米連邦検察、DCGとジェネシス間の金融取引を調査か=報道
DCGと子会社ジェネシス間の送金を調査か
米国の連邦検察が、暗号資産(仮想通貨)コングロマリット企業デジタルカレンシーグループ(DCG)とその子会社ジェネシスについて調査を行っていることがわかった。関係筋の情報として、ブルームバーグが7日に報じた。
連邦検察は、DCGとジェネシス間の送金や、投資家が両事業体間の取引について知らされていたかどうか、不正行為があったかどうかを調査していると伝えられる。
関係筋は、司法省ニューヨーク東部地区事務所の検察官が、両社に事情聴取と文書提出を求めており、米証券取引委員会(SEC)も同様の調査を始めたと述べた。
なお、こうした捜査はまだ予備的なもので、どちらの企業も不正行為で告発されたわけではない。
DCGの広報担当者は7日、この調査については知らないとコメントした。「DCGは誠実さを重んじる社内文化を持っており、つねに法に沿って事業を展開してきた。当社に対してニューヨーク東部地区の検察が調査していることを知らないし、そう信じる理由もない」としている。
一方でジェネシスは、自社が捜査を受けているかについてのコメントは控え、「当局から問い合わせがあった場合には協力する」と述べた。
DCGは、2015年に設立された大手仮想通貨系企業の持株会社だ。ジェネシスの他、グレースケールやコインデスクなどを子会社として擁しており、傘下企業は2022年4月時点で計1,000名以上の従業員を抱えていた。
企業間融資などの背景
調査対象となっている「DCGとジェネシス間の送金」については、DCGが行っていた関連業者間融資のことを指していると考えられる。
DCGは、子会社の一つで仮想通貨融資大手のジェネシスから、約759億円(5億7,500万ドル)の融資を受けていた。一方でDCGは、スリーアローズキャピタル(3AC)破綻でジェネシスに生じた債務約1,450億円(11億ドル)を肩代わりしている。
子会社ジェネシスは、昨年3ACやFTXが破綻したことで大きな損失を出し、苦境に陥っている状況とされる。
同社デリバティブ部門は、FTXが経営危機にともない口座を凍結したことにより、約240億円の資金がFTXに拘束されていると明かした。この影響でジェネシスは昨年11月より、償還および出金と新たにローンを組成するためのサービスを停止している。
同社は人員を30%解雇しており、チャプターイレブンによる破産申請も可能性の一つに入れていると伝えられるところだ。
米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは
日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う。申請後に債権取り立てが停止され、債務者は負債の整理に取り組み、原則120日以内に再建プランを策定する。
▶️仮想通貨用語集
ジェネシスの出金停止により、ジェネシスの利回りプラットフォームを利用していた仮想通貨取引所大手Gemini(ジェミナイ)も影響を受けている。ジェミナイの利回りサービスもユーザー資金の償還停止に追い込まれた形だ。
ジェミナイの共同創設者キャメロン・ウィンクルボス氏は、DCGに対して、ジェミナイの顧客資産約1,200億円(9億ドル)を返済するための交渉に応じるよう求めている。
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GBTCのマイナス乖離
また、DCGの別の子会社である仮想通貨投資企業Grayscale(グレースケール)も、投資信託「ビットコイントラスト(GBTC)」で問題に直面している。現在、ビットコイン価格に対する割引率が約-45%のディスカウント(マイナス乖離)に達している状況だ。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します