なる。総合すれば、電気代は総コストの約60%を占めている。
昨日投稿した「ポスト半減期」のコストチャートによると、電気代0.03ドル〜0.04ドルでは、13920ドル〜15816ドルの間が新たな総コストになる。ビットコインがこの価格帯に到達しない限り、損益分岐点を下回るマイナーは機械を止めざるを得ない状況に至っている。
2020年半減期まで、同じ電気代でも総コストは6960ドル〜7908ドルの間に位置していたと説明した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します