米サークル社がSECを非難「SPAC株式上場計画の頓挫に責任あり」
合併登録届出の有効化ならず
ステーブルコイン「USDC」を運営する米サークル社(Circle)は、特別目的買収会社(SPAC)を通じた株式市場への上場計画が頓挫したのは、米証券取引委員会(SEC)の不作為によるものだとして、規制当局を非難した。
ファイナンシャルタイムズ(FT)の報道によると、サークル社の上場計画が失敗した主な理由は、昨年の仮想通貨市場の混乱や低迷、また投資家心理によるものではなく、SECが同社の「S-4登録」を「有効」と宣言しなかったため、契約期限内にSPACとの合併が完了できなかったことに起因すると主張しているという。
S-4登録とは新規株式公開の許可を得るために、企業がSECに提出する登録書類。
サークル社は2021年7月、SPACのConcord Acquisition Corp.と合併し、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場する計画を発表。22年2月には新たな取引条件でConcord社と契約を締結し、同社の評価額は当初の5,815億円(45億ドル)から倍の1兆1,630億円(90億ドル)に引き上げられた。
しかし昨年12月、契約の期限内に合併を完了できなかったとして、サークル社は上場計画の解消を発表。合併には、SECが登録届出を有効とすることが前提条件だった。
SPAC(特別買収目的会社)とは
SPAC(特別買収目的会社)は、「Special Purpose Acquisition Company」の略で、その企業自体は事業をもたず、未上場企業の買収を行うことを目的とする。 先にSPACが上場し、その後にターゲットとなる企業を買収し、結果的に買収先の企業が上場を果たす仕組みである。正式な審査を経ずに企業が上場できたが、最近では規制当局の監視が強化されている傾向がある。
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サークル社CEOの見解
一方、米メディアのビジネスインサイダーによると、サークル社の広報担当者はConcord社とのSPAC合併契約の終了に関して、同社がSECを非難しているという記述は不正確だと指摘したという。この取引に関しては単に期間が満了となったに過ぎず、相互に同意しての解消だったと説明した。
上場計画解消を発表した際、サークル社のJeremy Allaire最高経営責任者は、「SECはサークル社のビジネスと、この業界の多くの新たな側面を理解しようとするにあたって、厳格かつ徹底的であったと思う」とコメント。暗号資産(仮想通貨)関連企業が信頼性や透明性を提供し、説明責任を果たすためには必要な審査だとの見方を示していた。
FTは、事情に詳しい人物の談として、サークル社の上場計画発表から解消に至るまでの間(約18ヶ月間)、SECの対応が非常に遅かったことに言及。その人物は同時に、FTXの崩壊によって規制のギャップが明らかになり、損害の大きさが強調されたことで、「誰も、何も承認することが不可能」な状況に陥ったと述べた。
SECの姿勢
SECは、ビットコインETFの承認などのプロセスでは、幾度も判断の延期を繰り返す一方で、証券法違反の摘発等では、仮想通貨市場に対して、唐突に強硬なアプローチを取ることがある。
直近では、仮想通貨大手取引所ジェミナイ(Gemini)と融資企業ジェネシス(Genesis)を、証券法違反で提訴したと発表。ジェネシスを介して提供されていたジェミナイの利回りサービス「Gemini Earn」が、未登録有価証券の募集・販売に該当すると主張している。
これに対し、ジェミナイの共同創設者タイラー・ウィンクルボス氏は、証券法違反の対象となったサービスについて、17ヶ月間SECとの話し合いを重ねてきたと指摘。SECが事前に通知することなく、投資家保護の代わりに訴訟に踏み切ったことを残念に思うとコメントした。
SECの規制アプローチは明確性に欠けているとの批判も多く、昨年12月には、米連邦議員からゲリー・ゲンスラー委員長に対し、「規制失敗のコスト」について議会証言を求める声も上がっている。
ゲンスラー委員長は、ほとんどの仮想通貨は有価証券に分類される可能性があると主張する一方、どの仮想通貨が有価証券とみなされるかについては、いまだ明確にしていない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します