32ETHから2,048ETHへ イーサリアムの改善案、最大ステーキング量引き上げでネットワーク効率向上目指す
バリデーターのステーキング量増加案
6月15日に行われたイーサリアム(ETH)ブロックチェーンのコア開発者会議で、ETHバリデーターが保有可能な最大ステーキング量を引き上げるという新たな提案について議論された。
この提案では、一つのノードがステーキングできるETHの量を増加させることで、バリデーターの総数を抑えることが可能になり、結果としてイーサリアムネットワーク全体に様々なメリットがもたらされると主張されている。
現行の制度では、イーサリアムのバリデーターは一律で32 ETH(約800万円)を保有する必要がある。しかし、提案を作成したイーサリアム財団の研究員であるマイケル・ノイダー氏は、32ETHの最低保有要件はそのままに、一つのバリデーターがステーキングできる最大量を2,048 ETH(約5億円)まで引き上げるという変更を提案している。
DUNEのデータによると、記事執筆時点でバリデーターのノードとして700,000ユニットが稼働しており、更に90,000もの新規バリデーターが待機中の状況だ。イーサリアムネットワークでは、一定期間中に追加できるバリデーターの数が限られている。
ノイダー氏は、現在の32ETHという保有要件がイーサリアムネットワークの分散化に寄与する一方で、ネットワーク全体の効率を損なっている可能性があると指摘している。同氏は、ステーキング量を増やすことでバリデーターの数を抑制することが、次のような利点を生むと主張している。
- ノード間の直接通信(P2P層)の負荷軽減
- ステーキングETHの出金処理の効率向上
- ブロックの処理速度の向上と、「シングルスロットのファイナリティ」の実現
- ブロック生成の効率化と、「Proposer-Builder Separation(ePBS):ブロック提案者とブロック構築者の役割分離」の実現
また、ノイダー氏は大規模なステーキングプロバイダーが直面する複雑なインフラ管理の問題も改善すると主張している。背後には、米Coinbaseのような大手取引所が数万単位のバリデーターを運用している現状がある。
しかし、ノイダー氏は、同じブロックに対して偶然に2つ以上のブロック承認が生じる「二重アテスト」によるブロックチェーンのフォークの危険性や、不正行為を行ったノードに対する罰則「スラッシング(ステークしたトークンの没収)」が強化される可能性など、この提案の実装に際して慎重に検討すべきリスクも存在すると説明している。
ステーキングとは
ステーキングとは、一定量の仮想通貨を所定の期間、預け入れることで報酬が得られる仕組みである。ステーキングは、PoS(Proof of Stake)のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨で行うことができる。
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バリデーター報酬の自動複利化
バリデーターが持てる最大ステーキングETHの増加以外に、ノイダー氏はバリデーター報酬の自動複利化についても提案している。
報酬の自動複利化により、バリデーターが保有するETHの収益性が向上するとされる。現在、ステーキング報酬を再ステーキングするためには、一度報酬を引き出して新規バリデーターを設置する手間が必要となる。しかし、ステーキングの上限が引き上げられれば、報酬はすぐに複利化されることになる。
今後もこの提案については、主要な開発者の間で議論が続けられる予定。ETHフォーラムやDiscordなどのソーシャルプラットフォームで実装の詳細について更なる議論が交わされることになる。
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