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2026年上半期の仮想通貨ハッキング被害約11億ドル、件数は史上最多=Blockaidレポート AIプロンプト攻撃など新たな手法も確認

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 北朝鮮系被害、上半期の55%
  • 秘密鍵侵害が被害額の74%占める

ハッキング被害件数が史上最多に

オンチェーンセキュリティ企業Blockaidは28日、2026年上半期( H1)のハッキング動向をまとめたレポートを公開した。

レポートによると、H1は過去最悪のハッキング被害を記録した半年となり、同社が確認した重大な不正攻撃の件数は212件で、2025年通年の3.4倍に達した。一方、被害総額は約11億ドルで、2025年上半期を下回った。これは、2025年に発生したBybitの15億ドル規模のハッキングに匹敵する単独の事件が起こらなかったためだ。

Blockaidは、2026年上半期の4大ハッキング事例としてKelp DAO、Driftプロトコル、Resolv、CoWプロトコル関連の事故を挙げた。この4件だけで被害総額は約7億700万ドルに上り、上半期の被害総額の約64%に達した。

最大被害となったKelp DAO(2億9,200万ドル)は、単一のブリッジ検証者が侵害されたことで偽のクロスチェーンメッセージが承認されたことが原因で、スマートコントラクトの脆弱性は関係なかった。Driftプロトコル(2億8,500万ドル)も、マルチシグ署名者を標的としたソーシャルエンジニアリングにより管理権限が奪われたもので、両事件とも北朝鮮系ハッカー集団TraderTraitorによる犯行とされている。

一方、Resolvでは認証鍵の侵害により8,000万ドル分の裏付けのないステーブルコインが不正に発行され、CoWプロトコルでは、機関投資家自身の署名ミスによって約5,040万ドルの損失が発生した。

被害額ベースでは秘密鍵や認証情報の侵害が最大のリスクとなっており、運用セキュリティを狙う攻撃が上半期の被害額の74%(約7億8,900万ドル)を占めた。そのほぼ全てが、DriftとKelp DAOを含む6件の大規模インシデントに集中していた。

一方で、発生件数ではスマートコントラクトの脆弱性を悪用した攻撃が約80%を占めた。このような攻撃は件数は多いものの、被害総額は約2億300万ドル(19%)にとどまった。

被害額をネットワーク別にみると、イーサリアム関連が約3億3,200万ドル、ソラナ関連が約3億2,600万ドルと突出している。ネットワークごとの被害額の違いについて、同社は各チェーン上に存在するアプリケーションの種類だけでなく、攻撃者がどのように攻撃を実行したかという点にも起因していると分析している。

イーサリアムエコシステムには、高額資産を扱うプロトコルが集まっていることから、依然として主な攻撃対象となっているとレポートは指摘。主要な攻撃手法として、ブリッジやスマートコントラクトの脆弱性を突く攻撃や、特権アカウントへの不正アクセス、MEVサンドイッチ攻撃などを挙げた。

一方、ソラナでは被害の98%以上が秘密鍵の侵害に起因している。ソラナではマルチシグ運用が多いことから、発生した攻撃は署名者インフラや組織のセキュリティ体制を主な標的としていた。

関連: ビットコイン(BTC)の今後・将来性【2026年6月】有識者7名の価格予測と2030年シナリオ

北朝鮮関連ハッカーによる被害が拡大

攻撃者の属性としては、北朝鮮関連のハッカー集団による攻撃が被害額の大部分を占めた。特に、ラザルス・グループの下部組織とされるTraderTraitorに関連する攻撃では、KelpDAOとDriftプロトコルの2大事例だけで約5億7,700万ドルに上った。なおTrader Traitorは、2025年のBybitへの攻撃の実行犯とされている。

さらに、Humanityプロトコルへの3,200万ドルの攻撃も同グループに関連付けられており、北朝鮮関連とされる攻撃による被害額は合計で約6億900万ドルに達した。これは2026年上半期の総被害額の約55%に相当する。

最大の事例であるKelpDAOはインフラ侵害によるもので、ハッカーはソーシャルエンジニアリングを用いてLayerZeroの開発者の認証情報を窃取し、その後RPCインフラを汚染して偽の検証証明を作成した。

Blockaidは、北朝鮮関連のハッカー集団による署名者侵害の試みが今後も続くと見ている。LinkedInを利用したソーシャルエンジニアリングによってマルチシグ署名者を侵害する手法は、2026年上半期の4大インシデントのうち2件を引き起こした。こうした攻撃パターンが収束する理由はなく、今後も継続する可能性が高いと警告した。

関連記事:AI悪用で深刻化する北朝鮮の金融業界サイバー攻撃、2025年被害額が前年比51%増に=レポート

クラウドストライクの最新レポートで、北朝鮮関連ハッカーが2025年に約20億ドル相当の仮想通貨を金融業界から窃取と判明した。AI活用やIT工作員潜入など手口も巧妙化している。

新たな攻撃手法と今後の展望

レポートは、2026年上半期に登場した新たな攻撃手法として、以下の3つを挙げている。

  • AIエージェントへの攻撃:
    AIへの指示を悪用すること(プロンプトインジェクション)によってAIに誤った判断をさせ、不正取引を承認させる攻撃が発生。(BankrのAIエージェントを攻撃)
  • オフチェーン型ブリッジ検証システムへの攻撃:
    クロスチェーンメッセージの検証を担うオフチェーンインフラが新たな標的となり、偽造証明による攻撃が確認された。
  • 新たなイーサリアム標準「EIP-7702」を利用したウォレット委任攻撃:
    ウォレット権限をスマートコントラクトへ委任できる新機能が、新しい攻撃面を生み出した。

Blockaidによると、これらの新たな攻撃はいずれも、2025年時点の標準的なセキュリティ監査の対象外だった「信頼境界」で発生しており、新たなリスク領域が生まれたと指摘する。

2026年下半期に見込まれる主要なセキュリティリスクとして、北朝鮮系ハッカーによる脅威に加え、主要ウォレットでウォレット委任がデフォルト化するにつれ、EIP-7702を悪用したウォレット攻撃が拡大し、100万ドル規模の被害が発生するとBlockaidは予想している。

またKelp DAOで発生したような単一検証者(Single Verifier)への攻撃は一過性ではなく、同様の信頼モデルを採用したクロスチェーンプロジェクトも、引き続きリスクにさらされていると指摘する。

そして、AIエージェントを標的とした攻撃は今後急増すると予想している。Bankrで発生した21万6,000ドル規模の攻撃は、AIエージェントに対する初の攻撃事例だったが、AIエージェントの導入は年間約10倍のペースで拡大しているため、2026年下半期には複数の事例が発生するとBlockaidは予測している。

主な攻撃手法としてはプロンプトインジェクションを皮切りに、AIツール利用権限の悪用や不正な署名操作の誘導などが増加するとみられる。

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