バイナンス、ロシア人ユーザーの仮想通貨取引口座を一部制限へ 欧州の第5次経済制裁に準拠
EUのロシア制裁適用へ
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは21日、ロシア市民やロシア在住者への取引口座を一部制限する方針を発表した。欧州連合(EU)のロシア政府に対する経済制裁に準拠する格好となる。
バイナンスは、10,000ユーロ(約140万円)以上の暗号資産を保有するロシア市民やロシア在住者、ロシアで設立された法人の取引を制限する方針を表明。対象となったユーザーは引き出し(Withdrawal)のみが可能となり、以下のサービス・機能が利用不可となる。
- 入金
- 現物取引
- 先物取引
- カストディ・ウォレット
- ステーキング
なお、取引口座の残高が10,000ユーロを超えるロシア市民およびロシア在住者で先物市場、又はデリバティブ市場でポジションを取っているユーザーは90日以内にポジションを決済する必要がある。また、新たなポジションは認められない。
口座残高が10,000ユーロ未満の場合、ロシアのユーザーでも通常通り、バイナンスの取引サービスを利用できる。
制裁遵守への反応
ウクライナのアレックス・ボルニャコフDX(デジタルトランスフォーメーション)担当副大臣は来週25日よりこの制限が適用されると説明。欧州連合の第5次経済制裁に伴う動きだと述べた。
バイナンス側は「今回の方針は一般市民にとって拘束的なものになり得るが、引き続き制裁の遵守という観点で業界を牽引していく」とコメント。主要仮想通貨取引所も同様の方針を打ち出していくべきとの考えを示した。
過去の対応
バイナンスは以前から、経済制裁への遵守を重視する姿勢を強調してきた。
3月にはチャンポン・ジャオ(CZ)CEOがウクライナ情勢における仮想通貨の取り締まりなどについて公式声明を発表。バイナンスは銀行などと同様の国際基準や制裁ルールが適用されていると述べていた。
過去3年間では約20,000件の取引口座を「外国の重要な公人」(PEP)としてフラグしており、500人近いコンプライアンスチームがマネーロンダリング(資金洗浄)対策やKYC(顧客確認業務)、そしてオンチェーンモニタリングを手がけているとコメント。また、各国政府と非公式のタスクフォースを多数設立してベストプラクティスを徹底していると説明していた。
なお、ロシアがウクライナ侵攻を開始した直後の2月末時点には、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼DX担当大臣が主要な仮想通貨取引所に対して、政治家だけではなくロシアの一般市民の口座をブロックするよう呼びかけていた経緯がある。
当時、バイナンス側を含め、コインベースなど多数の取引所が原則的には、一律的な全面禁止は行わないと主張していた。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します