欧州中央銀行ラガルド総裁、仮想通貨の制裁回避利用を警戒
サービスプロバイダーも“共犯”
欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏は22日、仮想通貨(暗号資産)が対ロシア経済制裁を迂回する手段として使用される可能性について触れ、仮想通貨取引所などのサービス・プロバイダーが「共犯者」であると指摘した。
3月22日から23日に渡り開催されている国際決済銀行(BIS)イノベーションサミットの初日、「マネーと決済」をテーマとするセッションで、ラガルド氏は仮想通貨を「脅威」とする見方を示した。「多くの疑わしい取引や犯罪行為の支払いに目を向けると、幾度となく暗号資産を見かけるからだ」とコメントした。
また、仮想通貨やステーブルコインに対するルーブル建の取引量が増加したことに言及。
対ロシア経済制裁の抜け穴として使用されている可能性を示唆して、仮想通貨取引所を含むサービスプロバイダーが制裁回避を試みる人々の「共犯者」であると批判。仮想通貨取引に関連するサービスを提供するすべての人々に「明確なシグナルを発するために前進している」と加えた。
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対ロシア制裁強化の動き
実際に、ロシアのウクライナ侵攻に対抗して欧米主要国がロシアに経済制裁を発令した中、ルーブル建の仮想通貨取引量は急増。ブロックチェーン分析会社Kaikoのデータによると、ルーブル建てのビットコイン(BTC)取引量は3月5日に今年最高水準に上昇した。
3月7日時点の同社レポートでは、ルーブル建てのBTC取引ペアを提供しているグローバルな仮想通貨取引所は、Binance、Yobit、LocalBitcoinsの3つのみが確認されていた。
これまでも、ロシアの政府関係者やオリガルヒ(新興財閥)が経済制裁を回避するために仮想通貨を使用している可能性がたびたび警戒されてきた。
G7主要国は11日、ロシアに対する制裁をさらに強化する旨の共同声明を発表し、仮想通貨を対象とする制裁についても方針を示した。世界最大手の暗号資産(仮想通貨)取引所Binanceも8日、ロシア国内で発行されたビザ・マスターカードのカード対応を停止していた。
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一方で、米FBI(連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官や財務省関係者など、米政府内ではロシアが仮想通貨を利用して制裁を回避できる実際的な可能性は低いと見る専門家も少なくない。
コインベースのブライアン・アームストロングCEOなど業界の有識者らもブロックチェーン上に取引履歴が残る点は制裁を回避する上でロシアにとってはリスクであると分析。これまでロシアの制裁対策に含まれていなかった可能性も踏まえると低いと同様の見解を示している。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します