イーサリアムETFが米国初承認、PMIインフレ懸念で仮想通貨相場は乱高下

マクロ経済と金融市場

23日の米NY株式市場は、ダウ平均株価は前日比605.7ドル(1.5%)安、ナスダック指数は65.5ポイント(0.39%)安で取引を終えた。

米PMI(購買担当者指数)の速報値が市場予想を上回り22年4月以来の高水準を記録したことでインフレ懸念が再燃。これに伴い、FRB(米連邦準備制度)の利下げ期待が後退した。

好決算の発表および、当面のAI(人工知能)需要継続を示唆した半導体関連銘柄エヌビディアの株価が前日比9.3%高となり、1000ドルの大台に乗った一方、PMIを受けた株価指数急落に伴い、米国株の暗号資産(仮想通貨)関連銘柄では、コインベースが前日比5.4%安の218.8ドル、マイクロストラテジーが6.2%安の1544ドルと軒並み下落した。

CoinPostアプリ(ヒートマップ機能)

米国株に連れ安する形で東京株式市場も軟調だ。日経平均株価(前引け)は、前日比454円(1.1%)安の3万8649円と冴えない。

中小型株や新興株を中心に構成されるグロース250指数はさらに弱い推移を辿っており、年初来安値を更新した。金利上昇や経済の不確実性、昨今の大型株選好が逆風となり、20年3月のコロナ・ショック時に迫る底割れ水準に瀕している。

仮想通貨市況

暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン(BTC)は前日比2.2%安の1BTC=67,933ドルに。

BTC/USD日足

暗号資産(仮想通貨)時価総額2位のイーサリアム(ETH)は乱高下しつつ、前日比1.4%高となった。

ETH/USD日足

ETF承認前にイーサリアムが一時急落した要因について、一部のアナリストはオンチェーンデータを根拠に「最大抽出価値(MEV)取引会社であるシンボリック・キャピタル・パートナーズによる大量の売り注文が原因である可能性がある」と主張した。

MEV取引は、ブロックチェーンネットワーク上の取引を最適化して利益を最大化する戦略であり、何らかの事情でSymbolic Capital Partnersが大量のETHを放出した疑いがある。

イーサリアムETF承認へ

イーサリアム現物ETF(上場投資信託)が米国で初めて米SEC(証券取引委員会)に承認された。

関連:イーサリアム現物ETF、米SECが承認 ブラックロックなど8銘柄

VanEckのデジタル資産リサーチ部門の責任者を務めるMatthew Sigel氏は、次のように述べた。

SECのイーサリアムETF承認は歴史的な瞬間だ。

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)への投資加速を期待させるとともに、(暗黙の了解での)法的勝利を示唆しており、イーサリアムが証券ではなくコモディティ(商品)であることを明確に示す証拠であると考えている。

イーサリアム(ETH)は22年9月の大型アップグレード「The Merge(ザ・マージ)」を経て、合意形成アルゴリズムをPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に変更した。

PoS系通貨(PoSネットワーク)では、暗号資産を大量保有するエンティティがバリデーターの役割を担う性質やステーキング報酬について、米証券法に違反するとの見方があり、SECは未登録証券の提供および販売に該当するとして、複数の暗号資産企業を提訴してきた経緯がある。

一方で、セイファート氏ら一部専門家は「SECはイーサリアム自体を証券と呼ぶつもりはないが、ステークされたETHは証券かもしれないと指摘する可能性も考えられる」などと慎重なスタンスを崩していない。SECと係争状態にある暗号資産(仮想通貨)関連企業は多岐に渡り、裁判への影響が注視される。

イーサリアム(ETH)のボラティリティ(価格変動性)が急上昇する中、デリバティブ市場も旺盛だ。

アナリストのAxel氏は、Binance、OKX、Bybitなどの先物市場におけるイーサリアムの未決済建玉(OI)が、過去23日間で6億ドル増加したことを指摘した。

暗号資産(仮想通貨)市場は4月上旬以降一時調整局面にあったが、イーサリアム現物ETF(上場投資信託)承認思惑が強まるにつれ、デリバティブ市場のセンチメントが強気に傾いていることを示している。

実際に取り扱いが開催された場合、ビットコインETFの米国初承認時と同じように、機関投資家の資金が大規模に流入することが見込まれる。

スタンダード・チャータード銀行のデジタル資産調査責任者ジェフ・ケンドリック氏は、最初の12か月間で150億~450億ドルの流入を予測している。

ただし、SEC(米国証券取引委員会)は、イーサリアム現物ETF(上場投資信託)に関連する19b-4フォームを承認したものの、株式上場の新規公開株式(IPO)時に必要となるS-1申請が追って承認されるまでは、取引を開始することが出来ない。

詳細な情報を審査するS-1の承認プロセスのタイムラインはケースバイケースであり、ブルームバーグETFアナリストのジェームズ・セイファート氏によれば、最長で5ヶ月を要する場合もあるという。

これに先駆け、最大手資産運用会社ブラックロックのイーサリアムETFは、ティッカーシンボル「$ETHA」で米国証券保管振替機構(DTCC)への登録が確認された。SECの提出書類には、VanEck、Fidelity、Franklin、Grayscale、Bitwise、ARK Invest & 21Shares、Invesco & Galaxy、BlackRockのiShares Ethereum Trustによる8つのイーサリアムETFが記載されている。

関連:ビットコインの買い方|投資メリットやリスク、おすすめ取引所は?

関連:イーサリアムの買い方|初心者が知るべき投資メリット、リスク、おすすめ取引所選び

関連:ステーキングや積み立てサービスに優位性、仮想通貨取引所「SBI VCトレード」のメリットを解説

過去に掲載したマーケットレポート一覧はこちら

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

コメントしてBTCを貰おう 新着ニュースをチェック

速報

新着記事

人気記事ランキング