ビットコイン現物ETF却下を巡る裁判
米暗号資産(仮想通貨)運用会社グレースケールは11日、米国証券取引委員会(SEC)を相手取った訴訟で、コロンビア地裁に最初の陳述書を提出した。SECはビットコインETFを審査する上で恣意的、差別的であると主張している。
背景としてSECは6月、グレースケールのビットコイン投資信託「GBTC」のETF転換申請を却下している。この際、同社のMichael Sonnenshein CEOは「ビットコインの現物ETFが米国市場に登場することを拒否し続けるSECには深く失望している」と述べ、SECに対して訴訟を起こす方針を表明していた。
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グレースケールは今回の書面で、SECが2021年から複数のビットコイン先物ETFは承認する一方で、ビットコイン現物を直接保有するETFは却下し続けていることを批判した。
ビットコイン先物も現物ビットコインも、同様の指標に基づいて価格を生成するため同じリスクを保有していることを踏まえると、SECの判断は恣意的だと指摘。「SECは同様の事例を同様に扱う義務があるが、この点からも、正当化できない行為」であり、SECはビットコインの現物投資について権限外のところで判断を行っていると申し立てた。
グレースケールは、SECがGBTCのETFへの転換を認めなかったことで、GBTCを保有している「85万人の投資家に損害が及ぶ」とも加えた。SECがETF転換を承認しないことで「GBTCは信託の基礎となるビットコインの価値を密接に追跡することができず、投資家から数十億ドルの価値を奪っている」と述べた。
ビットコインETFとは
ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託(Exchange Traded Fund)のこと。投資信託とは、投資家から集めたお金を1つの資金としてまとめ、株式や債券などに投資して運用される金融商品。運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みになっている。投資信託の中でもETFは証券取引所に上場しているため、株式と同様に売買ができる。
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業界団体も支援
米デジタル商工会議所や大手取引所コインベースそしてニューヨーク証券取引所も、グレースケールを支持する法定助言書(amicus brief)を裁判所に提出。ロビー団体のCoin Centerや米ブロックチェーン協会なども名を連ねた。
同会議所は、18日に地方裁判所に提出した意見書で次のように意見を表明した。
ビットコインの現物市場証券が、ビットコイン先物と詐欺や不正操作リスクにおいて実質的に類似しているという意見が存在している。それにも関わらず、SECはビットコイン現物ETFに対して、ビットコイン先物ETFとは異なる取り扱いをする正当な理由を示していない。
また、本件は「SECが企業への通知を行ったり、意見申し立ての機会を与えることなく、陰で主要な政策決定を行っているようにみえる事例の一つ」だとも続けている。
さらに、「こうしたアプローチは、SECが一般市民や法的機関に理由を説明することなく、恣意的に勝者と敗者を選ぶことを可能とするもの」であり、投資家や企業から投資やイノベーションの機会を奪っていると論じた。
コインベースとブロックチェーン協会の見解
コインベースは意見書の中で、「ビットコインの現物市場は、ビットコイン先物市場やその他一部の商品(コモディティ)市場よりも大きく、安定している」と指摘。また、コインベースなどの仮想通貨取引所には、価格操作や詐欺を防ぐための強固なシステムが備わっていることにも触れている。
その上で、ビットコイン現物ETFの非承認は、「不必要にイノベーションを妨げ、米国が世界の市場に遅れを取る原因となる」とも意見した。なお、オーストラリアなどではすでにビットコイン現物ETFが承認されている。
ブロックチェーン協会は、SECが「ビットコインと時価総額や価格変動において類似」するとされる貴金属パラジウムを例に挙げ、ETF化を承認しているとコメントした。