Dencunの概要
2024年1月25日現在、イーサリアム(ETH)ネットワークのコア開発者たちは、重要な次期アップグレード「Dencun」の実装に向けたテストを進めている。
このアップグレードは、合意形成層の「Deneb」と実行層の「Cancun」という2つのアップグレードを統合したもので、「Dencun(デンクン)」と呼ばれる。
Dencunは残り2つのテストネット、SepoliaとHoleskyで試験される予定で、それぞれのアップグレード時期は1月30日と2月7日頃に設定されている。一部報道によれば、メインネットでの実装は早ければ3月に行われる見込みだ。
全体として、Dencunはイーサリアムネットワークの拡張性と効率性を向上させ、長期的な成長と発展を支援すると期待されているが、重要事項の一つは「EIP-4844:プロト・ダンクシャーディング(Proto-Danksharding)」の導入である。
この新機能はレイヤー2(L2)からレイヤー1(L1)へのデータ転送コストを削減し、結果としてレイヤー2のユーザーにとっての取引手数料を大幅に引き下げることが期待されている。
L2とは
「レイヤー2」の略で、「2層目」のネットワークのこと。全ての取引をメインチェーンで処理すると負荷が大きくなり、処理速度の低下やネットワーク手数料の高騰につながる。取引の一部をL2で行うことで、メインチェーンの負荷軽減や処理速度の向上を期待できる。例、アービトラム、オプティミズム、Baseなど。
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しかし、この変化がイーサリアムの手数料の構造と供給量のインフレペースに影響を与える可能性があるため、投資家はこの動向を慎重に監視している状況だ。
この記事では、EIP-4844の影響を中心に、Dencunアップグレードの全体的な概要を詳しく解説する。
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EIP-4844の重要性
プロト・ダンクシャーディングは、ロールアップ技術を採用するL2ソリューションを利用して、イーサリアムブロックに低コストでデータを追加する新たな方法を導入する。
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プロト・ダンクシャーディングは、ブロックチェーンデータを複数の部分に分割し、それぞれを処理するシャーディング技術への移行の初期段階と位置づけられている。
プロト・ダンクシャーディングのアプローチでは、「データブロブ」と呼ばれる一時的なデータパケットをブロックに添付する。データブロブは、大量のデータを保持することができるが、イーサリアムの仮想マシンによって永続的には保存されないため、ブロックチェーンの永続的なストレージを圧迫することなく、効率的に大規模なデータ転送を実現する。
ダンクシャーディング:次のステップ
Dencun実装後に計画されている「ダンクシャーディング」のステージでは、ブロブが最大64個まで拡張される予定。また、このステージでは、さまざまなバリデータがブロックの作成と提案のタスクを分担するアップグレードも実施される。
イーサリアム財団によると、プロト・ダンクシャーディングとダンクシャーディングの両方が、ユーザーがレイヤー 2で行うトランザクションのコストを可能な限り低減することを目指している。これらの技術は、イーサリアムのトランザクション処理能力を1秒間に10万件以上に拡大することを目標としているという。
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EIP-4844の影響
米Coinbaseの23年末のレポートによると、プロト・ダンクシャーディングが実装されれば、オプティミズム(OP)やアービトラム(ARB)などのL2スケーリングソリューションの取引手数料を2-10倍低減すると試算されている。
取引手数料が安価になる期待感から、L2でのオンチェーン活動に増加傾向が見られた。主要なL2ネットワークにロックされた総価値(TVL)は、24年1月12日には230億ドル(当時約3.4兆円)超まで急増した。シェアはアービトラムの「Arbitrum One」が1位、オプティミズムの「OP Mainnet」が2位を占めた。
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現在、イーサリアムのレイヤー2(L2)ネットワーク上の手数料は、ソラナをはじめとする次世代のレイヤー1(L1)ブロックチェーンに比べて高い水準にある。
Chain Compareの集計によれば、執筆時点にソラナの平均取引手数料は、1取引あたり約0.00025ドル、アービトラムのETH送金コストは約0.10ドル、トークンの好感コストは約0.28ドルと推定される。
将来的に「データブロブ」の導入によって取引手数料が低減され、イーサリアムL2の手数料がソラナやニアプロトコルの水準に到達するかどうかは、イーサリアムの競争力と市場ポジションに関して重要な焦点となる。2024年の重要な注目点として注目する機関も少なくない。
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ETH供給量への影響
プロト・ダンクシャーディングは仕組み上、イーサリアムの供給量に影響を与える可能性があるとの指摘が上がった。
この機能はイーサリアムの供給に直接的に影響を与えるものではないが、イーサリアムをバーン(焼却)する数量が減少する可能性があるというのがその理由だ。
イーサリアムのブロックチェーンでは現在、取引手数料のうちベースフィー(基本手数料)がバーンされている。L2で取引手数料が下がれば基本手数料が低位で安定し、バーンの数量が減少して循環供給量が増加していくという見立てだ。
仮想通貨投資企業CoinSharesでイーサリアムのリサーチを行うLuke Nolan氏は、L2から支払われているガス代は「コールデータ(Calldata)」というデータの使用に使われている額が90%を占めると指摘。プロト・ダンクシャーディング実装後は、コールデータがブロブに置き換わる。
一方でNolan氏は、イーサリアムで急激にトークンインフレが進む心配はないとの見方を示した。L2の取引手数料が安価になることでイーサリアム自体の需要が増加するため、プロト・ダンクシャーディングが循環供給量に与える影響は限定的と述べている。
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また、米大手仮想通貨取引所コインベースも2024年に向けたレポートで、プロト・ダンクシャーディングによってブロックチェーン上の活動が増加したり、新しいユースケースが誕生したりするだろうと予測。L2がプロト・ダンクシャーディングに対応し、2024年上半期の間には取引手数料が実際に下がると予想している。
そして、L2でロールアップのブロック生成を管理する「シーケンサー」が支払う取引手数料は全体の10%以下であると指摘し、L2の活動が増えない限りバーンされるイーサリアムの割合が増加する可能性は低いとの見方を示した。
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他の実装内容
その他にもDencunで実装予定のEIPsは、以下のようなものが含まれる。
- EIP-1153 – 一時的なデータの保存に使用され、トランザクションごとにリセットされる新たなオペコードの導入により、ストレージコストを削減し、ネットワーク全体の効率性を向上させる。
- EIP-4788 – イーサリアムの実行レイヤーに「ビーコンチェーンブロックルート」という新たなデータを追加。これにより、ステーキング残高など、ビーコンチェーンブロックの状態に含まれる値の証明が可能になる。
- EIP-6780 – SELFDESTRUCTオペコード(スマートコントラクトを終了させる機能)の排除により、セキュリティと効率性を向上させる。
- EIP-5656 – イーサリアム仮想マシンに関連するマイナーなコード変更を導入する。
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