北米マイニング企業ら設立の「ビットコイン採掘評議会」をコミュニティが危惧する理由とは

北米マイニング評議会への批判が浮上

米マイクロストラテジーやテスラ社のイーロン・マスクCEOらが、暗号資産(仮想通貨)の主要マイナーとエネルギー消費の開示について合意したことに対して、一部コミュニティーから批判が上がっている。

発端は米時間24日、テスラ社のイーロン・マスクCEOやマイクロストラテジー社のマイケル・セイラーCEOなどを含む、北米地域の大手マイニング事業者がエネルギー消費の透明性を推進に合意し、「ビットコインマイニング評議会」の設立が明らかになったことにある。

13日に環境負荷の懸念を背景に、ビットコイン決済の利用中止を発表したマスク氏は、以下のようにコメントした。

北米のマイナーと対話した。業者側は、現在のエネルギー消費および今後の再生エネルギーの利用計画について報告書を公開していくこと、そして世界中のマイナーにも同じ報告するするよう薦めることを決めた。

期待できる動きかもしれない。

関係者が会議に参加した北米地域のマイニング企業は以下の通り。

  • Argo Blockchain
  • BLOCKCAP
  • Core Scientific
  • Galaxy Digital
  • Hive Blockchain
  • Hut 8 Mining
  • Marathon Digital Holdings
  • Riot Blockchain

関連:『ビットコイン採掘のエネルギー問題に透明性を』テスラ・イーロンCEOらと北米マイナーが取り組み

マスク氏は今月13日、テスラ社のEV購入で導入したばかりのビットコイン決済利用を突如中止発表。仮想通貨市場の混乱を招いた。マイニングにおける「化石燃料の使用の増加」を懸念として挙げ、ビットコインのマイニングが「より持続可能性のあるエネルギー源に切り替える」までBTC決済の中止を続けると説明していた。

これを受け有識者らは、ビットコインマイニングは一般的な産業に比べ、高い比率でクリーン・エネルギーを活用しているなどと反論。マイクロストラテジー社のセイラーCEOもマスク氏のツイートに反対する姿勢を見せていた。

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懸念理由とは

今回のミーティングが物議を醸した背景としては、過去に「分散化ネットワーク」ついて疑問が生じた点が関連している。

2017年に開催された大型カンファレンス「Consensus」では、大型ブロックチェーン持ち株会社Digital Currency Group(DCG)などが主導してSegWitの導入を巡り「Bitcoin Scaling Agreement」(ビットコインスケーリング協定)を発表。BitmainやCoinbase、Grayscale InvestmentsやF2Poolなど多数の仮想通貨企業が名を連ねていた。

しかし大型アップグレードの提案への支持を一斉表明する事態が、「ビットコインの非中央集権的な理念に反する」と批判された経緯がある。

今回の事例では、仮想通貨ポッドキャスト「Tales from the Crypt」を手がけるMarty Bent氏が、「ビットコインマイニング評議会」の設立など、一連の流れがなぜビットコインにとってネガティブであるかを解説した。

過去の教訓

Bent氏はまず、仮想通貨市場及びマイナーコミュニティが、マスク氏の意見に大きく振り回されている点について懸念を表明。ビットコイン・マイナーが事実上の密室会議に参加した点を批判した上、2017年のブロックサイズ議論の事例を引き合いに、「過去の教訓が活かされていない」などと酷評した。

さらにBent氏は、評議会に参加する企業だけではなく、世界中のマイナーにも同様のエネルギー消費状況を報告するよう薦めるなどとマスク氏が言及した点に着目。将来的には、クリーンエネルギーを利用して仮想通貨を採掘したマイナーが、他のマイナーに社会的(政治的)圧力をかけ得るシナリオも想定できると危機感を示した。

Bent氏は、参加企業の一社であるMarathon社が、すでに米財務省のOFAC(外国資産管理局)の規制に準拠したマイニングプールをローンチするなど、「クリーンなビットコインのみしか受け取らない可能性がある」などと指摘している。

さらに、英ケンブリッジ大学のマイナーの電力に関する統計を引用しつつ、ビットコインマイニング業界は一般的な業界よりも再生可能エネルギーを高い比率で利用していると主張。

ケンブリッジ大学の統計では、皮肉にも「マイナーの自主申告データ」が利用されている点から、北米のビットコインマイニング評議会が「不要な解決策を提供しようとしている」などと批判した。

