Messari、米大手取引所コインベース株式上場に関する分析レポートを公開
データ企業MessariがコインベースのIPOを分析
暗号資産(仮想通貨)の分析に特化したデータ企業Messari社は2日、米大手仮想通貨取引所コインベースの上場申請書類の調査レポートを公開した。
月間アクティブユーザー数280万人を抱えるコインベース・カストディに預け入れられた仮想通貨総額は、相場高騰や機関投資家の需要拡大などの影響により、仮想通貨の全体時価総額の内、約11%もの規模に達していることがわかった。
コインベースの企業価値
Messari社は、コインベースが2月末に米証券取引委員会(SEC)へ提出した書類(S-1)を基に企業価値を算定。約13.5兆円(1270億ドル)と結論づけた。
同社のみる企業価値は、コインベースのPSGレシオを基に算出された数値だ。PSGレシオは企業の利益成長率の視点から株価の価値を測る指標で、主流なPEGレシオの派生版とされる。取引量の伸び悩んだ2019年にはマイナス業績の四半期があった為、PSGレシオの分析が適しているとの判断から活用された。
一方、時価総額13.5兆円は、東証一部上場企業比較で全体3位に位置する程の水準であり、仮想通貨企業に対するポジトークが含まれている可能性もある。
市場全体の11%の仮想通貨を管理下に(20年末時点)
CMCのデータによれば、仮想通貨市場全体の時価総額は、2020年に1900億ドル(約20兆円)から約4倍の7600億ドル(約81兆円)まで膨張した。
Messariの統計では、コインベースの管理する仮想通貨は、20年1Qから4Qにかけて、200億ドル(約2.1兆円)から900億ドル(約9.6兆円)まで急増。管理資産額は飛躍的に増加している。
主要な取引銘柄
同社の管理する仮想通貨の内、約83%が上位2銘柄のビットコインとイーサリアム(ETH)から成り立っているという。相場全体で見てもBTCとETHは、全体の時価総額の75%近くを占める。
コインベースは、その他45銘柄以上の取引ペアを提供している他、90銘柄以上の仮想通貨カストディ(保管)サービスを提供している。
四半期毎の収益も1年で4倍増
コインベース社の2020年における収益の推移を見ても、管理資産の増加に伴い、全体の収入が前年比で+85%(約330億円から625億円)上昇したことが伺える。全体と比較しても取引を基にした収益の80%以上を占めるが、仮想通貨に対する注目が20年秋頃から高まっている為、Messari社は今後も取引ベースの収益は増加すると見込んでいる。
個人投資家からの取引手数料が収益の大半
上記の通り、コインベースの事業の大半は取引手数料から成り立っている。しかし出来高の内訳を見ると、機関投資家の出来高が6:4の割合でリテール(個人投資家)層より多かったものの、機関投資家の取引手数料の割合がリテール層より低かった。その為、取引からの収益の90%近くは個人投資家からの取引から来ている。
個人投資家の平均手数料1.41%に対し、機関投資家の平均手数料が半分以下の0.05%であることが要因だと言えるだろう。
アクティブユーザー数
コインベースの収益は急増に伴い、承認されたユーザーも2018年から継続して右肩上がりを続けている反面、月間あたりのアクティブユーザー数は、2018年1Qの最高値と比較するとまだ伸び代を感じさせる。
またMessari社の調査結果では、コインベースのユーザーの約90%同取引所を利用するきっかけとしてWOM(口コミ)でコインベースを知ったと答えており、界隈からの信頼度の高さも垣間見える。一方で、仮にコインベースで大規模なハッキングなどがあった場合、相場全体に中期的な影響を与えかねる可能性がリスク視された。
将来的な独自トークン発行の可能性を示唆
特筆すべき点は、コインベース社がSECへの申請書類の中で、将来的に追加の資金調達や顧客に対するインセンティブ目的で株式をブロックチェーントークンとして発行する可能性を示唆したことだ。ただし、コインベースの独自トークンの発行は、今後の可能性を示すもので、必ずしも実現するとは限らない。
その一方、書類に含まれた点からコインベース内でも一定の検討が進んだことが伺える。FTXやバイナンスでは取引所トークンが発行されており、独自トークンを使うことで取引手数料の割引などの特典が発生する。
元コインベースで現在Bakktのプレデントを務めるAdam White氏は、コインベースの申請書類の中に独自トークンが言及された点を取り上げ、今後も重要な動向として見守る姿勢を示していた。
仮想通貨関連株へ高まる期待
好調なコインベースの業績を踏まえ、Messari社は株式の形でも仮想通貨市場へのエクスポージャーを受けられる銘柄への期待が高まっていると分析。これまでにも仮想通貨及びブロックチェーン企業が上場する事例はあったが、ユニコーン企業でもあるコインベースのような大型企業としては初めてのIPO(実際にはDPO)となる為、今後IPOを図る仮想通貨企業にとっても重要な節目となると結論付けた。
国内では、大手取引所コインチェックを運営するマネックスが、IPO(株式上場)による資金調達と財務基盤強化を目指す姿勢を示している。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します