WebX完全ガイド
TOP 新着一覧 取引所 WebX
CoinPostで今最も読まれています

イーサリアム研究者、量子耐性署名「SPHINCS-」を提案 既存EVMで検証コスト大幅削減

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • イーサリアム財団の研究者が、既存のEVM上で検証可能な量子耐性署名「SPHINCS-」を提案
  • ハードフォークなしで導入可能で、検証コストはわずか0.07ドルの低コストを実現

既存のEVM上で検証可能な量子耐性署名

イーサリアム財団の研究者ニコラス・コンシーニー氏は12日、イーサリアムリサーチのフォーラムへの投稿で、EVM(イーサリアム仮想マシン)上で検証可能な量子耐性署名方式「SPHINCS-(スフィンクスマイナス)」を提案した。

SPHINCS-は、米国国立標準技術研究所(NIST)が標準化した量子耐性署名方式「SLH-DSA(FIPS 205)」の基礎となったハッシュベース署名「SPHINCS+」を基盤に、既存のEVM環境で効率的に動作するよう最適化した研究提案だ。事前コンパイル(precompile)の追加やプロトコルの変更に頼ることなく、オンチェーンでの検証コストを最小限に抑えることを目標としている。

コンシーニー氏は、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏との議論を通じ、EVMにはすでに低コストの「KECCAK256」というハッシュ関数が実装されていることに着目したと説明している。同氏によると、KECCAK256を使うことでSHAKE256の代替としてオンチェーン検証をネイティブに実行できる。

そこで本提案では、NIST標準の「SHAKE256」を、イーサリアムネイティブの「KECCAK256」に置き換えることで、Solidity(イーサリアムのプログラミング言語)による署名検証機能の実装を可能にしている。

NISTはSPHINCS+において、署名回数の上限を2^64(2の64乗)回とする設計を採用しているが、コンシーニー氏は、これはブロックチェーンウォレットの実際の利用頻度に対して過剰な仕様だと主張する。

Dune Analyticsのデータ分析によると、マージ以降のイーサリアムメインネットにおいて、最もアクティブな上位0.1%のユーザーであっても、年間取引数の99.9パーセンタイル値は約431回にとどまるという。

こうした実態を踏まえ、コンシーニー氏らは署名回数の上限を現実的な水準(2^14~2^20回程度)に引き下げつつ、安全性を維持する設計を検討した。最適化されたバージョン「C13」では、検証コストは約127,000ガス、署名サイズは3,704バイトとなった。これに対し、標準的なSLH-DSA-SHA2-128-24では、検証コストは142,000ガス、署名サイズは3,856バイト、鍵生成と署名生成の合計で約10億7,000万回のハッシュ呼び出しが必要になるとされる。

コンシーニー氏は、この提案に関するXへの投稿で、SPHINCS-の利点を次のようにまとめている。

イーサリアムは、ハードフォークを待つことなく、今すぐ耐量子世界に向けたアカウントの対応を始めることができる。
現在、そのコストはわずか 0.07ドルだ。

関連記事:イーサリアム財団、量子コンピュータ対策チームを新結成

イーサリアム財団が量子コンピュータ対策チームを新設した。100万ドルの報奨金制度も開始し、耐量子暗号の実装を加速させる。

将来への橋渡し役として

コンシーニー氏は、SPHINCS-は現在、実用性を最優先した結果、NISTの標準規格から外れた「非標準」の仕様となっているとの見解を示し、主な相違点として以下を挙げた。

  • ハッシュ関数の変更
  • 署名上限数の制限
  • 標準パラメータセットとの不一致

一方でNISTも現在、署名回数を抑えた軽量なパラメータセットの標準化を進めており、SPHINCS-の技術は将来の標準規格にもそのまま応用可能であると同氏は見ている。しかし、SPHINCS-により検証コストは改善したものの、署名生成処理のコスト(計算負荷)は依然として高く、ハードウェアウォレットやモバイル環境におけるユーザー体験への影響が検討課題として残っている。

また、将来的にはzkEVM(ゼロ知識イーサリアム仮想マシン)との親和性向上が重要であり、ゼロ知識証明に適したハッシュ関数を採用する必要があると同氏は指摘。この方向性に基づいた発展形を「leanSPHINCS(無駄のないスフィンクス)」と名付け、プロトコルレベルの集約が必要になると述べた。

コンシーニー氏は、SPHINCS-はプロトコルの変更を待つことなく、現時点で導入可能なハッシュベースの量子耐性署名の中で最もガス効率に優れた選択肢であり、将来的に「leanSPHINCS」が実現するまでの架け橋になり得るとの見方を示した。

