仮想通貨BATとは|急拡大する新世代のブラウザ「Brave」の特徴と将来性

次世代型ブラウザBraveで利用できるBATとは

BAT(Basic Attention Token/ベーシックアテンショントークン)とは、現在のデジタル広告業界の課題を解決するために開発されたトークンです。BATは、プライバシーに焦点を当てたブラウザ、Braveのネイティブトークンであり、Braveの新たな広告モデルにより、デジタル広告業界が大きく変容する可能性があると多くの注目を集めています。国内の仮想通貨取引所でも、BATを取り扱う取引所が増えてきています。

1. BATの基本概要

1-1 BATの特徴

BATは、ウェブブラウザBraveのネイティブトークンかつユーティリティトークンです。Basic Attention TokenのAttentionとは「関心」を意味し、ユーザーも広告主もパブリッシャー(サイト運営者)も損を被らない、ユーザーの関心を基盤にしたエコシステムの構築を目指しています。

BATは、ユーザー、広告主、およびパブリッシャーの間で交換が可能です。BATを使って、広告やサービスを利用することもできます。

Brave Softwareは分散型かつオープンソースの、プライバシーに焦点を当てたデジタル広告プラットフォームを提供しており、イーサリアムブロックチェーン上に構築されています。 同社が提供するブラウザ「Brave」は、イーサリアム上に構築されているプラットフォームを使うためのインターフェースとしての役割を持っています。

Braveブラウザには、デフォルトで広告ブロック機能が搭載されています。それにより、広告を読み込む時間が削減され、ブラウジングがより高速かつ快適になります。またBraveでは、不正広告(マルウェアの拡散や情報窃取を目的としたオンライン広告)およびトラッカーもブロックされるため、ユーザーのセキュリティやプライバシーも保護されます。

1-2 BATの発行用途

BATは、仲介業者や詐欺が蔓延しているデジタル広告業界の課題を解決し、新たな広告モデルを作り上げることを目的として開発されました。BATプラットフォームでは、ユーザー、広告主およびパブリッシャーを分散的な方法でつなげることで、この課題に取り組んでいます。

BATは、ユーザーの関心を基盤にしたBATエコシステム内で、価値尺度として利用されています。

1-3 コンセンサスアルゴリズムの概要

Braveブラウザのユーザーのプライバシーを守るためことを目的とし、匿名性に重点をおいた台帳型システム、ANONIZEアルゴリズムを採用しています。このアルゴリズムはゼロ知識証明(略: ZKP/zero-knowledge proof)を採用し、ブラウザ上の認証と取引記録を処理します。

1-4 Brave広告の仕組み

Braveでは、ユーザーのプライバシーを第一に考えた広告モデルを提供しています。

従来のデジタル広告モデルでは、広告主は各自広告に関するデータを持ち、そのデータに基づいて、DSP(広告主が費用対効果を高めるために最適化されたプラットフォーム)を介してユーザーを見つけています。反対にパブリッシャー側では、cookieを利用してSSP(広告を掲載するパブリッシャーの収益を最大化するためのプラットフォーム)にデータを渡しています。

DSPとSSP間において、リアルタイムの入札(RTB)が行われることで、取引が生じ、ユーザーに広告が表示されています。このシステムでは、広告主とパブリッシャーの利害が一致している一方で、ユーザーの同意なしで広告が表示されています。これにより、ユーザーの知らないところでデータが共有され、広告用の画像や動画をダウンロードさせられるという問題点があります。

Braveのプライバシー保護広告では、DSP、SSP、およびRTBといった仕組みは使われていません。代わりにユーザーの合意の元で、ユーザーのデバイス上のデータを使って、負担にならないサイズの素材の広告が表示されます。ユーザーが求めていない、または知らない通信は全く行われません。

広告主は、どのようなユーザーをターゲットにしたいかをまとめたカタログをBraveに提供します。一方でユーザー側では、ユーザーのデバイス上で、ユーザーの特徴がBraveブラウザにより分析されます。広告主が提供するカタログ、およびデバイス上で分析されたユーザー情報に基づいて、ユーザーのデバイス上で広告のマッチングが行われます。このシステムにより、ユーザーの情報がデバイス外に出ることがなく、ユーザーのプライバシーが保護されています。

1-5 ローンチ(資金調達)時期

トークンセール開始日 2017年5月31日
トークンセール終了日 2017年5月31日
調達額 約3,500万ドル(当時のレートで約39億円)

2. ユースケースの紹介

BATのエコシステムは、以下のようなトライアングル構造になっています。基本的には、Braveブラウザが、ユーザーの関心を計測し、パブリッシャーはユーザーからBATを受け取ることができます。

