リキッドステーキング向けDeFi「LSDfi」の市場規模、前月比2倍に急拡大
LSDfiの発展
リキッドステーキングは、暗号資産(仮想通貨)のステーキング報酬を受け取りながら、スマートコントラクトを通じて1:1で発行されたデリバティブトークン(LSD)を受け取り、DeFiで運用できるメカニズムだ。
こうしたリキッドステーキングデリバティブ(LSDs)用に構築されたDeFiエコシステムは「LSDfi」と呼ばれ、過去数ヶ月間に総ロック量(TVL)が急速に拡大している。Binance Researchによると、プロトコルへの預入総額を表すTVLはLSDfi全体で4億ドルを突破(6月14日時点)しており、2023年5月中旬以降では2倍以上に拡大している。
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現時点でのLSDfiの市場は、大部分がイーサリアム(ETH)によって占められている。ステーキングされたETHの合計量が2280万ETH(約6兆円)を超える中、リキッドステーキングの総量も985万ETHにまで増えている。
ETHのリキッドステーキングプロバイダーの一つであるLidoFinanceでは、ユーザーがETHをステーキングするとリキッドステーキングデリバティブである「stETH」を受け取り、それをLSDfiで活用できる。
LSDfiエコシステム
LSDfiは多種多様な形で、LSD所有者に収益追求の機会を提供している。例えば、LSDsのバスケット型のインデックスLSD、LSDsを裏付け資産として発行されるCDPステーブルコイン、金利取引戦略、貸借マネーマーケットなどがある。
DeFiの中でも新興のLSDfiエコシステムは、上位5社がTVLの81%以上を担っている。マーケットリーダーのLybraは、2023年4月にメインネットで運用を開始したばかりだ。主要なプロダクトの特徴は以下の通りだ。
- Lybra Protocol(TVL:161.6):ETH/stETHを預け利息を得る、ステーブルコイン(eUSD)発行プラットフォーム
- Instadapp(54.5):ETH/stETHを預ける金庫を選択し、リスクと引き換えにDeFi戦略からリターンを得る
- Pendle(46.6):金利のみを切り分けトークン化して運用できる分散型取引所。金利にレバレッジをかけて運用できる
- Raft(45.9):stETHを預けて分散型のUSDステーブルコインRを生成する
- unshETH(27.6):あらゆるステーキングETHを一つの統合アセットであるunshETHにまとめ、アクセス性を向上させるプロトコル
- Asymetrix(12.7):stETHプールを使ったステーキング報酬の宝くじ
現在、LSDfiプロトコルの総TVLはDeFi全体のわずか3%未満にすぎないため、LSDfiの成長可能性は莫大だ。
リキッドステーキングの採用がさらに進むと、LSDfiの参加者も増えると予想される。特にETHのステーキング比率は現在16.1%と、トップ20のPoSチェーンの平均58.1%と比べて低い。
23年4月の「シャペラ」アップグレードにより、ETHステーキングに出金機能が実装された。これまで控えていた投資家も参加しやすくなったため、ETHのステーキング量はますます増加している。この傾向はLSDとLSDfiの市場規模のさらなる拡大に寄与すると見られている。
一方で、LSDfiにはリスクも存在する。一つは「スラッシングリスク」で、ステーキング要件を怠った場合に発生するペナルティである。また、スマートコントラクトリスクや規制環境などに応じてリキッドステーキングトークンの価格と原資産との連動が外れる(ディペッグ)恐れがある点にも注意が必要だ。
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