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人工知能時代の到来はビットコインの追い風となるか、鍵は「金利政策」=NYDIGレポート

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • BTCへの影響は技術面より「政府の緩和政策」が鍵
  • 歴史の教訓は「技術による淘汰」ではなく「統合」

AI終末論と歴史の教訓

米大手暗号資産(仮想通貨)投資企業NYDIGは2月27日、分析レポート「AI時代のビットコイン」を公開した。AIの進化が経済崩壊を招くとする、シトリニ・リサーチの話題の記事「2028年世界知能危機」に歴史的観点から反論しつつ、AIがビットコインに与えるマクロ経済的影響を分析した。

シトリニ・リサーチは、「未来からのマクロメモ」として書かれた記事で、AIが産業革命以来、経済成長を支えてきた「知的労働」を大量に置き換えると指摘。雇用や賃金、債務返済能力、資産価格を連鎖的に崩壊させ、「総需要の壊滅的減少」を引き起こすという悲観的なシナリオを描いている。

しかし、レポートの著者グレッグ・シポラロ氏は、汎用技術と社会の変遷に関する前例を提示し、こうした悲観論に対し冷静に反論している。

我々は以前にも、このような状況を経験してきた。蒸気機関は人や家畜の労働力を機械的動力に置き換え、生産を集中化し、産業規模を拡大した。電化はさらに進歩し、単に工場に電力を供給するだけでなく、経済そのものを再構築した。

これらの汎用技術は、当初こそ生産性の停滞を招いたものの、制度や資本、ワークフローが適応することで生産性は大きく向上した。また、機械化や電化は経済構造を再編したが、総需要が崩壊することはなく、タスクや雇用の形が変化しながらも、最終的にはGDPと経済成長を押し上げたとシポラロ氏は説明した。

同氏は、AIは蒸気機関より電化に近い存在だと指摘。仕事の効率化を促進する単なるツールではなく、経済や組織構造の変革を必要とし、社会インフラを再構築する存在だと見ている。

歴史的に見ると、テクノロジーはタスクを置き換えるものであって、労働需要全体を置き換えるものではないと主張。新しいワークフロー設計・スキル習得・補完投資が必要なため、移行期は不安定だが、汎用技術は生産能力を消滅させるのではなく、拡大することを歴史が示唆しているとシポラロ氏はまとめた。

関連:AIによる2028年経済崩壊シナリオに米金融大手が反論、世界で議論白熱

ビットコインへの影響

シポラロ氏は、AIが電化に匹敵する汎用技術であるならば、ビットコインへの波及経路は技術的な側面ではなく、マクロ経済的なチャネルにあると指摘する。

同氏の分析によれば、AI時代のビットコインはマクロ経済の「下流」に位置する。AIが雇用や実質金利、グローバル流動性を変容させる中で、鍵を握るのはAIそのものの進化ではなく、それに対する政府の「政策」だと強調。以下の三つの可能性を示した。

  • 強気シナリオ:AI主導の成長が流動性拡大+実質金利抑制を伴う場合、ビットコインに有利
  • 弱気シナリオ:成長が実質利回りを押し上げ、政策引き締めを招き、金融緩和の必要性が低下する場合、ビットコインに逆風
  • 中立〜強気寄り:AIが労働市場の混乱やボラティリティを生み、財政拡大+緩和的な金融政策を促す場合、流動性供給が増え、ビットコインを後押しする

AIエージェント決済

シポラロ氏は、シトリニ・リサーチが既存ネットワーク崩壊の一例として提示した、AIエージェントによる自律決済についても言及した。

米コインべースが発表した「Agentic Wallets」により、AIシステムがデジタルウォレットを持ち、x402標準経由で人間介入なしに取引が可能になった。これはビットコインの初期ビジョンである「マシン間決済」が、ステーブルコインとAIでようやく現実味を帯びてきたことを意味する。

AIエージェントがデジタルサービス間でリアルタイム決済を自動化すれば、新たに魅力的なユースケースが生まれる。しかし、シトリニ・リサーチが主張するように、既存の決済ネットワーク(特にクレジットカード)の収益の即時崩壊には繋がらないと同氏は強調する。

決済ネットワーク市場は加盟店と消費者という二面市場の性質を持つ。加盟店にとって、2~3%の手数料削減につながるステーブルコイン利用は魅力的だが、消費者側からは異なる風景が見えている。

クレジットカード利用には、ポイントなどの特典やリポ払いオプションが提供されるなど消費者にとってはメリットが大きい。一方で、ステーブルコイン決済では、特典もなく事前に資金の預け入れが必要となる。

消費者に同等のインセンティブやクレジット機能がなければ、AIエージェント決済に移行する動機は乏しくなると同氏は指摘。クレジットカードなど既存の決済手段を短期間で置き換えることは、シトリニ・リサーチが想定しているほど容易ではないと分析している。

人類は常に適応してきた

シポラロ氏は、最終考察として「人類文明の軌跡は、適応によって定義される」と強調。産業革命や戦争、金融危機、パンデミックなど、当時は存亡の危機に見えた混乱も、最終的には崩壊ではなく克服へと向かってきたと指摘する。

制度は改革され、企業は再編され、労働市場は再教育を通じて変化に対応してきた。

「人間の本能とは、競争し、適応し、そして打ち勝つことであり、自らの時代遅れを認めて屈することではない」と強調。AIは大きな課題を突きつけるが、この歴史的パターンを変えることは難しいだろうと述べ、次のように総括した。

歴史が示唆しているのは、技術革新による混乱に伴う痛みがゼロだということではない。歴史的に見て新しい技術への社会の均衡的な反応は「淘汰」ではなく「統合」だった。AIに対する社会の対応も、おそらく同じパターンをたどるだろう。

関連:レイ・ダリオ、「ビットコインは金の代わりにならない」と改めて主張 AIバブル・米財政危機も警告

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