イーサリアムの供給量増加、PoS移行後最長のインフレ期間

供給量の増加続く

暗号資産(仮想通貨)イーサリアムの流通している供給量が4月中旬以降連続して増加しており、PoSプロトコル移行後、最長のインフレ期間となった。

データサイトultrasound.moneyによると、4月14日以降、供給量は73日間連続で増え続け、11万2,000ETH(607億円)以上が総供給量に追加された。インフレ傾向が続くと、長期保有者が望むデフレ効果(希少性の向上)が抑制され、価格にも影響が生じる恐れがある。

2022年9月のマージ(Merge)実装以降、イーサリアムが長期間のインフレ状態となったのは、ハードフォーク直後の40日間が最長。その他、昨年後半に30日間のインフレ期を経験した。今回の期間はその両方を上回っている。

マージ(The Merge)とは

イーサリアム・ブロックチェーンのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「PoS」へ移行する大型アップグレード。2022年9月に実装された。

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Dencunの影響

今回のイーサリアムのインフレを引き起こした要因として指摘されているのが、今年3月に完了した大型アップグレード「Dencun」の影響だ。「Dencun」では、9つのイーサリアム改善提案 (EIP) が導入されたが、中でも大きな影響を及ぼしたのがEIP-4844だ。

EIP-4844は「プロト・ダンクシャーディング(Proto-Danksharding)」を実装するもので、データの一時記憶領域「BLOB(ブロブ)」を利用して、トランザクションデータの効率的な処理を可能にする。

ブロブの導入により、トランザクションデータを別々に一時保存することが可能なため、イーサリアムのレイヤー2(L2)ネットワーク上のブロックデータへの支払いが削減され、ネットワーク手数料(ガス代)が大幅に引き下げられる結果となった。

イーサリアムのPoSアルゴリズムには、トランザクション手数料の一部をバーン(焼却)し、総供給量を削減する仕組みが備わっている。しかし、手数料の低下に伴い、L2のトランザクション数は急増し、新たなイーサリアムの発行が増大する一方で、メインネットで基本手数料としてバーンされるETHの総量は大幅に減少してしまった。

ultrasound.moneyのデータによると、過去30日間で75,961ETHが発行されたのに対し、バーンされたイーサリアムは30,389ETH(164億円)に留まっている。この状況がここ数ヶ月の供給量におけるインフレ傾向につながっているようだ。

レイヤー2(L2)とは

「2層目」のブロックチェーンのこと。全ての取引履歴をメインチェーンに書き込むと負荷が大きくなり、処理速度の低下やネットワーク手数料の高騰につながる。そこで、取引履歴の一部をオフチェーンやサイドチェーンに記載するようにすることでメインチェーンへの負荷軽減や処理速度向上を期待することができる。

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マージ以降の総供給量

一方、マージ以降のより長い期間で見ると、イーサリアムの総供給量は大幅に減少した。

2022年9月以降の1年285日で、136万8,974ETHが発行されたのに対し、171万1,743ETHがバーンされ、イーサリアムの総供給量は34万2,769ETH減少した。その結果、現在、年間ー0.16%のデフレとなっている。

ultrasound.moneyでは、PoSに移行せず、PoWが継続していた場合を仮定した供給量のデータを発表しているが、その場合、849万8,489ETHが発行され、総供給量は678万6,743増加し、年間3.163%のインフレとなっていたことが示された。

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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