「仮想通貨規制は失敗だった」米議員、SECゲンスラー委員長に議会証言要求
情報収集に失敗したSEC
米連邦下院のトム・エマー議員は10日、米証券取引委員会(SEC)のゲリー・ゲンスラー委員長の暗号資産(仮想通貨)に対する規制アプローチには欠陥があったと批判。「規制失敗のコスト」を説明するため、議会での証言を求めた。
エマー議員は一連のツイートで、3月に超党派のブロックチェーン・コーカスがゲンスラー委員長宛に送った書簡に言及。仮想通貨企業に対するSECの情報提供の要求は「場当たり的で焦点が定まっていない」との批判があることから、情報収集方法について13項目にわたる具体的な質問を記したものだった。
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しかし、ゲンスラー委員長は書簡で要求された情報の議会への提出を拒否したとエマー議員。もし質問への回答が得られていたら、「ゲンスラー氏がテラ/ルナ、セルシウス、Voyager、FTXを見過ごす原因となった、明らかに矛盾したアプローチを議会に示すことができただろう」と主張した。
エマー議員は、ゲンスラー委員長による仮想通貨情報収集活動は「効果的でなかった」と総括。また、同氏が議会証言を度々回避しているため、FTXを含むSECの捜査活動については、メディアを通して知ることになったと批判した。同議員は以前にもSECの議会に対する情報公開の姿勢を非難している。
議会は、進歩的な出版物の仕込み記事を通じて、SECの監督戦略の詳細を知る必要はない。
エマー議員は先月、FTXの崩壊は「仮想通貨の失敗」ではなく、創設者で元CEOのサム・バンクマン=フリー氏とゲンスラー氏のリーダーシップの失敗であると述べている。エマー氏は、3月にSECとFTXが会合を持っていたことに関して、FTXは他社が受けることのない特別扱いを受けていたと批判した。
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SEC(証券取引委員会)
「Securities and Exchange Commission」の略で、株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。日本では「証券取引等監視委員会」が近い役割を担っている。
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明確性に欠けるSECの規制アプローチ
仮想通貨市場に対して極めて強硬なアプローチをとってきたゲンスラー委員長だが、どの仮想通貨が有価証券とみなされるかについては、いまだに明確にしていない。ほとんどの仮想通貨が有価証券に分類される可能性があるとの発言を繰り返すばかりだ。
英国に拠点を置くマネーロンダリング対策サービス会社「AML Bot」のスラバ・デムチュクCEOは、ゲンスラー氏率いるSECは、仮想通貨企業に明確なガイダンスを提供していないと次のように述べた。
SECはすべての間違ったものに焦点を当てているように見える。その結果、仮想通貨業界はFTXのようなケースから損害を被っている。また、規制とイノベーションのバランスを見つけることは簡単だが、早急に規制を導入することが重要であると私は認める。そうしなければ、投資家やユーザーは業界に対する信頼を失うことになる。
FTXの破綻により、SECの規制戦略の有効性を疑問視する声はますます高まりそうだ。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します