Google Newsでフォロー
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/30 木曜日
18:57
ANAP、「BITCOIN JAPAN 2026」を11月に開催へ
ANAPホールディングスが2026年11月27〜28日、ベルサール秋葉原で「BITCOIN JAPAN 2026」を開催する。企業向けSUMMITから一般向けFESTIVALまで3部構成で展開し、「WebX」運営実績を持つCoinPost子会社のSBIイベントクリエイトが企画運営を担う。
17:37
ビットコイン短期保有者の実現時価総額が62%減=アナリスト分析
ビットコインの短期保有者(STH)による実現時価総額が、10月の高値から約62%減少したとアナリストが指摘。資本の破壊と安値圏での再取得が背景にあり、過去の弱気相場の水準に接近している実態を解説する。
16:53
台湾モデルとAIエージェント、オードリー・タン氏の視座|WebX2026
WebX2026のファイヤーサイドチャットで、台湾のオードリー・タン氏が「信頼は土壌」という統治哲学からAIエージェント時代の安全設計まで語った内容をレポート。
14:17
セイラー氏、ビットコインのコンセンサスルールは「憲法」 プロトコル変更に警鐘
ストラテジー会長マイケル・セイラー氏が、ビットコインのコンセンサスルールを「憲法」に例え、BIP-110などのプロトコル変更提案を「経済的権利への攻撃」と痛烈に批判した。
13:56
イーサリアムは中立の決済レイヤー、トム・リー氏が展望|WebX2026
ビットマイン取締役会長トム・リー氏がWebX2026でEthereum Institutional共同創設者デイビッド・ウォルシュ氏と対談。企業財務におけるイーサリアム活用、ステーキング、Robinhood Chainの躍進、AIと暗号資産の未来までを語った。
12:27
米国債の利回りが仮想通貨キャリートレードを上回る状況 市場は「無関心」局面=グラスノード
グラスノードが仮想通貨週次レポートを発表。米国債利回りが仮想通貨キャリートレードを上回り新規の買い手は現金を手元に様子見していると分析した。
11:30
日立、暗号資産AML実証で実用性確認 10月新サービス
日立が金融機関・暗号資産事業者など17社と実施したAML実証で実務適用可能性を確認。2026年10月からデジタルアセット取引向けAMLモニタリングサービスの提供を開始する。金融庁支援案件としての取り組みの中身を解説する。
11:02
SEC議長、クラリティー法不成立なら独自ルール策定へ
米SECのアトキンス委員長は27日、仮想通貨の市場構造法案「クラリティ法」が上院で成立しなければ、SEC自ら仮想通貨規則を策定する用意があるとCNBCに述べた。法案の現状と、規制枠組みが政権交代で覆るリスクをどう見ているかを解説する。
09:04
米国44州の司法長官「スポーツ関連予測市場の規制権限はCFTCにない」と主張
米44州の司法長官がCFTCのスポーツ予測市場規制案に対して、本来の規制権限を超えていると反対する意見書を提出。スポーツ業界からはNFLも規則案の不備を指摘している。
07:34
BNY、トークン化ファンド向けの新機能をローンチ
BNYは、トークン化ファンド向けに新しいデジタル・トランスファー・エージェンシー機能をローンチしたと発表。機能の目的やブラックロックなどの利用計画を説明している。
07/29 水曜日
17:11
ロシアFSB、テレグラム創業者ドゥロフ氏を国際手配 テロ支援容疑
ロシア連邦保安庁(FSB)は7月29日、テレグラム創業者パベル・ドゥロフ氏をテロ支援容疑で刑事訴追し、国際指名手配したと発表。破壊工作やサイバー詐欺の準備に利用された投稿を同社が削除しなかった点を問題視している。
16:26
カートの先へ、決済大手3社が語るステーブルコイン決済の未来|WebX2026
WebX2026のBinanceステージで、Mastercard・Binance Japan・Ellipticの3社がステーブルコイン決済の現在地を議論。加盟店決済の変化からAIエージェント時代の決済インフラ、断片化する規制対応までをレポートする。
14:52
JPX-QUICK暗号資産指数、参照取引所に4社決定
QUICKとJPX総研は29日、共同運営する「JPX-QUICK暗号資産指数シリーズ」の刷新を発表。bitFlyer・コインチェック等4社が参照取引所に選定された。指数刷新の狙いと今後を解説する。
14:05
2026年上半期の仮想通貨ハッキング被害約11億ドル、件数は史上最多=Blockaidレポート
オンチェーンセキュリティ企業Blockaidが2026年上半期のハッキング動向を公開した。被害件数は史上最多の212件、被害総額は約11億ドルに上った。北朝鮮系ハッカー集団による攻撃が被害額の55%を占め、AIエージェントを狙う新手法も確認された。
13:35
コインベース、FRBのフィンテック向け「決済口座」新設案に意見書 利息付与など3点の改善要望
米仮想通貨取引所コインベースがFRBの限定的な「決済口座」新設案に意見書を提出。制度自体は支持しつつ、利息付与やオーバーナイト残高上限の柔軟化など3点の改善を求めた。
今から始める仮想通貨特集
通貨データ
重要指標
一覧
新着指標
一覧