ビットコイン大幅続伸で24500ドル台復帰、大手銀行破綻の影響で「利上げ停止」予測も
マクロ経済と金融市場
13日の米NY株式市場では、ダウは前日比90ドル(0.3%)安、ナスダックは49ドル(0.45%)高で取引を終えた。
銀行株を中心に売りが先行し、米カリフォルニア州サンフランシスコを本拠地とする商業銀行であるファースト・リパブリック・バンクの株価は前日比67%安と暴落した。地方銀行は軒並み大幅下落している。
米連邦準備理事会(FRB)やJPモルガン・チェースから追加与信枠700億ドル(約9兆4000億円)の確保を発表したが、信用不安を背景に投資家がポートフォリオのエクスポージャー減少を急いだことから、パニック売りの様相を呈した。
株式市場から流動性の引き揚げが加速し、安全性の高い米国債への資金移動が起きているとの指摘がある。FRB(米連邦準備制度)の金融政策にも影響を及ぼすとの見方から、長期・短期ともに国債利回りが下落した。
一方、ビットコイン反騰を受け、ここのところ下落基調にあった暗号資産関連銘柄は急反発。米最大手取引所運営のコインベースが前日比10.7%高、BTCを大量保有するマイクロストラテジーが16.22%高となったほか、ライオットやマラソンデジタルといったマイニング(採掘)関連株も高騰した。
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仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比9.19%高の24,416ドル。
2月中旬の直近高値25,256ドルに迫る勢いで値を戻した。上昇要因としては、シリコンバレー銀行(SVB)破綻発の金融危機リスクおよびUSDC崩壊リスクの懸念後退と、バイナンスの好材料が挙げられる。
バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは13日、「リカバリーイニシアティブファンド」の未使用金約10億ドル(約1330億円)について、ステーブルコイン「BUSD」からビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ビルド・アンド・ビルド(BNB)に変換すると言及した。
同リカバリーファンドは、22年11月のFTX破綻で窮地に陥った企業支援のためバイナンスが設立した基金だ。CZは、銀行の経営破綻が相次ぎ、サークル社の発行するUSD Coin(USDC)などにも影響が生じたことなどを念頭に、銀行やステーブルコインを巡る状況の変化を変換を決断した理由として挙げた。
先週末には、米ドルの価値と1:1で連動する設計のUSDCにおいて、準備金の内33億ドルがシリコンバレー銀行から引き出せない状況に陥ったことが伝わると売りが殺到。急激なディペグ(価格乖離)を引き起こして市場の混乱を招いた。
CZによれば、約10億ドルの送金に関する取引のトランザクションは15秒で完了し、送金コストはわずか1.29ドルだったという。この点について「月曜日の営業時間前に、銀行から9億8000万ドルを移動することを想像してみてほしい」と言及。銀行の営業時間に依存するリスクや手続きの煩雑さ、取引時間や手数料のコストを比較し、暗号資産(仮想通貨)ならではのメリットを強調した。
金融市場のリスクオフは、スタートアップ企業を中心に融資を行っていた米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻が背景にある。22年12月末時点の総資産は約2100億ドル(約28兆円)に達しており、2008年の金融危機以降では最大規模の銀行破綻となる。
FRB(米連邦準備制度)の急速な利上げにより債券投資の損失が膨らんだほか、スタートアップの資金調達コストが拡大しSVBから資金の引き上げが相次ぎ、一連の流れが信用不安を招いて取り付け騒ぎ(バンクラン)に繋がったことが原因とされる。
これに対し米金融当局は、放置すれば深刻な“金融危機”に発展しかねないとの懸念から、金融機関向けの「緊急融資枠(BTFP)」を設けることを発表。預金の全額保護措置を打ち出した。
米連邦預金保険公社(FDIC)の保護上限は1口座あたり25万ドルに留まっており、SVBの全預金額の内およそ9割が対象外だったこともパニック的な預金引き出しを加速させた経緯がある。
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利上げ幅再拡大の観測は大幅後退
このような状況を受け、大手金融グループのゴールドマン・サックスやバークレイズは、3月米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置き(利上げ停止)予想に転換した。野村証券の米国子会社「ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル」のエコノミストらさらに踏み込み、25bpの利下げおよび量的引き締め(QT)の終了を予想している。
金利先物市場では1週間前まで50bpの利上げ予想が8割以上を占めていたが、シリコンバレー銀行の破綻で金融危機シナリオが現実味を帯びるなか状況が一転した。伝統金融市場の混乱(金融危機への懸念)や金融引き締め観測の後退は、代替資産性のあるビットコイン相場にとってポジティブに働くとの見方から買い戻しが先行している。
13年3月に発生した金融危機キプロス・ショックでは、代替資産として白羽の矢が立ったビットコインが高騰。後に“デジタル・ゴールド”と呼称された。
本日21時半には、重要インフレ指標のCPI(米消費者物価指数)発表を控えており、数値次第ではFRB(米連邦準備制度)の金融政策判断に影響を及ぼすことになる。いずれにせよ、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では極めて難しい判断を迫られることになりそうだ。
なお、資産運用会社CoinSharesの週次レポートによれば、暗号資産(仮想通貨)投資信託などのデジタル資産に対する機関投資家の資金フローは、過去最大額となる前週比2億5500万ドルの資金流出となった。
シルバーゲート銀行やシリコンバレー銀行の破綻が投資家心理の悪化を招いた。流出額は投資商品「総運用資産(AuM)」の1.0%に相当する。
金額ベースでは今回が過去最大となるが、AuM比で見ると19年5月には1.9%の資金流出が観測されている。当時バイナンスで7,000BTC(約45億円)規模のハッキング被害が発生し、SAFUファンド(Secure Asset Fund for Users)でこれを補填した。
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