Bent氏は、仮想通貨に限らず「ESG運動」全体は、他者に自身の政治的美徳をアピールするバーチャルシグナリングに過ぎないと持論を展開し、ビットコインは大量の電力を消費するものの、「電力の供給源をモラル化するのは反資本主義的だ」などと悲観している。

有識者の見解

仮想通貨界隈からは、今回の動きを懸念する声は少なくない。

米仮想通貨銀行Avantiの創設者であるCaitlin Long氏は、「ビットコインのマイニングに係るFUDは気が遠くなる」とコメント。「ビットコインはことあるごとにFUDの波を乗り越えてきた」と述べ、今後も悪い噂などに耐え得ると語った。

ttps://twitter.com/caitlinlong_/status/1397008854626471936?s=21

FUDとは

恐怖(Fear)、不確実性(Uncertainty)、そして疑念(Doubt)の略称。市場心理にネガティブな影響を与えかねない根拠のない悪い噂や憶測を指す。

仮想通貨の分析サイトMessariのDan McArdle共同設立者は「ビットコインが問題ではなく、そもそも電力グリッドに問題がある」と指摘。ビットコインの電力消費量が問題の本質ではないと述べた。

英仮想通貨投資企業CoinsharesのMeltem Demirors CSOは、マイナーによる会合について、「ビットコインマイニングの中央集権化を応援するのは全く滑稽だ」などと指摘している。

仮想通貨に関するポッドキャストを配信するPeter McCormack氏は、「今回のOFACブロックや、富裕層のビットコイナーが推すエネルギーに関するFUDは、SegWit2xに関する議論再燃を感じる」とコメント。密室会議を含め、新規ホルダーのエゴを強要しているように見受けられる現状は危険であるとした。

ビットコインの歴史を追う「@DocumentingBTC」によれば、2016年には、ビットコインの開発者らがマイナー会議への参加を拒否、会議の参加者が「誓約書」に署名するまで同席しないという事例があった。このような点からも、ビットコイン・コミュニティーがいかに分散性、そしてオープンソースの文化・性質を堅守してきたかが伺える。

参加者は、ビットコインのコンセンサスルールが、ユーザーが選択したソフトウェアに基づいて決定されることから、変更案に関する議論はビットコイン・コミュニティ全体の意見を取り入れた上で、公の場で議論しなければならないことを認識する。

これらの理由で、合意(協定)や円卓会議は行わない。

仮想通貨カストディ企業Casaの創設者であるJameson Lopp氏は、密室会議は結社の自由の範疇だと批判はしなかったものの、「システム全体にコンセンサス(合意)無しで、会議の結果が強要される事態になったとしたら、憤りは当然だ」と慎重な見方を示している。

「OPECの始まりではない」

このような懐疑論もある中、ビットコインマイニング評議会に参画するマイニング企業Argo BlockchainのPeter Wall CEOが大型カンファレンスConsensusに登壇。会議に関する疑念払拭を試みた。

Wall氏は「ビットコインマイニング評議会」はビットコインのファンジビリティを尊重するとコメント。「ビットコインの本質は変えない」と述べ、あくまでビットコイン・マイニングに関する情報の開示、より環境への負荷を減らした活動の促進が評議会の目標だと強調。続けて、以下のように述べた。

我々は分散化されていて、パーミッションレスなシステムであるビットコインを愛している。

…これはOPECの始まりではない。我々は独立・分散化されたマイナーで任意でグループを結成し、お互いと業界に好影響を与えたいと考えている。

さらにビットコインを巡る環境への負荷などの状況は国際的な課題だとして、国際レベルでの協力を進めるメカニズムも進めていると言及。グループが排他的ではない点を明示した。

Wall氏はビットコインマイナーが、妥当なESG関連の懸念に向き合うことが望みだと説明し、「現段階ではそれ以外の点では他に合意に至った事項はない」と語った。クリーンエネルギーでマイニングされたBTCに関する情報はあくまで自社内での管理に留め、化石燃料を利用して採掘されたBTCなどの情報は追跡しないと、懐疑派の疑念を一蹴した形だ。

仮想通貨マイニングにおけるエネルギーの利用事情に精通するNic Carter氏は、評議会に参画しているマイニング企業の多くは、エネルギーの利用に関する情報をすでに開示しているとして、落ち着いた対応を求めた。

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