米モンタナ州、太陽光発電による仮想通貨の大規模なマイニング計画が浮上

大規模な太陽光発電マイニング施設

米モンタナ州で、太陽光発電を利用した大規模な暗号資産(仮想通貨)マイニング施設の建設計画が持ち上がっており、地元で賛否両論を巻き起こしている。地元メディアMontana Standardなどが報道した。

モンタナ州ビュート市で検討されているのは、年間300メガワットの再生可能エネルギーを発電する、2億5000万ドル(274億円)規模の太陽光発電施設の建設プロジェクト。約6.5平方キロメートルを利用し、施設の高さは約3.7メートルになる見込み。

報道によると年間300メガワットの発電量は4万戸以上の住宅をまかなえる量で、実現すれば全米でも有数の太陽光発電施設になる。

この計画を進めているのは、Madison River Equity社。この企業の親会社はFX Solutions社で、仮想通貨マイニング事業を行うAtlas Power社という企業も運営している。新たな発電施設は、Atlas Power社が州から許可を得ている75メガワットのマイニング事業に電力を供給するために利用予定だ。

プロジェクトの広報担当者Matt Vincent氏によると、Atlas Power社は電力消費の大きいASICマシンを使ったビットコイン(BTC)からGPUプロセッサによるイーサリアム(ETH)のマイニングに移行を始めている。

最新のGPUを導入したことで、同社の電力消費量は25メガワットまで大幅に削減された。そこで、許可されている電力範囲内でさらにマシンを稼働させるため、新たに8つの建物を建設したいという。

Atlas Power社を経営するKevin Washington氏は、施設内にプログラミングアカデミーも設置し、仮想通貨以外の最先端の技術を使った幅広い仕事に多角化していく予定だと話す。

太陽光発電からのエネルギーで施設の電力を完全にまかない、余剰の電力は送電網に乗せて、州外の電力会社を含め第三者に販売することを目指す格好だ。売電先としては気候変動対策目標を掲げる電力会社や地元企業など、様々な候補を挙げている。

景観や騒音、雇用創出の有無を懸念する声

しかし地元ではこのプロジェクトについて賛否両論が巻き起こっている。

開発予定地は牧場の敷地内にあることから、広い土地がソーラーパネルに置きかわってしまうことで、景観について心配する周辺住民もいる。施設が発する騒音に対する懸念も見られた。

また必ずしも反対ではないが、マイニング施設によって、どれだけの長期的な雇用が見込めるのか、そしてその雇用が地元の人々に行き渡るのかを明確にしたいとの声も聞かれた。

Vincent氏によると、2年間の建設期間中には約200名の雇用が創出され、その後は太陽光発電プロジェクトの運営・維持に約10名の従業員が従事する予定である。建設が完了した後は、雇用枠が少なくなってしまうことにはなりそうだ。

一方でWashington氏は、建設プロジェクトでは地元の業者を採用することを最優先しており、プログラミングアカデミーでも、雇用が見込まれると説明した。

マイニング施設に土地をリースする意向のJohn McDermott氏は、自然エネルギーを高く評価しており、景観の問題は気にせずに、施設の隣で牧場を続けていくつもりだと話している。

McDermott氏は「宅地化されるよりはましだと思う。影響も少なくて済む。クリーンなエネルギーは未来の姿で、この方向性は理にかなっている」とコメントした。二階建て住宅が立ち並ぶ方が、景色が妨げられてしまうことを示唆した格好だ。

地元でIT関連(Atlas社とは無関係)の仕事をするChad Snyder氏はMontana Standardに対して次のように語った。

私はクリーンで再生可能なエネルギーに関心があり、二酸化炭素の排出量が少ないものなら何でも支持する。ただひとつ景観のことだけが心配だった。しかし、どんなものにもギブアンドテイクがある。残念ながら、多少の犠牲を払わずに、クリーンで良質なエネルギーを大量に手に入れることはできないだろう。

再生可能エネルギーへの転換が求められる中、仮想通貨業界にも炭素排出削減の試みが見られ始めたところだ。しかし大規模開発の場合には大抵、今回のように居住環境をめぐる問題もつきまとい、解決は容易ではなさそうだ。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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