懸念強まる仮想通貨業界へのSEC執行範囲、民主党と共和党議員が激論交わす

SECの執行は妥当か

米国下院金融サービス委員会の資本市場小委員会は7日、米証券取引委員会(SEC)の執行活動に関する公聴会を開催し、専門家の意見を交えて同委員会の執行機能の改善方法について話し合った。

「SECの執行:抑止力と適正手続きのバランス」と題した公聴会では、暗号資産(仮想通貨)のテーマを中心に、SECの執行措置のあり方について議論が展開されたが、共和党と民主党の議員で大きく意見が食い違う結果となった。

共和党のアン・ワーグナー委員長は開会の挨拶で、「我が国の資本市場は、不正行為を検知し、処罰し、防止するルールを備えた執行部門の恩恵を受けている」とSECを評価した一方で、SECの最近の傾向については次のように懸念を示した。

SEC執行部門の現在の傾向である“執行による規制”は、行政手続法の通知およびコメント要件の対象とならない政策変更を実施しており、市場参加者に害を与えかねないものだ。

ワーグナー議員は、米仮想通貨企業Debt Boxに対する訴訟で、SECの弁護士二人が「重大な職権乱用」で制裁を受け、辞任を余儀なくされたことに言及。SECに対する国民の信頼が低下していると批判した。

この件について、同委員会民主党のブラッド・シャーマン議員は即座に反論し、SECは職員の不祥事に適切に対応したと主張。問題の職員が解雇されたことで、他のSEC弁護士による同様な行動を取らないよう保証する前例となるだろうと述べた。

関連:SEC弁護士2名が辞任、仮想通貨関連訴訟で「重大な権力乱用」と非難受け 

法の適用

仮想通貨懐疑派のマキシン・ウォーターズ氏(民主党)は、党派的な立場を取り、民主党は常にコンプライアンス、投資家保護、市場の健全性を求めていると主張。「規制を望んでいると公言する仮想通貨業界は、裁判所による法適用に同意しているにもかかわらず、規制に異を唱えSECを訴えている。」と批判した。

シャーマン氏も「仮想通貨業界は、実際には(悪意や危険が潜む場所を比喩する)“蛇の園”であるにもかかわらず、(不正を犯したFTX創業者の)サム・バンクマン・フリードは、仮想通貨の楽園の中の一匹の蛇であると言うだろう」と皮肉った。

専門家として証言した元SEC執行部職員のジョン・リード・スターク氏は、「仮想通貨業界は、SECの“執行による規制”と呼ぶが、私は単に執行と呼んでいる」というゲンスラー委員長の発言を引用し、業界は適用される法律に適応する必要があると主張した。

結果は気に入らないかもしれないが、それは適正な手続きと公正な通知の欠如に相当するものではなく、SECの不正な執行による規制を意味するものではない。

明確な規制は

一方、SECが明確な規制を示しているかどうかに疑問を呈した民主党議員もいる。

ウィリー・ニッケル議員は、株式取引アプリを運営する米ロビンフッド・マーケッツが、6年以上も仮想通貨事業を運営していながら、いまさらながら執行措置を取る計画を正式に通知する「ウェルズ通知(Wells Notice)」を受け取った件について、「まさに今、SECが“執行による規制”を行っていることを目の当たりにしている。」と指摘。

「残念ながら、現在米国に拠点を置く仮想通貨企業にとって、それがビジネスを運営する足枷(コスト)になってしまっているようだ」と述べた。

ニッケル氏は、「ロビンフッドにとって、米国脱出以外に何か良い解決法はないのか」と証人の一人である元SEC副法務顧問のアンドリュー・ヴォルマー氏に質問した。

ヴォルマー氏は、SECがこの領域の規制に関する法的権限の管轄について、「非常に曖昧な理論に基づいて、先取りしてしまった」ことが難しい状況を生んでしまっていると述べた。

その上で最も有効な解決策は、「仮想通貨業界に関する適切な権限について、米議会が正しいと考える政策をきちんと定めることだ」と指摘した。そして、それがロビンフッドを助けることにもなるだろうと付け加えた。

SECは現在、仮想通貨に関して明確な規制を示していると考えるかとニッケル氏がさらに質問すると、ヴォルマー氏は「全くそうは思わない」と述べた。

古くからある慣習のハウイーテストによって、証券と分類できる仮想通貨もあるが、証券に分別しきれない仮想通貨も多く存在すると同氏。国として、どのように仮想通貨を扱いたいのか、その場合、どのように規制したいのかについて深く考察することが必要だと主張した。

今、この“新しい資産クラス”全般に対して、証券の規制システムを一方的に押し付けようとしているが、SECがこの領域全ての管轄を主張する必要は全くないと強調。「SECの執行プロセスは行政上の裁量ではなく、あくまで法の支配に基づくべき」としている。

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