3つの移行
イーサリアム(ETH)共同創設者のVitalik Buterin氏は9日、自身のブログで新たな提言を公開した。その中でButerin氏は、イーサリアムが実験的な段階から一般ユーザにとって使いやすい、成熟した技術基盤へと移行するためには、「3つの移行」が不可欠だと指摘。それぞれの課題と解決の道筋について詳細を述べた。
3つの移行とは、「L2スケーリング移行(ロールアップへの移行)」、「ウォレットセキュリティの移行(スマートコントラクトウォレットへの移行)」、「プライバシー移行(プライバシーを尊重した資金移動への移行)」といったものだ。
これらの移行が行われなければ、イーサリアムの一般的な普及は達成されず、ユーザーは依然として中央集権型のソリューションを選択し続けるだろう、とButerin氏は語る。
特に、同氏はブロックチェーンやイーサリアムのユーザーとアドレスの関係性(1ユーザー=1アドレス)が、これらの3つの移行に伴い大きく変わることを予見している。現在のイーサリアムユーザーの多くは複数のL2(レイヤー2ソリューション)上で同じアドレスを共有しているが、将来的に混乱を招く可能性があると述べている。
例えば、Buterin氏が使用しているBrave Wallet(上図)では、4箇所でETHを保有している。今後L2の採用が拡大するにつれ、資産がさらに点在することになり、また店舗などでの決済時のL2選択作業もますます複雑になることが予想される。
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キーストアコントラクト
この問題に対する一つの解決策として、Buterin氏は「キーストアコントラクト」の利用を提案している。キーストアコントラクトは異なるL2間でのアドレス管理を一元化し、ネットワーク間のトランザクションをスムーズに行うための手段となる。これによりガス料金の削減やプライバシーの向上が可能となる。
ユーザーは各L2に異なるアドレスを持つが、これらのアドレスから資金を引き出す際には、キーストアコントラクトに現在(あるいはごく最近の)支払い公開鍵の証明を提示する必要がある。この証明プロセスをZK-SNARKs(ゼロ知識証明)を用いて行うことで、プライバシーの強化も可能となる。
さらに、Buterin氏はウォレットが単なる資産保護のツールだけでなく、個人データの保護をも担うべきだと主張している。これには、ZK-SNARKベースのIDシステムや、秘密鍵の分散管理によるソーシャルリカバリー(復元機能)が含まれる。
レイヤー2とは
ブロックチェーンの取引処理能力を向上させる追加層。イーサリアムのようなメインチェーンから取引を引き受け、圧縮したデータをレイヤー1に戻すことで、1秒間の処理取引数を増加させる役割を果たす。メインチェーンに全ての取引を記録すると、処理速度が遅くなり手数料が上昇する問題を解決する。
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アプリケーションの対応
全体として、「3つの移行」はイーサリアムの未来を形作るための道標となる。Buterin氏は、イーサリアムコミュニティ全体が現在のシステムを再評価し、一般のユーザーがこれら高度な概念を理解し活用できるようにすることの重要性を強調している。
改善すべきはプロトコルの機能だけでなく、場合によってはイーサリアムとの関わり方をかなり根本的に変える必要があり、アプリケーションやウォレットに深い変化が求められる。
例えば、dApps(分散型アプリ)が、スマートコントラクトウォレットを利用してオフチェーン(L2)署名を提供する「ERC-1271」規格に対応する必要があるとButerin氏は指摘している。オフチェーン署名とは、ブロックチェーンの取引を検証するための署名を、ブロックチェーンの外部で行うということだ。
Buterin氏は、ERC-1271に対応したdAppsとしてENS CCIP(Cross-Chain Interoperability Protocol)を例に挙げている。ENS CCIPは、ENS(Ethereum Name Service)の機能をL2に拡張するためのプロトコルで、これによりENSのサブドメインは任意のL2上で自動的に検証可能となった。
ここで述べているスマートコントラクトウォレットとは、2023年3月にイーサリアムのブロックチェーンに導入された「ERC-4337」規格、すなわち「アカウント抽象化」に対応するものを指している。この規格の導入により、従来のユーザーウォレットでも、サブスクリプション料金の支払いやゲーム内での自動支払いなど、プログラムベースの支払いが可能になった。
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