CoinPostで今最も読まれています

ビットコイン投資信託GBTCで訴訟問題、マイナス乖離解消案巡り

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

グレースケールを相手取る訴訟

7日にブルームバーグは、米最大手暗号資産(仮想通貨)投資企業グレースケールが直面している訴訟について報じた。

本訴訟は、グレイスケールに対して帳簿記帳の開示を求めるもの。原告である米ヘッジファンドFir Tree CapitalはGBTCのマイナス・プレミアム(マイナス価格乖離)を解消するため、グレイスケールに対して償還プログラムを提供させるべく行動しており、当局に提出する書類作成に必要なデータを要求している。

GBTC(グレースケール・ビットコイン・トラスト)はビットコイン(BTC)の価格と連動した投資信託。米国の非上場株式市場「OTCマーケット (OTCQX)」にリストされており、投資家は現物を売買・保有することなく、証券口座からBTCを取引する手段となっている。

なお、GBTCの発行市場(私募)については、米証券取引委員会(SEC)から認定された機関投資家や適格投資家に限定される。機関投資家がグレースケールにBTCを渡すか、現金を渡してグレースケールがBTCを購入することで発行される一方、GBTCからBTCへは直接償還できない仕組み。換金するにはOTCQXで売却する必要がある。

こうした構造上の制約から、強気相場では原資産であるBTCより30%ほど高い価格(プレミアム)で取引された。しかし、弱気相場では一転、11月19日には一時最大-45%低い価格(マイナス・プレミアム)を付けるに至っている。

Fir Treeの主張

Fir Tree Capitalは訴状で、GBTCを保有する約85万人の個人投資家が、「グレイスケールの株主無視の行動によって損害を受けた」と主張。また、マイナス・プレミアムはGBTCからBTCへの償還を認めないグレースケール側の方針に責任があると指摘。

グレースケールはSEC(米証券取引委員会)に対して、GBTCを上場投資信託(ETF)に転換するべく訴訟を含む手段を講じているが、Fir Treeはこれを早期に停止するよう主張している。

償還プログラムの提供はGBTCの莫大な運用益が削られることになるため、グレイスケールにとってデメリットがあるようだ。GBTCは最低5万ドルの投資を必要とし、日々のビットコインの市場価値に対して2.0%の年間手数料を課している。Fir Treeの見立てでは、21年のグレイスケールの手数料収益は約840億円(6億1540万ドル)に上る。

出典:Fintel

2018年から2021年にかけてGBTCの発行量は急増しており、執筆時点で72の機関所有者が約3,000万株を保有している。なお、グレースケール社はGBTCの裏付け資産として22年11月18日時点に63.5万BTC(1.4兆円)をCoinbase Custodyで保有している。

グレースケールとしては、マイナス・プレミアムを解消するためにGBTCをオープンエンド型のETFに転換する申請書を21年10月にSECに提出。この転換申請がSECにより却下されたことから、同社は22年10月にSECを相手取った訴訟を提訴していた。米デジタル商工会議所や大手取引所コインベースそしてニューヨーク証券取引所も、グレースケールを支持する法定助言書(amicus brief)を裁判所に提出するなど支援している。

関連:ビットコイン現物ETFの承認巡る裁判、業界団体が支持を表明

マイナス・プレミアム解消に向けて

こうした戦略は結局のところ、グレイスケールの手数料収入の維持につながるとして、Fir Tree Capitalの弁護士は訴状で以下のように述べている。

そうした戦略は、おそらく数年にわたる訴訟、数百万ドルの弁護士費用、数え切れないほどの時間の損失、そして規制当局との友好関係を犠牲にすることになるだろう。その間も、グレイスケールは信託の減少する資産から手数料を徴収し続けるだろう。

GBTCのマイナス・プレミアム解消に向けた、ETF転換申請とは別のソリューションとして市場で期待されているのが「レギュレーションMの免除」だ。ファンドが株式の発行と償還を同時に行うことを認め、これにより裁定取引メカニズムを適切に機能させることができるようになる。グレイスケールのQ&Aによると、同社はレギュレーションM免除をETF転換の承認プロセスの一環として取得する方針。

しかし、分析機関MessaiのRyan Selkis CEO(最高経営責任)によると、グレイスケールは訴訟を指し置いて、今するレギュレーションMの承認申請を実行できる。その選択により、マイナス・プレミアムを早期に解消できると指摘する。グレイスケールの親会社Digital Currency Groupの共同創設者だが、現在は組織を離れているSelkis氏は、仮に自身がまだDCGにいたら、以下のようにアドバイスすると説明した。

レギュレーションMはGBTCのディスカウントを解消し、DCGのバランスシートを強化するのに役立つ。また、これがグレイスケールを殺すことにはならない。

レギュレーションMの免除は、(ETF転換申請とは別の)新しい道となる。

レギュレーションMとは

SECのレギュレーションMは、売り出しの結果に関心を持つ個人による操作を防止するように設計されている。売り出された証券の市場に人為的に影響を与える可能性のある活動や行為を禁止する。例えば、空売り規制、引き受け会社のキックバックなどがある。

▶️仮想通貨用語集

関連:グレースケール投信GBTC、関連会社の流動性危機の影響は?

