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ルーブル建てのビットコイン取引量急増、制裁逃れに仮想通貨が利用されるリスクは 小規模のウクライナ・プレミアムも発生

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ルーブル・フリヴニャ建の取引量急増

欧米主要国がロシアのウクライナ侵攻に対抗する形で、ロシア経済に大規模な経済制裁を発令した中、ルーブル建の暗号資産(仮想通貨)取引量が急増している。

特に、先週24日のロシアの侵攻開始後からロシア・ルーブル(RUB)建の取引量は急増した。

出典:Kaiko

また、大手取引所バイナンス上では平均的な日間取引量から3倍以上も増加したことが確認された。執筆時点でバイナンスは、ルーブル建では18の現物通貨ペアを提供している。

出典:The Block

仮想通貨データ分析サイトKaikoによれば、ウクライナの法定通貨であるフリヴニャ(UAH)建のビットコイン(BTC)取引量も急増。24日以降には、ユーロ(EUR)やルーブル建のBTC相場に比べ、6%程のプレミアム(価格乖離)も発生している。

出典:Kaiko

ロシアの投資家で資金逃れが目立っていると専門家は指摘する反面、The Blockの調査部門であるLarry Cermak氏はバイナンスの決済プロバイダであるSimplexやMercuryoがルーブル対応を停止した場合、ロシア人ユーザーは自国の法定通貨を仮想通貨と取引できなくなると分析した。

ウクライナ政府は主要仮想通貨取引所に全ロシア人ユーザーの取引口座を凍結するよう呼び求めているが、バイナンスやコインベースなどは制裁対象に指名されている政府関係者などのみに対して、サービスを停止する姿勢を示していた。

関連:ウクライナ政府、主要取引所に全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求

また、日本を含む欧米諸国は先週27日、ロシアの銀行を国際銀行決済システムのSWIFTから排除する方針を発表。米国や日本もプーチン大統領やラブロフ外務大臣などの政府高官に対する対個人の制裁措置も表明している。

関連: 日米主要国、ロシアをSWIFTから排除へ 追加制裁強める

経済制裁を逃れる手段としての仮想通貨

一方、ロシア政府が主要国からの経済制裁を逃れる手段として、仮想通貨を利用する可能性は極めて低いとする見方もある。

仮想通貨やブロックチェーン業界に造詣がある米ブロックチェーン協会のJake Chervinsky氏は以下の3点を理由に、米国の経済制裁を回避する手段としての仮想通貨利用は実用性が低いと述べた。

  1. 仮想通貨でも経済制裁の本来の目的は遂行可能
  2. 仮想通貨の透明性と監視リスク
  3. プーチンの制裁対策で仮想通貨は構想外

経済制裁の目的

Chervinsky氏は、仮にロシアから仮想通貨というグローバルな決済システムへのアクセスが可能でも、米国経済からの遮断という経済制裁の本来の目的は変わらず遂行されると指摘。米政府の経済制裁では、米国市民や米企業はSDN(経済制裁措置対象者)と一切の取引が禁止されるため、「ドルでも金(ゴールド)でもビットコイン(BTC)でも変わりない」と述べた。

経済制裁の目的は「決済システムからの禁止」ではなく、SWIFTなど国際社会が提供するサービスを制限することにあるため、仮想通貨でも同様に、ブロックチェーンなどの根本的な技術を活用できても、最終的に制裁措置を逃げることはできないと考察した。

仮想通貨利用のリスク

また、それ以外にも仮想通貨市場はロシア経済が利用するには小さ過ぎて、コストも高過ぎると指摘。さらに、ブロックチェーン市場の提供するデータの透明性がロシア政府にとっては不都合であるとした。

元来、ルーブル建の取引ペアも少ないことから、仮想通貨市場のみからは十分な資金を交換するための流動性が不足すると考察。さらに、資金の移動がブロックチェーン上で確認できるため、米国などの政府機関から監視が可能になってしまうと分析している。

財務省も同様に、仮想通貨を介するリスクは低いとの見解を示している。米財務省のTodd Conklin財務次官補佐は以下のようにコメントしていた。

移動しなければならない資産の規模や、移動先を考慮する場合、仮想通貨はそこまで懸念する必要はないだろう。

仮に取引所などを介して大量の資金を移動した際には仮想通貨市場価格で最近見られていない水準の上昇が見られると思う。

仮想通貨ロビー団体CoinCenterの広報担当であるNeeraj Agrawal氏も「米財務省はロシアが仮想通貨を利用するには実用性が低い事を知っている」と指摘。大量の資金が移動していることが確認されれば、公開されているブロックチェーン台帳上では、隠密性を保つのは難しいとした。

西欧の法的機関は仮想通貨ネットワークのオン・オフランプを良く確認できている。ロシアが制裁を逃れる手段として仮想通貨を利用しても対応できるツールを有していると自信を持っている。

また、プーチン大統領がこれまでにも万が一の経済制裁を回避するための対策を講じてきたが、Chervinsky氏は仮想通貨はこの計画に含まれていなかったと分析。中国人民元やゴールド(金)、アジアへの取引先の移行、国内への製造拠点移動など行っていたが、仮想通貨は含まれていなかったため、現段階での利用は手遅れだと指摘した。

コインベースCEO「仮想通貨利用の可能性は低い」

また、大手取引所コインベースのブライアン・アームストロングCEOもロシアが仮想通貨を利用して経済制裁を回避する可能性は低いと発言。分散型台帳上でオープンに取引履歴が残るため、現金やアート、金などの他の資産より追跡しやすいと指摘した。

さらに、米国企業であるコインベースは、他の金融機関と同様に制裁対象リストの人物や企業はブロックしていると説明。制裁措置は急速に変化しているため、今後変わる可能性はあるとしつつ、ロシア人ユーザーを一律に禁止する措置を現段階では取る予定はないと語った。

ウクライナ政府は2月末、コインベースを含む主要取引所に対して制裁対象となっているオリガルヒだけではなく、全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求。この方針に反対する姿勢を見せた格好だ。

バイナンスやクラーケンも現段階では制裁対象者のみにサービス提供を停止する方針を示している。

関連:ウクライナ政府、仮想通貨取引所に全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求へ

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