Maple Finance、FTX破綻の余波で42億円の不良債権か
Orthogonal Tradingが債務超過
無担保ローンを提供するDeFi(分散型金融)融資プラットフォームMaple Financeは5日、カナダのヘッジファンドOrthogonal Tradingが債務超過に陥り、約42億円(3,100万ドル)の不良債権が生じたことを発表した。
元大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXグループが経営破綻に陥った影響で、Orthogonal Tradingが債務超過に陥り、元本の返済が出来なくなったと説明している。
Maple Financeは機関投資家のみが拠出する流動性プールに特化した融資プラットフォーム。DeFiでありながら、KYC(顧客確認)とAML(マネーロンダリング対策)に対応するコンプライアンス体制を備え、資金効率の高さが魅力だった。
Mapleではなく「貸出プールを設置する機関」が財務デューデリジェンスを行い、キャッシュフローが潤沢かつ、裁定取引執行者にのみ融資を提供する仕組みを持つ。
債務超過の経緯
今回の事例では、直接の債権者はMaple Financeでなく、独立系DeFi組織「M11 Credit」がOrthogonalに対して計3,100万ドルの不良債権を抱えている。M11 Creditが設置した流動性プールからOrthogonalに対して、ステーブルコインUSDCoinが融資されていた状況だった。
M11 Credit側は、Orthogonal Tradingが過去4週間に渡ってFTXへのエクスポージャーを隠し、さらなるローンを要求するなど詐欺報告を行ってきたと説明。しかし、12月4日期限の元本返済が滞ったことをきっかけにOrthogonalの財務状況の真相を突き止めたとした。
情報の不当開示はローン契約規約に違反するとして、M11 CreditはOrthogonalに対する全ての融資に債務不履行を通知。資金回収に向けて訴訟を含むあらゆる法的手段を検討する構えを示している。
Mapleはまた、これまで同プロトコル上で貸し手側として関わってきたOrthogonalの系列会社Orthogonal Creditとの関係も終了することを報告。同社のプールで組成されたスイスの金融インフラ技術会社Portofino Technologies AGや、大手マーケットメーカーWintermute Trading向けの融資などは期日まで稼働する。23年第1四半期にも閉鎖するまでの期間中に得られた手数料収入は、M11 Creditの資金回収に充てられる。
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Maple Financeの縮小
Mapleにおいて、Orthogonal Creditは延べ8億5,000万ドルの融資を行ってきた重要機関。同社との関係終了の影響はMapleの基盤を大きく揺るがしている。
データサイトDuneによると、22年6月時点にMapleのTVL(預入資産総額)は約1,200億円(9億ドル)に上っていたが、執筆時点にMaple Financeに預けられた資産総額(TVL)は150億円(1.1億ドル)に低下している。
こうした背景には各プールの設置者がFTX破綻の影響を避けるためにリスク軽減を進める動きがあり、海外メディアBlockWorksによると、稼働中のローンの総数は1週間で計37件(総額2億2700万ドル)から、24件(総額1億2900万ドル)にまで減少している。
FTX破綻の債務問題が連鎖する現状は、テラ(LUNA)エコシステム崩壊の余波で、投資ファンドThree Arrows Capital(3AC)や仮想通貨融資企業CelsuisNetowrkなどが相次いでデフォルト(債務不履行)状態に陥った22年6月と酷似している。
当時、香港発の仮想通貨融資プラットフォームのBabel Financeの出金停止により、Maple Financeに設置されたOrthogonal Creditの融資プールで約13億円(1,000万ドル)の貸出資金が拘束された。
プロトコルの設計上、担保資金が債務の一定割合を下回ると、貸し手はMapleのプールから資金を引き出すことができなくなる。なお、Mapleに設置された貸出プールは独立しており、特定のプールの状況が別のプールに影響することはない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します