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
10/27 日曜日
13:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、アバランチのVisaカード発行やAI系ミームコインGOATの高騰など
仮想通貨市場の1週間の動きをまとめ、ビットコイン、イーサリアム、XRP、アバランチなど時価総額上位の仮想通貨の最新の材料を紹介。米国著名投資家の発言やマイクロソフトのビットコイン投資検討など、重要なトピックスも取り上げた。
11:30
心理的節目の上抜けに成功すれば、ショートカバー伴い最高値を試しにいく展開も視野|bitbankアナリスト寄稿
bitbankアナリストが1000万円台前半で底堅い推移となるビットコイン(BTC)相場を分析。今週の相場失速で失望するのは時期尚早だと言及し、今後の展望を解説した。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|DOGE時価総額3兆円突破に高い関心
今週は、ドージコインの時価総額3兆円突破、米政府のウォレットから30億円相当の仮想通貨が不正流出した可能性、マイクロソフトのビットコインへの投資評価に関するニュースが最も関心を集めた。
10/26 土曜日
14:00
「ビットコイン現物ETF、個人投資家が需要の8割を占める」バイナンスが報告
バイナンスがビットコインの流通量4.5%を現物ETFが保有していると指摘。個人投資家主導の需要拡大と機関投資家の緩やかな参入を分析している。
11:55
リップル社、仮想通貨XRPめぐる対SEC控訴裁判で4つの論点を提出
リップル社がSECとの裁判で控訴審に向けた陳述書を提出。ハウィーテストの適用など4つの重要論点を提示している。
07:20
マイクロストラテジー、24年ぶりの高値 ビットコイン強制売却の可能性は「極めて低い」 BitMEXが分析
BitMEX Researchのアナリストは、マイクロストラテジーが現在の債務構造に基づいて保有しているビットコインを強制的に売却する可能性は「極めて低い」と主張した。
06:35
ハッカー、米政府の仮想通貨ウォレットに大部分の流出資金を返還
米政府の仮想通貨ウォレットから流出した約30億円相当の資金のほとんどが、24時間以内に返還されたことが観測された。
06:15
テザーCEO、米政府捜査の報道を否定
ステーブルコイン発行企業テザーのパオロ・アルドイーノCEOは26日、米国の連邦検察当局が同社を調査しているとのWSJ報道内容を否定した。
10/25 金曜日
18:05
AIエージェントと仮想通貨の融合 コインベースが描く未来像
米コインベース・ベンチャーズは、人工知能(AI)とブロックチェーン技術の新たな融合がデジタル経済を変革すると主張。Web3上で、自律型AIエージェントが人間と自由にやりとりする世界「エージェントWeb」が誕生する未来のビジョンを描いた。
13:28
国内における「暗号資産ETF」実現に向け、 ビットバンクが勉強会の総意として提言公表
暗号資産(仮想通貨)bitbankを運営するビットバンクは、証券会社や資産運用業者、信託銀行等と共同で行う「国内暗号資産ETF」勉強会への参加とともに、参加メンバー一同として日本における暗号資産ETFの実現に向けた提言を発表した。
11:40
個人マイナーが再びビットコインブロック採掘に成功、3200万円相当の報酬獲得
仮想通貨ビットコインのソロ個人マイナーが再び大きな報酬を獲得したことが判明した。9月に続く事例である。
10:45
1995年公開「攻殻機動隊」のNFT、アニモカブランズジャパンから発売へ
今回は第一弾で、1995年に公開された押井守監督作品『攻殻機動隊』をフィーチャーしている。このNFTコレクションでは、作中に登場するキャラクターのパーツを、Mocaverse、CoolCats、San FranTokyoのPFP専用Traitsとしてそれぞれ描き下ろした世界に1つだけの作品となっている。
09:35
米国ビットコイン現物ETF、約100万BTCの保有でサトシ・ナカモトに迫る
米国ビットコイン現物ETFの保有BTCが98.5万枚を突破。サトシ・ナカモトの推定110万枚に接近している。
07:50
マイクロソフト、12月株主総会で「ビットコインへの投資評価」を議決権行使項目に設定
米IT大手マイクロソフトは12月上旬に予定されている2024年の年次株主総会に向けて、「仮想通貨ビットコインへの投資の評価」を議決項目の1つとして設定した。マイクロストラテジーのようにビットコイン保有企業になるか。
07:20
取引所らの企業、日本の仮想通貨ETF誕生に向け提言作成
日本で仮想通貨ETFが承認されることを目指し、取引所や法律事務所らが税制改正などを含め提言を作成した。対象銘柄をビットコインとイーサリアムに絞ることも提案している。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/12/01 09:30 ~ 20:00
東京 墨田区文花1丁目18−13
重要指標
一覧
新着指標
一覧