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イーサリアムは中立の決済レイヤー、トム・リー氏が展望|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX2026 | セッションレポート

イーサリアムは中立の決済レイヤー、トム・リー氏が展望

Tom Lee × David Walsh

WebX2026にて、Bitmine Immersion Technologies取締役会長のトム・リー氏と、Ethereum Institutional共同創設者のデイビッド・ウォルシュ氏によるファイヤーサイドチャットが行われた。企業財務におけるイーサリアム活用を軸に、ステーキング、Robinhood Chainの躍進、AIと暗号資産の融合、そして日本市場への期待まで幅広く語られた。

Tom Lee

Tom Lee

Bitmine
Chairman of the Board

Fundstrat共同創業者兼ヘッド・オブ・リサーチ、Fundstrat CapitalのCIOを兼務するマクロストラテジスト。J.P.モルガンでチーフ・エクイティ・ストラテジストを務めた経歴を持ち、2025年6月からBitmine Immersion Technologiesの取締役会長としてイーサリアムを軸とした企業財務戦略を主導する。

David Walsh

David Walsh

Ethereum Institutional
Co-Founder

イーサリアム財団でステーキング関連業務に約5年間従事した後、機関投資家によるイーサリアム採用を加速させることを目的にEthereum Institutionalを共同設立。エグゼクティブ・ディレクターを務める。

Bitmine創業の背景とETHへの強気転換

ウォルシュ氏は、最大級のイーサリアム・トレジャリー企業の会長として、そもそもイーサリアムという資産の何に魅力を感じてきたのかとリー氏に問いかけた。
Tom Lee
私がビットコインについて書き始めたのは約10年前で、当時1,000ドルにも満たなかった頃に、デジタルゴールドとしての物語を信じてホワイトペーパーを書いた。機関投資家はビットコインに1〜2%程度の配分をすべきだと考えていたが、その物語はこの10年で大きな信頼を獲得してきた。
世界を見渡すと、決済や信用供与、資産の価格付けや移転といった金融のあらゆるインフラが、最終的にブロックチェーン上に再構築されると考えるようになった。その見方に立ち、私たちのチームはイーサリアムに対して強気になり、大量のイーサリアムを保有するトレジャリービークルを作ることを決めた。ストラテジー社に似ているが、ひと工夫を加えている。Fundstratでの役割や数多くの金融機関との関係を通じて、エコシステムの成長そのものを後押ししたいと考えたからだ。

ETHステーキングと「生産性」という発想

かつてイーサリアム財団でステーキング業務に携わっていたウォルシュ氏は、ステーキングという要素がイーサリアムへの投資判断にどの程度影響したのかを尋ねた。
Tom Lee
ステーキングという仕組みは私たちにとって非常に魅力的だった。プルーフ・オブ・ワークではなくプルーフ・オブ・ステークでは、取引を検証する人々が自らのETHをリスクにさらすことでセキュリティ層を提供し、その見返りとして利回りを得る。この構造のおかげで、Bitmineが保有するETHを「生産的な資産」として捉えることができた。
実際、Bitmineが現在保有する570万ETHのうち、ほぼ500万ETHをネイティブでステーキングしており、2.7〜2.9%程度の利回りを生み出し続けている。

Ethereum Institutionalが担う中立的な役割

ウォルシュ氏は、Ethereum Institutionalがイーサリアム財団のエンタープライズチームからスピンアウトした組織であり、この1年で約500の金融機関と対話を重ねてきたことを紹介した上で、Bitmineがなぜその主要な資金提供者となったのかを話題にした。
Tom Lee
EthLabsやEthereum Institutionalが資金調達を模索していた際、Bitmineがその主要な出し手の一つになることが重要だと考えた。私たちの資本は中立だからだ。イーサリアムに惹かれたのも、それが中立的なレイヤーだからで、金融における将来の決済レイヤーになると考えている。
中立性の反対は「中央集権」だ。技術や金融サービスの世界では、企業である以上、誰もが自社の技術やプラットフォームを使ってもらいたいと考えており、真に中立な主体にはなり得ない。イーサリアムの中立性は、そのエコシステムの規模と、ノードやバリデーターの多様性によって証明されてきたと思う。
補足:Ethereum Institutionalは2026年に発足した組織で、Bitmineのほか、Chainlink、SharpLink、Joseph Lubin氏らが主要な資金提供者に名を連ねている。

Robinhood Chain躍進とL2エコシステムの拡大

直近2週間でRobinhood Chainが出来高の面で大きな成功を収めていることに触れ、ウォルシュ氏は、Robinhood・Coinbase・Krakenといった企業がこぞってイーサリアム上に自社チェーンを構築する動きが市場全体にとって何を意味するのかを尋ねた。
Tom Lee
イーサリアムはこうした成果を十分にアピールできていないと思うが、これは大きな成果だ。RobinhoodはArbitrumが構築したイーサリアム上のL2で、出来高はすでに10億ドルを超え、Hyperliquidの出来高を上回った。DEXとしてはソラナの総出来高を近く上回るのではという声もある。取引手数料もETH建てで、実際にETHを使用・消費する仕組みになっている。これはETHにとって大きな追い風だ。
開発者エコシステムの規模は、イーサリアムのメインネットでもEVM全体で見ても圧倒的に大きい。開発者は約8,000人に上り、毎日100万人がETHを利用している。J.P.モルガンがイーサリアム上でトークン化されたマネー・マーケット・ファンドを立ち上げ、初日に自己資金1億ドルに加えてさらに1億ドルが投入され、その後数週間で250%増加した例もある。すでに9つのG-SIBがイーサリアムのメインネット上で本番稼働のプロダクトを持っている。

AI時代の暗号資産と日本市場への期待

議論はAIと暗号資産の融合、そして日本市場の重要性へと移った。
Tom Lee
投資家の多くは短期的なリスクリワードしか見ておらず、5年後・10年後を見据えた賭けをしたがらない。しかしAIには大きな下流への影響がある。近い将来、AIが人に代わって取引や請求書の支払いを担うようになり、AIが経済的にユーザーよりも強い存在になるリスクさえある。AIシステムが独自の金融レールや決済システムを構築し、人間がそこから締め出されるという「富の不気味の谷」のような事態も想像できる。だからこそ、ガードレールとキルスイッチを備えたスマートコントラクト・プラットフォームという中立的な制御の仕組みが必要になると考えている。
日本は高度に発展した経済であり、家計純資産は世界でも上位クラスだ。長年デフレの影響で債券市場に重点を置く慎重な市場だったが、状況は大きく変わり、規制当局も暗号資産に前向きだ。AIブームの恩恵を受ける国はいずれ同等の暗号資産戦略を持つ必要があり、日本はこの新しい金融インフラへの移行を主導できる立場にあると思う。

セッション総括

トム・リー氏は、イーサリアムの市場シェアについて次の見通しを示して締めくくった。

「今後10年で、信用供与や資金移動、取引システムといったあらゆる金融のレールがブロックチェーン上へ移行していくのは避けられないと考えている。イーサリアムがそのうちの70%を占めない理由はないだろう。現在ブロックチェーン上で運用されている資産規模はまだ数千億ドル程度に過ぎないが、今後は数兆ドル規模になっていくはずだ。ETHの価格も、それに伴って大きく上昇すると見ている」

関連記事:「イーサリアム2.0時代の到来」トム・リーが描くイーサリアムの回復シナリオ|WebX2026

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