韓国仮想通貨取引所Bithumbのハッキングに「換金の形跡」|資金経路などを解説
- 仮想通貨取引所Bithumbのハッキング被害を考察
- 3月30日に発覚した韓国の大手取引所「Bithumb」のハッキング被害について、現職エンジニアでCoinPost所属ライターの坪 和樹が独自分析を行い、その詳細を解説。
Bithumb、3回目のセキュリティインシデント発生
韓国の大手取引所である「Bithumb」から資金が流出しているという記事が相次いで報じられた。(CoinPostを含め)
2017年、2018年と過去2回もインシデントを起こしている中、実に3度目のインシデントだ。ネット上で進められる資金の追跡
一番最初にインシデントの発生を報じた Primitive社の Dovey Wan氏が、転送された資産の流れを追っている。
下図が示すように、かなりの量が取引所に流れており、すでに換金が進められてしまっているようだ。 BinanceやHitBTCといった大手の取引所には少額しか流れておらず、KYC などが必須でないChangeNowなどが受け皿となっている。
なお、EOSの資産を転送する上では必要のないメモ(1004493197)がすべてのトランザクションに付与されていることや、資産が何回にもわたって分割されて転送されている点は、追跡を行う専門家も首を捻っているだろう。
資産を分割したのは、Whale Alertなど大口送金トラッキングシステムによる、大規模資産の転送検知システムをかいくぐろうとした可能性がある。
しかし、すべてに同じメモを付与している点については説明がつけられない。 プライベートキーが漏れたわけではなく、内部側からシステムを悪用したなどの可能性も考えられるが、詳細についてはBithumbの報告を待つしかなさそうだ。
フーダニット
推理小説に「フーダニット」という概念がある。誰が犯人かを当てるというものだ。
時間は少し遡る。2019年3月19日、Bithumb は相場の長期的な悪化に伴い大規模なレイオフ(解雇)を発表していた。
このレイオフでは310人のうち、約50%の人員を減らすという計画が発表されていたため、それらのスタッフによるものではないかとの見方もでてきている。
すでに、公式からも今回のインシデントにおいて、現時点で外部より侵入された痕跡は見つかっていないとされており、内部犯の犯行である可能性が高いことが公開されている。Bithumbの発表は以下の通りだ。
現在、警察側は事件の調査に取り掛かっているが、Bithumb側は、「外部より侵入された痕跡は現状では見つからず、内部犯行の可能性を視野に入れている」としている。
そして、Bithumbの公式ブログにより、内部犯という報告がなされた。
内部調査を行なった結果、今回の事件はインサイダーが犯した犯行と考えている。
よって、我々は全力で警察当局のサイバー対策エージェンシーに協力をしている。
なお、持ち出された資産は会社の保有分であり、ユーザーの資産はコールドウォレットに保管されていることから、影響はないとしている。
自由に動かせるホットウォレットに300万EOSもの資産を入れていた点は、運用の観点から疑問が残るものの、すでに容疑者も絞り込んでいるだろう。
今回のインシデントによって相場も一時崩れるなどの影響は見られていた。一刻も早い原因究明、取引所の監査など仕組みの改善は望まれるだろう。
坪 和樹
Twitter:https://twitter.com/TSB_KZK
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プロフィール:AWSで働くエンジニア、アイルランド在住。MtGoxやThe DAO では被害を受けたが、ブロックチェーンのセキュリティに興味を持ち続けている。セキュリティカンファレンスでの講演、OWASP Japanの運営協力やMini Hardeningといったイベント立ち上げなど、コミュニティ活動も実績あり。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します