Bitfinex証券が初のトークン化債券を発売 少額融資企業と連携
現実資産のトークン化
Bitfinex Securities(Bitfinex証券)は24日、同社初となるトークン化債券の上場を発表した。
新しいトークン化債券のカウントダウンが始まった。ALT2611はUSDT建ての36か月、10%利付債券で、マイクロファイナンスの世界的リーダー企業が発行している。
Bitfinex証券は、大手暗号資産(仮想通貨)取引所Bitfinexの傘下にあり、現実世界の資産(RWA)をトークン化した証券の上場及び取引に特化している。カザフスタンの金融ハブであるAstana International Financial Centre(AIFC)とエルサルバドルで登録され、認可を受けている。
新たなトークン化債券「ALT2611」は、マイクロファイナンス分野における著名企業「Mikro Kapital」が発行・管理する。2008年にルクセンブルグで設立されたMikro Kapitalは、インパクトファイナンス及びマイクロファイナンスに注力し、新興国の中小企業への投資を提供する証券化ファンドを運営している。
同社はマイクロローン、中小企業向けローン、リース、貿易金融、運転資本融資など、幅広い金融商品とサービスを提供。中小企業資本に資本へのアクセスを提供することで、経済発展を支援することを目的としている。
ALT2611は、米ドルと連動したステーブルコイン、テザー(USDT)建で、取引単位100 USDT、総額1,000万 USDT(約15億円相当)が提供される。満期は3年で、年率10%の金利が支払われるが、最低投資額は12万5,000 USDT(約1,870万円)となっている。発売は11月半ばの予定だが、米国国民と米国居住者、及び同商品が違法とみなされる国の住民には提供されない。
戦略的提携
Bitfinex証券とMikro Kapitalは今月初め、マイクロファイナンス分野に証券化トークンを導入するため、戦略的提携を発表した。
Bitfinex証券のPaolo Ardoino最高技術責任者(CTO)は、世界のマイクロファイナンス市場は2020年から27年にかけて2倍以上の拡大を見込んでいると指摘。新興市場におけるマイクロファイナンスの新たなソリューションとして、Mikro Kapitalの専門知識を取り入れたトークン化証券に、「計り知れない可能性」が想定されると述べた。
Mikro Kapitalは14カ国、30万人に融資を提供しており、その融資総額は13億5,000万ユーロ(約2,140億円)に相当。借り手の約4割は農村地域で農業やサービス業を営む女性起業家だという。
同社のVincenzo Trani社長は、Bitfinex証券との提携は、Mikro Kapitalがデジタル化とブロックチェーン技術に参入する画期的な節目であり、マイクロファイナンス分野に「新たな形の金融をもたらす」と述べた。
Ardoino CTOは、トークン化債券「ALT2611」のローンチについて、「流動性の高い市場と株式・債券市場を通じた資金調達の新時代の幕開け」と評している。
Bitfinex証券は、ブロックチェーン基盤の株式や債券などの「革新的な金融商品」の取引を、24時間365日提供する。同社の目標は、ブロックチェーン技術の力を活用することで、既存のグローバル金融の制約を取り除き、より多くの企業がトークン化された証券による資本調達を可能にするイノベーションをもたらすことだという。
加速するRWAトークン化の動き
ボストン・コンサルティング・グループによると、2030年までに現実資産のトークン化市場は数兆ドルの市場規模に達する可能性があると言われており、昨今では伝統的金融大手によるRWAのトークン化に取り組む動きが活発化している。
- 金融大手シティ:預金管理や貿易金融への導入を想定し、RWAをトークン化するサービスを開発
- スイス金融大手UBS: マネーマーケットファンドのトークン化実験開始
- 米金融大手JPモルガン:ブラックロックのマネー・マーケット・ファンド(MMF)をトークン化し、担保決済を開始
- スイスBacked Finance:Baseチェーン上でブラックロック提供の米短期国債ETF「IB01」をトークン化、年5.36%の利回りを提供
関連:現実資産(RWA)トークン化が暗号資産市場に及ぼすインパクトとは|WebXレポート
関連:金融大手シティ、RWAのトークン化ソリューションを開発 ブロックチェーン技術を活用
関連:RWAトークン化推進へ ブラックロックMMFの担保決済開始
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します