『BCGで変わる未来の生活』スクエニプロデューサー×STEPN創業者対談レポートとインタビュー|WebX

Web3ゲーム成功のポイント

国際カンファレンスWebXで7月25日、「ブロックチェーンゲームで変わる未来の生活」をテーマとするセッションが開催された。

フィットネスアプリ「STEPN」や新NFTマーケットプレイス「MOOAR」などの開発・運営を手掛ける「Find Satoshi Lab」ヤン(ヨーン)・ロン共同創業者と、Web3事業参入に本腰を入れ始めた国内大手ゲーム企業 スクウェア・エニックスのブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長の畑 圭輔氏が対談を行った。

Web3フィットネスアプリのパイオニア、STEPNは2022年春から日本市場で急成長を遂げ、「Move2Earn(M2E)」という歩行報酬システムを通じてWeb3の新たなトレンドを牽引。

しかし、予想を超えるユーザーの増加により、ゲーム用トークン「GST・GMT」とNFT(ノン・ファンジブル・トークン)の価値が大きく変動するなど、Web3ゲームが直面する問題にも直面している。

対談の中で、共同創設者ヤン・ロン氏は、Web3ゲームの成功と持続性について「製品のリリースタイミングが重要であり、一貫したビジョンと経済システムを示し、ゲームの内外で全てが調和する状態でリリースすることが鍵」と語った。

ロン氏はまた、マーケットの動向を見極める洞察力も重要と指摘。これを証明するかのようにSTEPNはマルチチェーン戦略を展開し、ソラナ、BNBチェーン、イーサリアムといったさまざまなプラットフォームへと領域を拡大している。

一方、スクウェア・エニックスの畑氏がプロデュースするWeb3ゲーム「資産性ミリオンアーサー」は、ユーザーがオリジナルのシールを作成し販売する新感覚のNFTゲームとして好評を博す。

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畑氏によれば、ゲームでは合計120万以上のNFTが発行され、ユーザーは作成したオリジナルシールをLINE NFTマーケットで販売し、得た現金をLINE PAYで決済利用することが可能。各体験を高い利便性を以て進行できることが、ユーザー獲得と利用促進に寄与しているという。

対談を通して、「STEPN」と「資産性ミリオンアーサー」の開発姿勢には相違点も見受けられた。「STEPN」は暗号資産市場を基にしたプロダクト設計に注力する傾向がある。例えば、Web3に詳しくない人を取り入れるアイデアについて聞かれたロン氏は、シードフレーズ不要でガス支払い代行機能が可能になるイーサリアムの新機能「アカウント抽象化」を活かして、ユーザーオンボーディングに活かす案を説明した。

一方、畑氏は魅力的なコンテンツ作りに重きを置き、デジタルシールの収集の楽しさとファンエンゲージメントに力を注いでいる。ツイッター上のリアルタイムコミュニケーションを通して、デジタルシールのコレクターが増えている実感を得ていると語った。

スクウェアといえば、代表作であるファイナルファンタジーが35周年を迎えるなど、日本を代表するヒットメーカー。この事実を受けて、STEPNのロン氏は、ファイナルファンタジーが16の異なるプロダクトを抱える点で「垂直スケーリングを遂げている」と称賛。「STEPN」のスケーリングは水平的なもので、学ぶべきことが多いと語った。

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STEPNヤン・ロン氏インタビュー

フィットネスアプリ「STEPN(ステップン)」の運営企業Find Satoshi Lab(FSL)の共同設立者であるヤン・ロン氏は、WebXに向けたCoinPosのインタビューに応じた。同社の新製品におけるGMTトークンの位置づけ、及びエコシステム全体の今後の方針について語った。

FSLは、過去に「ASICS × STEPN」のオリジナルNFTシューズを展開するなど、話題を集めるプロジェクトに積極的に取り組んできた。同社はSTEPNのガバナンストークン「GMT(Green Metaverse Token)」の利用を拡大するために、AlchemyやCrypto.comなどといった決済パートナーとの提携を実現。日々の決済手段としてGMTトークンの実用性が増している。

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さらに、マルチチェーンNFTマーケットプレイス「MOOAR」では、GMTトークンをステーキング(資金を一定期間ロックする)することで、「Raffle mint(抽選発行)」に定期的に参加することができる。この抽選発行により、ユーザーはFSLやそのパートナー企業からの限定版NFTを手に入れるチャンスを得る。また、GMTトークンはMOOAR Launchpadで新規プロジェクトのNFTセールに参加するための手段でもある。

GMTの可能性は既存の製品に留まらない。ロン氏は、年内リリース予定のMMO(大規模多人数同時参加型)ソーシャルゲーム「Gas Hero」において、決済通貨としてのGMT統合を検討中だと語る。実現すれば、GMTを使ってヒーローNFTを購入可能になる目論みだ。

日本進出の戦略

FSLは、ユーザーとWeb3(分散型ウェブ)の間にはまだ大きな溝が存在すると指摘している。そうした課題を解決する一策として、同社は「フィアット・オンランプ」を提供。ユーザーはApple Payを通じてSTEPNプラットフォームでスニーカーを購入することができる。これは、Web3へのアクセスに必要な分散型ウォレットの作成といった手間を省くことができる点で、大きな利点となる。

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また、FSLは日本市場における展開についても積極的に進めている。2022年8月にLINEの仮想通貨・ブロックチェーン事業を手がけるLINE Xenesis株式会社と覚書を締結した際には、「Move and Earn(動いて稼ぐ)」サービスの日本ローカライズを推進することを公表した。

現在、FSLとして、LINEブロックチェーンを自社のエコシステムの他の製品に組み込む方針ではあるが、詳細は近日発表予定とした。また、攻殻機動隊IPとのコラボレーションのような、日本での他のパートナーシップも模索しているという。

