仮想通貨取引所Bittrexが米財務省と和解 40億円超の罰金支払いへ
規制違反についてOFAC、FinCENと和解
米財務省の外国資産管理局(OFAC)と金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は11日、暗号資産(仮想通貨)取引所Bittrexと和解したと発表した。
Bittrexは、反マネロン規制および疑わしい活動に関する報告要件についての違反で、約42億円(約2,900万ドル)の罰金を支払うことに同意した形だ。米財務省は、Bittrexは指摘された問題について、すでに是正措置を取っていると述べている。
違反内容
OFACは、Bittrexの制裁遵守手順の欠陥により、2014年3月から2017年12月の間に、米国人が取引を禁止されている地域に居住する人物と合計380億円(2.6億ドル)相当の仮想通貨関連取引を行っていたとしている。
具体的には、ウクライナのクリミア地方、キューバ、イラン、スーダン、シリアなどの居住者との取引だ。
Bittrexは、各顧客から収集されたIP(インターネットプロトコル)アドレス情報や、物理的な住所情報に基づいて、制裁対象地域に居住しているかどうか判断することができる状況にあった。しかし、こうした情報を制裁遵守のために監視することはしていなかった。
このため、Bittrexは民事責任を解決するために、約35億円(約2,400万ドル)をOFACに送金することに同意した形だ。
さらにBittrexは、反マネロン規制および疑わしい活動に関する報告要件に対する故意の違反で、FinCENに約42億円(約2,900万ドル)を支払うことにも同意している。ただこちらについては、OFACへの罰金2,400万ドルが控除され、残りの約500万ドルを支払うことになる。
OFACとFinCENへの罰金をあわせて、合計約42億円(約2,900万ドル)を支払う格好だ。
FinCENの調査によると、Bittrexは、2014年2月から2018年12月まで、効果的なマネロン対策プログラムを維持していなかった。原因の1つとしては、展開していた取引監視プログラムが不適切で効果のないものだったことが挙げられている。
Bittrexは、匿名性を強化した仮想通貨など、同社が提供する商品およびサービスに関連するリスクに適切に対処していなかったとも指摘された。また、2014年2月から2017年5月まで3年以上の間、疑わしい活動に関する報告書を一回も提出していなかった。
匿名通貨とは
ユーザーのプライバシーを重視し、送金者などの取引記録を非公開にする(または記録しない)仮想通貨のこと。代表的な銘柄は、Monero(XMR)、Zcash(ZEC)。匿名性が高く、マネーロンダリングやテロ資金供与などに悪用される懸念があることから、規制当局から問題視されている。日本の仮想通貨取引所では取り扱いが廃止された。
▶️仮想通貨用語集
Bittrexは、弁護士を通じて発表した声明の中で、次のようにコメントしている。
今回の和解は、主に2017年までに行われた制裁対象国との取引に関するOFACの指摘と、2018年まで当社のマネロン防止プログラムに欠陥があったとするFinCENの指摘について、完全に解決するものとなる。
FinCENとOFACの両方が、Bittrexの改善努力により規制違反のリスクが大幅に低減されたことを認めていることは重要だ。
日本の状況
仮想通貨業界のマネロン規制については、日本でも対応が進んでいる。
9月末には、日本政府がマネロン対策として仮想通貨交換業者に新たな送金ルールを導入する計画だと報じられた。銀行と同水準の規制を施行し、犯罪者の資金移動を追跡できるようにすることが主な目的とされており、早ければ2023年春にも導入される見込みだ。
関連:日本政府、仮想通貨交換業者に新たな送金ルール導入へ マネロン対策を徹底=日経
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します