仮想通貨銀行Finbloxが出金制限、Three Arrowsの債務問題の影響は?

Finbloxの出金制限

暗号資産(仮想通貨)の貯蓄口座を提供するFinbloxは17日、毎月約20万円(1,500ドル)の出金制限を設け、報酬分配を一時停止することを発表した。

Finbloxは債務超過の危機に瀕すると噂される大手ヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)の投資先の一つ。

非公式ながら、3ACが投資先の資産運用を請け負ってきたとの情報も飛び交う中、本件との関連性についても市場の関心が向けられている。

Finbloxは、米ドル・ステーブルコイン(USDC)とビットコイン(BTC)の貯蓄に対して最大10%の年利を約束し、金利を毎日分配するCeFi(中央集権型金融)企業。顧客預金を使ってDeFi(分散型金融)プロトコルでの運用で得た収益を還元している。

同社は、YCombinator出身の起業家と、取引所Coins.phでCTO(最高技術責任者)を務めた人物により21年5月に設立。22年3月にシードラウンドで約6億円(390万ドル)を調達した際に、Three Arrows Capitalも参加した。

リリースでFinbloxは「イールド生成とリスク分散のために3ACを含む8社と協業してきた」と述べている。昨今、3ACは相場の大幅急落で計520億円(4億ドル)もの証拠金が清算され、その後も複数のレンディング・プロバイダーで債務不履行に陥っているとの疑惑が生じている。これを示唆してFinbloxは、「3ACによる同社の流動性への影響レベルを評価する」と説明している。

関連:大手ヘッジファンド「Three Arrows Capital」、ビットコインのポジションを強制清算か=FT報道

3ACの債務危機

アルゴリズム型ステーブルコインを発行するテラ・エコシステムが5月に破綻して以降、出資側の3ACが流動性危機に陥っているとの疑念が広まっている。著名リサーチャーThe DeFi Edgeによると、3ACのテラ(LUNA)への投資額は約700億円(5億5960万ドル)に上り、巨額の損失を取り戻すために高いレバレッジを掛けた「リベンジ・トレーディング」に取り組むようになったという。

3ACの運用資産はピーク時に2兆円以上(180億ドル)に上り、仮想通貨を担保にBlockFi、Genesis、Nexo、Celsiusといった業界最大手の融資会社から巨額資金を借り入れてきたと見られる。しかし、相場が急落する中で担保価値も減少し、計520億円(4億ドル)もの同社の担保が清算されたことが15日に伝えられると、17日にはBlockFiのZac Prince CEOも「大手顧客の過剰担保ローンについて」清算したことを認めていた。

3ACはローンチ前の有望な仮想通貨プロジェクトにも多数投資しているが、トークン配布が数年先のものも多いため、流動性が限られている。現在もマージンコールに直面している巨額の債務ポジションを維持するために高額NFTの売却からStarkWare(L2スケーリングソリューション)などの有望な投資先の株式や上場前トークンを抵当に入れる等、あらゆる手段を試みているようだ。

また、内部告発も複数出てきている。3ACと取引口座を共有するトレーディングパートナーの8BlocksCapitalは、3ACが無断で資金を引き抜いたと主張。また、Protocol X(匿名)は、シードラウンドで調達した資金を年利8%で運用すると3ACから打診を受け、預けた資金の行方が分からなくなっているという。ブロックチェーン上で追跡しようにも、複数の資金と混合されて困難な状況とした。

3ACのZhu Su CEOは15日午前10時にツイッター上に現れ、「問題解決に向けて関係者と全力で取り組んでいる」と報告したが、前述のインサイダーはどちらも3ACが問い合わせに応じない「Ghost(幽霊状態)だ」と指摘している。

関連:シンガポールの大手ヘッジファンド、520億円相当のポジション清算か

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