出典:Brave

ユーザーは、自身の関心に対してBATで報酬が支払われます。つまり、広告を視聴するとBATが付与されます。ユーザーはBATを利用して、BATプラットフォーム上のプレミアムコンテンツやサービスにアクセスすることが可能です。また、受け取ったBATを、お気に入りのパブリッシャーに投げ銭のように贈与することもできます。自動的に特定のパブリッシャーにBATを送付することができる、自動支援機能の設定も可能です。ユーザーの関心はBraveブラウザ上で、プライバシーを保護した形で計測されます。ユーザーのデータがデバイス外に出ることはありません。

パブリッシャーは、現時点では、上述のようなユーザーからの投げ銭や自動支援機能を通じて、BATを受け取ることができます。

広告主は、中間者が介在しないので、広告表示に同意したユーザーにのみ、効率的に広告を届けることができます。また、従来の広告でリーチが難しかったユーザにも、広告を届けることができます。

3. 関連サービスの紹介

3-1 パートナーシップ紹介

Braveは、業界内外の様々な企業と提携して、その規模を拡大しています。海外での提携先には、TAP Network、Binance、Everipedia、Townsquare Media, Inc、およびCheddarなどがあります。

国内の提携

日本では、7月に国内最大手取引所のbitFlyerとの提携を発表しました。国内でBraveとパートナーシップを結ぶのは、bitFlyerが初になります。

bitFlyerは、4月にBATの取り扱いを開始しました。BraveおよびbitFlyerは、Braveユーザー向けの仮想通貨ウォレットの共同開発を開始しました。また、仮想通貨およびブロックチェーンの認知度を高めるための、共同マーケティングにも取り組む予定です。

参考:bitFlyerとBraveが共同開発、Braveブラウザで仮想通貨BATの受取・利用が日本で初めて可能に

業界外の提携

Braveは、仮想通貨業界外の企業ともパートナーシップを結んでいます。6月には、eSportsチーム「Rush Gaming」、および世界的K-POPスターの防弾少年団(BTS)と提携を結びました。

この提携により、ファンに向けて限定版のブラウザが提供され、トップページにはeスポーツ選手や防弾少年団のメンバーが表示されるようになりました。また、Rush Gamingに対しては、受け取ったBATを送付することで支援も行えます。

参考:「Braveブラウザ」が防弾少年団やeスポーツチームと連携、BATポイントの利用も

3-2 BATポイント(日本におけるBATの報酬システム)

日本では、資金決済法等の法律遵守のために、BATではなくBATポイント(BAP)が利用されています。

BAPはBAT価格と連動しており、BATと同様に、広告視聴の報酬として受け取ることができます。受け取ったBAPをお気に入りのクリエーターやウェブサイトに送付できる点も、BATと同じです。

しかし、BAPの購入、およびBAPとBATの交換はできません。Braveは、今後日本でBAPを利用できるパートナーを開拓していく予定とのことです。

4. 開発チーム概要

4-1 社名/拠点

社名 拠点
Brave Software, Inc サンフランシスコ

(2020年9月時点)

