ソラナ『Superteam Japan』大木悠氏インタビュー、設立の経緯やコミュニティGDPを高めるための戦略とは

Superteam Japan大木氏にインタビュー

暗号資産(仮想通貨)ソラナ(SOL)の日本コミュニティ「Superteam Japan」が新たに立ち上がりました。この組織は、Solana Foundationからの助成金を受け、日本におけるソラナのエコシステムの成長を促進することを目的としています。

Superteam Japanは、急成長を続けるソラナ上のプロダクトと日本のユーザーをつなぐ架け橋となること、また日本企業がソラナ上でのプロダクト開発を進めるための重要な役割を果たすことが期待されています。

インタビュー内容
  1. Superteam Japanとは(設立の経緯とソラナ財団との関係)
  2. ソラナチェーンとエコシステムの強み
  3. ソラナクライアント「Fire Dancer」への期待
  4. 日本のコミュニティGDPを高める戦略
  5. 日本企業のSolanaプロダクト開発サポートとユースケース

ジョインしたきっかけ

大木 悠

早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、コインテレグラフ・ジャパンの編集長を務めた。

2022年12月に取引所クラーケンの日本法人の広報責任者に就任。dYdX FoundationのHead of Asiaを経て、2024年5月より現職。

大木氏がSuperteam Japanにジョインしたきっかけは、日本のSolanaコミュニティのコアメンバーの紹介でした。前職であるdYdX FoundationのASIA BD Leadとしての経験は非常に有意義でしたが、より迅速で柔軟な意思決定を求める気持ちが高まっていたといいます。

dYdXやSolanaに限らず、多くのFoundationは中央集権的な組織構造を持ち、特に市場進出戦略(GTM)の分野では迅速な対応が求められるため、そのような体制では限界を感じることがありました。ローカルのことはローカルの人が一番よく理解しているため、現地のニーズに応じた迅速な意思決定が重要だと大木氏は考えています。

Superteamは、この課題を解決するための革新的なコンセプトを提供しており、大木氏は新しいGTMの方法を学べることにワクワクしていると述べています。SolanaのSuperteamは、分散型のアプローチを先進的に実践しており、これが大木氏を魅了した大きな理由となりました。

CoinPostでは今回、Superteam Japanの代表に就任した大木 悠氏にインタビューを行い、チーム設立の経緯や市場期待の高まる「Fire Dancer」クライアントのフルリリースを含む、Solanaネットワーク全体の今後の展望についてお話を伺いました。

1. Superteam Japanと設立の経緯は

Superteamは、各国の代表者がSolana Foundationからグラント(助成金)を受けて立ち上げるコミュニティであり、自国のSolanaエコシステムの成長を促進することを目的に活動します。現在、イギリス、ドイツ、インド、ベトナム、ブラジルなど、10カ国以上で活動しており、現在も拡大しています。

Superteam Japanは、Japan Leadである大木悠の合同会社がSolana Foundationからグラントを受けて立ち上がりました。

各国の文化に熟知し、最も効果的な営業活動や広報活動、マーケティングなどを実施できるのは、その国の出身者です。Superteamは、従来はFoundationが中央集権的に管理していたGTM(Go To Market)施策を、それぞれの国の代表者とチームの裁量に任せる仕組みと言えます。

2. ソラナチェーンおよびエコシステムの強みは

Solanaのエコシステムは、Orca、Raydium、Jupiter(分散型取引所)、Tensor、Magic Eden(NFT市場)など、多くのプロジェクトが活躍してきました。またイーサリアムなど他のチェーンから移行したプロジェクトもあり、例えばRender、HeliumなどのDePIN(分散型物理ネットワーク)関連のプロジェクトのSolanaへの移行はインパクトがありました。これは今後も成長を続けるSolanaへの期待も含めチェーン及びエコシステム全体に対する評価の表れと考えて良いでしょう。

DePIN(ディーピン)とは

DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Networks)は、トークンエコノミーを活用してP2P(ピアツーピア)インフラの構築と運営を効率化する分野。Renderは分散型GPUの余剰リソースを集約し、3Dグラフィックス作成やAI機会学習に活用。Heliumは分散型無線通信ネットワークで、5G機能にも対応。ネットワークの拡大に伴い、報酬トークンの高速分配などを求めてSolanaに移行した。

3. 「Fire Dancer」への期待について

FireDancerは、高速処理と低コストであることは周知の事実として認識されているかと思います。新しいソラナクライアントのFireDancerへの期待はとても高く、従来のマシンスペックでより効率・高速化することが可能になります。デモでは1秒あたり100万トランザクション以上を処理することが可能となり、現在Testnetなどで試験運用中です。

クライアントとは

ノード(コンピューター)がブロックチェーンネットワークとコミュニケートを図る際のサポートソフトウェア。クライアントを介して、ノードはトランザクションのブロードキャストや検証、スマートコントラクトの実行を行い、ネットワーク全体で合意形成を試みる。

FireDancerは、Jump Cryptoによって開発を主に行われてきました。Solana Labsのクライアント開発部隊が分離して発足した組織であるAnzaでは、オリジナルのSolanaLabsクライアントからフォークされたAgaveを開発しており、現在SolanaLabsのクライアントを含め、5つのクライアントが開発されています。クライアントが増えることにより、ソフトウェアの競争優位性によって、Solanaネットワーク自体への様々な面での性能向上が見込まれます。

4. 日本のコミュニティGDPを高めるための戦略は

Superteamの一番大きな目的の一つが「コミュニティGDP」を増やすことです。コミュニティGDPを増やす手段として、EarnとGrantがあります。

Earnは、スポンサーが指定する仕事をすることで報酬を獲得する仕組みで、Grantは申請者が自ら仕事を提案する仕組みです。EarnとGrantの双方を推進していきます。

出典:earn.superteam

Grantに関しては優秀なエンジニアやリサーチャーを発掘してGrant申請を勧めることが重要になります。Earnに関しては、Superteam JapanをSolanaの海外プロジェクトにとっての「日本市場へのゲートウェイ」にすることが大事だと思っています。

日本市場に進出したいSolanaの有名な海外プロジェクトは多いです。彼らが一番苦戦するのは、やはり言語の壁です。

Superteam Japanとして海外プロジェクトの窓口となり、メンバーが翻訳やコンテンツ作成、イベント開催、プロダクトへのフィードバックといった仕事を行うことで報酬を獲得します。それが、コミュニティGDPとしても計測されるのです。

出典:earn.superteam

さらに、Superteam Japanのメンバーが、海外プロジェクトのアンバサダーやフルタイムになることも可能であり、夢があると思います。Japan Leadとして、メンバーと協力して、海外プロジェクトから大型案件をとって来たいと考えています。

5. 日本企業の開発サポートについて、どのような業種やユースケースを想定しているか

Solana上で開発されているプロダクトの種類は多く、DeFi /DEX、ゲーム、DePIN、NFT、ペイメント、ミームコインなど幅広いです。Superteam Japanとしては、今後加わる予定のBiz & DevRel担当者と日本市場のリサーチをして、注力すべき業種とユースケースを決める予定です。

我々は、技術文脈だけでなくビジネス観点も含めて、サポートしていく必要があると考えています。そこで、ブロックチェーン・web3に興味がある日本企業とビジネス観点で会話し、HOW(実現手段)に落とす過程でSolanaを技術観点からサポートをしていく予定です。

もし、困っている点が技術文脈であれば、ピンポイントに開発側のサポートをしていきます。 試行錯誤しながら推進することになるため、長丁場になると想定しています。

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