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7月29日にはSTEPNのミートアップを東京で開催予定。NTTドコモのメタバースサービス「MetaMe」のライブ配信を通して参加可能だ。

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Web3の課題とゲームの可能性

FSLが開発中のWeb3ソーシャルゲーム「Gas Hero」は、戦略性とソーシャルスキルを重視するゲームだ。核戦争後の世界を舞台に、地下で生き延びた人類が“ガス(ゲーム世界でクローン製造研究所に電力を供給する天然ガス)”の能力を借りて地上への進出を図るという設定で、プレイヤー(ガスヒーロー)は「富、名声、権力」の3つの要素をうまくバランスさせてゲームを進めていく。

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GMTトークンは、ゲーム内でのアップグレードやNFTの取引、他のプレイヤーとの戦いなど、さまざまな場面で活用される。ロン氏は、「以前のWeb3ゲームでは試みられなかった多くの新機能がこのゲームに搭載される」と強調している。

Gas Heroのアルファテスト版はまだ数カ月先のリリースが予定されている。詳しい情報は順次公表される予定だ。

FSLは、従来のゲームとブロックチェーンベースの体験の間に存在するギャップを埋め、新規ユーザーをWeb3ゲーム「Gas Hero」に引き付けることを目指している。インターネットを介してコンテンツを共有・発信できるWeb2オンラインゲーム市場のユーザー規模は10億人に上る。

Gas Heroはゲームの操作性やスケーラビリティに重きを置いて設計されている。「我々はWeb2プレーヤーがより手軽に遊べるようなインフラを構築している」とロン氏は語った。

同氏はまた、FSLがエコロジカル・フットプリントにも配慮していることを強調した。ブロックチェーンベースの炭素除去NFTマーケットプレイス「Nori」と提携し、二酸化炭素排出量の削減に真剣に取り組んでいる。

その一例として、STEPNは自動車の使用を制限することで健康的なライフスタイルを推奨している。さらに、2022年には100万ドル以上のカーボン・オフセット・クレジットを購入し、それをブロックチェーン上でバーン(永久破壊)してきた。このような環境配慮への取り組みを具体化するために、カーボン・オフセットNFTバッジを導入し、各人のカーボン・オフセットへの貢献度を記録しているという。

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登壇者プロフィール

畑 圭輔

2012年に株式会社 スクウェア・エニックス入社し、スマートフォン向けゲーム or コンテンツ開発におけるテクニカルディレクターとして従事。その後、各プラットフォーム関連の交渉、対外折衝などを担う業務部に異動、部門長を経験し、同時に同社初のNFTビジネスとなるNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」を昨年2021年にプロデュースし、現在に至る。

Yawn Rong

AI(人工知能)およびブロックチェーン技術開発スタジオ「Find Satoshi Lab」の共同創設者。革新的なWeb3フィットネスアプリである「STEPN」をはじめ、NFTマーケットプレイス「MOOAR」、最先端のマルチチェーン分散型取引所(DEX)の「DOOAR」などのコンテンツを生み出してきた。

企業紹介

スクウェア・エニックスは、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーシリーズなどのIP(知的財産権)を有する国内最大手のゲーム企業。

スクウェア・エニックスの松田洋祐社長は、2022年1月の年頭所感にて、「ブロックチェーンゲームなどの分散型ゲームもポートフォリオに取り込んでいきたい」と抱負を述べるなど、東証プライム上場の大手企業としては異例の早さでWeb3業界参入の意思表明を行なった。

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2023年現在では、新規IP(知的財産)による初のNFTアートコレクション「SYMBIOGENESIS」を開発中のほか、ブロックチェーン技術を用いたNFT事業支援を行うdoublejump.tokyo株式会社と共同開発したNFTデジタルシールを集める「資産性ミリオンアーサー」を今年4月にローンチし、大きな反響を呼んだことが記憶に新しい。

スマートフォンゲームでは、コロプラと共同開発した位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク」が大ヒットしており、2023年9月に4周年を迎える。

STEPNは、暗号資産(仮想通貨)GST/GMTのデュアルトークン経済圏を導入したWeb3版フィットネスアプリの代表格である。

日本人ユーザーも多く、歩いて稼ぐ「Move2Earn(M2E)」ブームを引き起こしたが、一方、爆発的にユーザー数を拡大して普及した影響で、独自トークンやデジタル資産の価値が乱高下するなど投機的な値動きとなり、BCG(ブロックチェーンゲーム)におけるエコシステムの持続性および経済設計に大きな教訓と課題を投げかけた。

「STEPN」は、国内大手スポーツブランド「アシックス(ASICS)」と2022年4月にコラボしたほか、同年8月にはスペインのプロサッカークラブアトレティコ・マドリードと提携。さらに、2023年5月には日本の人気アニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」とのコラボを発表して、NFT(非代替性トークン)のデジタルシューズの限定コレクションを販売するなど話題性には事欠かない。

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運営企業Find Satoshi Lab(FSL)は今年7月、STEPNと同じガバナンストークンの「GMT」を用いたWeb3ソーシャルゲーム「Gas Hero(ガスヒーロー)」の年内ローンチを発表している。

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そのような状況にある中、Web3ゲーム開発で大きな実績を残した「STEPN」創業者のYawn Rong氏と、ブロックチェーン(BCG)参入に本腰を入れる国内大手ゲーム企業スクウェア・エニックスのプロデューサー畑 圭輔氏の対談が国際カンファレンス「WebX」で初めて実現するとあって、グローバルのゲーム業界関係者からも高い関心を集めている。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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