NFTは音楽業界におけるイノベーションか、一時的なブームか|Forkast寄稿
音楽業界にとってNFTは救世主か
近年のストリーミングミュージックによって、音楽が無料で楽しめるようになった一方で、ミュージシャンたちは大きな経済的打撃をうけています。しかし、ブロックチェーンやNFTによって、それを逆転することができるのではないかと期待されています。
台湾のNFTプラットフォーム、OURSONGの共同設立者であり、ロックバンド「Echo」のボーカルであるポチャン・ウー氏は、NFTによって音楽はその価値を取り戻すだろうといいます。
OURSONGの共同設立者クリス・リン氏は、ウー氏が音楽の価値を下げたムーブメントの一員だったことを残念に思っていました。そして2017年、どうしたらブロックチェーンやNFTによって音楽に希少価値を付加し、デジタル業界で生き残ることができるのが模索しはじめました。
何をどう作れば、これを現実化することができるのか彼らは悩んでいました。ユーザーにレコードやCD、カセットテープを買うのと同じ体験を提供できる、何か新しいものを作ろうとしていました。
これを実現できれば、音楽業界を昔のように盛り上げるだけでなく、新しい音楽の楽しみ方を提供することができるでしょう。そして、昔のように音楽に単価が出るようになるでしょう。
NFTとは
「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能で固有の価値を持つデジタルトークンのこと。ブロックチェーンゲームのアイテムやキャラクター、またデジタルアート作品など、幅広く活用されている。
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金銭的に報われないアーティストたち
ストリーミングミュージック業界は過去15年で大きく成長したものの、音楽の単価は微々たるものになってしまいました。
Spotifyが1曲あたりのストリーミングでアーティストに支払う額は、およそ0.003から0.0035ドル(約0.33から0.55円)とInsider and Wall Street Journalはレポートしています。同レポートによると、Apple Musicは0.01ドル(1.1円)支払っています。
この数字は20年前とくらべて大きな差があります。1999年当時、レコード音楽業界は330億ドル(約3兆6200億円)の市場でした。当時、レコード会社やアーティストが音楽の販売で収益を上げることができたのは、マージンが高かったからです。
なかには、このストリーミングプラットフォームのシステムに反発したアーティストもいます。2014年には、アメリカの歌手テイラー・スウィフト氏が、抗議のために彼女の全楽曲をSpotifyから削除しました。
彼女は、Wall Street Journalの取材にて、以下のコメントを残しました。
ミュージックは芸術です。そして芸術はとても重要で貴重なものです。重要で貴重なものには価値があります。そして価値のあるものには、お金を支払うべきです。
シンガポール人シンガーソングライターで、香港を拠点に活動する音楽プロデューサー、ハンジン・タン氏も同じ意見をもっていました。彼はここ数ヶ月間で、自分の楽曲をNFTにし、限定版のミュージックNFTを1枚7BNB(2,204ドル、約24,200円)で販売しています。
彼のファンは、このストリーミングミュージックのプラットフォームに登録すれば、自分の聴きたい音楽を好きなように聴くことができるのです。
歴然たる収入格差
音楽業界には、収入格差が存在しています。なかでも、中国人アーティストには著しい格差がみられます。
中国伝媒大学の研究チームが行った調査によると、中国では、2020年には約52%のミュージシャンが音楽からの収入を得ておらず、約24%が収入の5%未満しか音楽から収入を得ていないといいます。
これはとても残念なことです。特に若いミュージシャンには生き残るのが厳しい状況です。現在人気のミュージシャンたちも、ぎりぎりのところで成功を手にしているのです。
ストリーミングプラットフォームでNo.1のヒット曲をだせれば、大金をつかむことができます。しかし、多くのミュージシャンにとって、ストリーミングでは十分な収入を得ることができません。なぜなら、そのためには多くの再生回数が必要だからです。
ニュースなどでは、書籍やCDと違って、NFTは破格の高値で取引されることが多いといわれています。ということは、ニッチなファンは希少価値のあるNFTに、アルバムよりも高いお金をつぎ込む可能性が考えられます。
所有 vs 使用
これまでは、コレクションとそれを使用することは、一緒とみなされていました。つまり、音楽を聴きたければアルバムを買い、アルバムをプレイして音楽を聴いていました。したがって、もしアルバムを所有していなければ、アルバムをプレイすることも、音楽を聴くこともできなかったのです。
しかし、現在では違います。ストリーミングサービスに利用料を払うだけで、実際にアルバムなどを所有せずに、音楽を聴くことができます。
とはいうものの、現在音楽業界でのコレクションは増えています。2019年には、レコードの売上がCDの売上を上回りました。
レコードを買う目的は、コレクションのためだけです。そして今でも音楽は、ストリーミングサービスで聴かれているのです。つまり、NFTを音楽好きのコレクションに加えるのは自然の流れなのです。
NFTは、コレクションの楽しみを呼び戻すでしょう。ミュージシャンたちは、自分たちの音楽をストリーミングサービスにより、多くの人に聴いてもらえるようになったものの、利益を失いました。しかし、NFTを使うことによって、それを取り戻すことができるかもしれません。
ファンがNFTを通して作品を収集すると同時に、音楽事態はストリーミングサービスで無料で楽しめる、そのような音楽の楽しみ方が実現するかもしれません。
NFTの利用は、インターネットで資産を保有することを意味します。それはコンテンツ、個人の思想、オンライン体験、または私達の足跡など、ありとあらゆるものが含まれます。記録を残す技術としての分散型台帳技術は、未来の人類にとって、最も価値のあるものとなるでしょう。
これは人々のために作られた世界最大のデーターベースであり、イーロン・マスクのTwitterではなく、人々によって正当にコントロールされます。
NFTが築く、アーティストとファンの新しい関係
NFTは昔の作曲家、モーツァルトやベートーヴェンがもっていたような、パトロンと音楽家との関係を再現するいい機会となるでしょう。
NFTをつかえば、ミュージシャンたちは、より高いマージンでマネタイズできる方法を見つけられます。
例えば、あるミュージシャンのファン100人が、ひとり10ドルずつ使ってくれれば、合計1,000ドルを生み出すことができます。しかし、同じ100人のファンが、ストリーミングサービスでそのミュージシャンの曲を何度聴いたとしても、生み出すことのできる金額ははるかに少ないでしょう。
NFTでは、ニッチなファンコミュニティから収益を上げることができます。これは、独立系のクリエイターにとって絶好のチャンスです。なぜなら、自分のコンテンツを自分たちのコアなファンに販売することができるからです。
オンラインでだれもが簡単に手に入れることができるものではなく、もっと特別なものをニッチなファンに向けて提供できるようになりつつあるのです。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します