4-2 開発者名/経歴

開発者名 経歴
Brendan Eich Braveの共同創設者およびCEOであり、非営利テクノロジー企業のMozillaを設立し、オープンソースのウェブブラウザFirefoxの開発に貢献しました。また、最も広く利用されているプログラム言語、JavaScriptの開発者でもあります。
Brian Bondy Braveの共同創設者および開発責任者として知られています。Brave創設以前はKhan Academy、Mozilla、およびEvernoteで手腕を発揮し、MozillaではFirefoxプラットフォームのシニアエンジニアを務めました。
Yan Zhu Braveの最高情報セキュリティ責任者です。MITで物理の学士を取得後、デジタル社会での自由な言論の保護活動を行う電子フロンティア財団の特別研究員を務めました。また、2015年にはフォーブスが選ぶ30歳未満の30人にも選出されています。
Ben Livshits Braveの将来的なイニシアティブリサーチを担当する主要研究員です。インペリアル・カレッジ・ロンドンで准教授を、ワシントン大学で客員教授を務め、MITで教鞭を取っていました。またマイクロソフトリサーチで10年間研究員も務めました。
Brian Brown Braveのビジネス部門責任者として、他の企業とパートナーシップを構築し、BATプラットフォームのビジネス開発を行っています。
Bill Engles 財務担当者として長年の経歴を誇り、Braveでは最高財務責任者を務めています。過去20年間にわたり、上級管理職として、スタートアップから大企業に至るまで、主に技術関連企業を率いてきました。
Brad Richter 16年以上にわたるプロダクトデザイン、UXおよびビジュアルコミュニケーションチーム牽引の経歴を持ち、Braveでは2015年から設計責任者を務めています。Brave参加以前にLuidia Inc.を共同設立し、同社で設計代表者を務めました。
Brian Clifton ソフトウェアエンジニア業界で長年の経歴を誇る、Braveのエンジニアおよび開発担当責任者です。Brave以前は、Godaddy.comやIntelでエンジニアを務めていました。
Jimmy Secretan セントラルフロリダ大学でコンピュータ工学を学び、同大学の機械学習研究室でPh.Dを取得しました。卒業後はテクノロジー業界でキャリアを積み、現在はBraveにてサービスオペレーションの責任者を務めています。
Mandar Shinde BraveにてプロダクトおよびBATエコシステムの責任者を務めています。
Des Martin マーケティングリードや起業の経験を持ち、Braveではビジネス開発およびマーケティング責任者を務めています。
Donny Dvorin Braveの営業責任者です。Brave以前は、Never Stop Marketingでゼネラルマネージャーを務め、マーケティングおよび広告でのブロックチェーン活用に関する教育をリードしていました。
Marshall Rose ネットワーク管理や分散型台帳管理などを専門とし、インターネット領域全体に貢献してきました。Braveではエンジニア主任を務めています。ネットワーク管理分野の著者としても知られています。
Luke Mulks 起業やフリーランスの経験を経てOAOで広告プロダクトの責任者を担当しました。Braveには2016年に広告技術専門家として参加し、現在はビジネス開発を率いています。2019年の40 Under 40にも選ばれました。
Peter Snyder Braveでプライバシーに関わるリサーチを行い、ウェブ上のセキュリティおよびプライバシー向上に貢献しています。

(2020年9月時点)

5. BATの過去情報

イベント 日付 詳細
最初のトークンセール 2017年05月31日 最初のトークンセールを行い、わずか30秒で約3,500万ドル(当時のレートで約39億円)を調達しました。
BAT Mercuryのローンチ 2017年10月12日 BATがBraveに統合され、BraveがBATプラットフォーム上初のアプリケーションになりました。Brave決済システムがBATウォレットに組み込まれ、ウォレットの残高がBATで表示されるようになりました。
Chromiumベースのデスクトップリリース 2018年12月7日 Chromiumベースのデスクトップ (version 0.57)がリリースされました。これにより、以前のMuonバージョンより22%高速化され、拡張機能のインストールが可能になりました。
Brave Adsリリース 2019年04月24日 オプトイン広告(ユーザーの事前許可が必要な広告)であるBrave Adsがリリースされ、ユーザーは視聴したい広告を選べるようになりました。Brave Adsでは、ユーザーのプライバシーが保護されています。
Brave 1.0のローンチ 2019年11月13日 Brave 1.0がローンチされ、ユーザーはパブリッシャーへBATを支払うことができるようになりました。Brave Shieldが導入され、デフォルトで広告およびトラッカーがブロックされるようになりました。
Chromiumベースのアプリリリース(Android) 2020年4月6日 Android版BraveアプリがChromiumベースに変更されました。これにより実装が簡単になり、Androidでの将来的な拡張機能のサポートが期待されています。
MAU1500万人突破 2020年6月1日 月間アクティブユーザーが1500万人を超えました。これはBrave 1.0のローンチ時と比較して50%の成長率です。

6. ロードマップの概要

Brave Release(公式リリース版)の2020年第3四半期のロードマップには、以下が含まれます。

  • ステートレスなソーシャルメディアに対するプライバシー保護配置
  • 広告およびトラッキングブロック用にCNAMEフィルターを追加
  • より優れた広告ブロック、およびウェブ互換性のためのデフォルトフィルターリストの改善
  • iOSプレイリスト機能
  • 企業サポート(グループポリシーのテンプレートおよび書類)
  • Greaselionと呼ばれるサイトに特有なスクリプトを使用してBrave Rewardチップシステムを改善し、新たなプラットフォームの追加、および管理の容易化
  • 広告の関連性の向上(USのみ)
  • ストレージプロテクトの改訂
  • トップレベルのURLブロック
  • 7. 取り扱いのある主要な仮想通貨取引所

    21年7月現在、BATはbitFlyer、bitbank、GMOコインなど計7ヶ所の暗号資産取引所で取り扱われています。

    関連:BraveのbitFlyer連携、クリエイターがBATの受取・利用可能に

    関連:仮想通貨取引所bitbank、BAT(ベーシックアテンショントークン)の新規取引扱いを発表

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    「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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