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ゲームで守る社会インフラ 電力・自治体DX最前線|WebX2026

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WebX 2026 | セッションレポート

ゲームで守る社会インフラ 電力・自治体DX最前線

大石峰士 × 大泉潤 × 吉田修一郎 × 鬼頭和希

人口減少と少子高齢化が進む日本では、電力インフラや自治体業務を担う人材の確保が深刻な課題となっている。WebX2026のLimitlessステージでは、東京電力パワーグリッドの大石峰士副社長、函館市長の大泉潤氏、経済産業省の吉田修一郎室長、ゲームアプリ「ピクトレ」を手がけるGrowth Ring GridのCEO鬼頭和希氏が登壇。Web3とエンタメの力でインフラの担い手不足を解決する試みと、そのグローバル展開の可能性を論じた。

大石峰士

大石峰士

東京電力パワーグリッド株式会社
代表取締役副社長

1994年東京電力株式会社に入社。変電部門をはじめ事業戦略・経営企画・海外事業を担当。東京電力パワーグリッドでは渋川支社長、海外事業推進室長などを歴任し、2026年4月に取締役副社長執行役員に就任。CIO・サイバーセキュリティ担当・海外担当として送配電事業の高度化と海外展開を推進する。

大泉潤

大泉潤

函館市長

早稲田大学法学部卒業後、函館市役所に入庁。総務部秘書課長、保健福祉部次長、観光部長、保健福祉部長などを歴任し、2022年に退職。2023年4月に函館市長に就任。人口減少が加速する地域課題の解決と持続可能なまちづくりに取り組んでいる。

吉田修一郎

吉田修一郎

経済産業省
イノベーション・環境局 イノベーション政策課 フロンティア推進室長

早稲田大学政治経済学部卒業後、1994年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に入構。通商産業省資源エネルギー庁や研究開発PJマネジメント業務等を経て、2024年7月に現職(2度目の出向)。金融以外の産業分野におけるWeb3活用の普及促進や耐量子暗号への対応を担う。

鬼頭和希

鬼頭和希

Growth Ring Grid Pte.Ltd.
共同代表

2009年TEPCO PG入社。東南アジアでの海外コンサルティング・M&A業務、国際協力機構(JICA)でのODA案件開発を経て、2025年4月にGrowth Ring Grid Pte.Ltd.を設立。日本のインフラをWeb3とエンタメで「民主化」し、社会課題を解決することを目指す。

山田耕三

山田耕三

モデレーター
株式会社 Digital Entertainment Asset 代表取締役社長

東京大学法学部卒業後、テレビ東京にて音楽・バラエティを中心に番組制作を担当。2018年に独立し、シンガポールでDEAを創業。大企業向けゲーミフィケーション事業開発を主導し、DePINや自社トークンエコノミクスの設計を手がけるWeb3×エンタメ分野の専門家。


深刻化するインフラの担い手不足

日本全国で電力インフラや自治体業務の「担い手」が急速に失われている。登壇者はそれぞれの立場から、課題の深刻さを率直に語った。
大石峰士
弊社が管理する設備は、電柱だけで600万本、電線の総延長で約40万キロメートルにのぼります。これらを巡視・点検・修繕していくわけですが、日本全体として工事の担い手が減っていく中で、自前主義だけでやっていくことは、先々非常に難しいと感じています。
大泉潤
函館市は人口が現在23万人で、毎年4,000人ずつ減っています。それに伴い職員数も10年前と比べて約8割に減少しています。数字だけの問題ではなく、本当に技術を持った人たちと一緒に仕事をすることができなくなる時代が、もう目の前に来ているという危機感があります。
吉田修一郎
人口減少は日本全国どこでも起きていて、今後も続いていく。これは1事業者や1自治体だけで何とかできる問題ではないと、国の立場でもひしひしと感じています。だからこそ、Web3の力をインフラ分野の担い手不足の解消につなげていけないか、日々考えています。

ゲームで電柱を守る「ピクトレ」の仕組み

担い手不足への解決策として登壇者が共通して言及したのが、東京電力パワーグリッドとDEAのジョイントベンチャーであるGrowth Ring Gridが運営するゲームアプリ「ピクトレ」だ。
鬼頭和希
ゲーム感覚で電柱を撮影するとポイントがもらえて、電柱をつなぐとゲームができる仕組みです。コストダウンにも資しながらゲームも楽しめるというアプリで、おかげさまで約15万ダウンロードをいただき、撮影枚数は累計300万枚を超えました。電柱だけでなく、カーブミラーの点検など対象アセットも広げています。
大石峰士
電柱は道路沿いだけでなく、車では入れない細い路地にもあります。そのため車載カメラで一律に撮影することが難しく、どうしても近くにいる人間に見ていただく必要がある。そこでピクトレのような仕組みで、街中にいる市民の皆さんに見ていただくことは非常に助かっています。さらに、こちらが一方的にお願いするだけでなく、「一緒に街の設備を守っている」という感覚を共有できることが重要なポイントだと思っています。
補足:Growth Ring Grid Pte.Ltd.は、東京電力パワーグリッドとDigital Entertainment Asset(DEA)が共同出資して設立したジョイントベンチャー。ピクトレはDePIN(分散型物理インフラネットワーク)の手法を活用し、市民参加型でインフラ点検データを収集する仕組みを実装している。
吉田修一郎
最初にピクトレを知ったとき、ゲームとして面白い要素はあるが、一過性で終わるかもしれないと率直に思っていました。ところが実際に東京電力さんが業務で活用されていると知って驚きました。お年寄りからお孫さんまで参加しているという話もありましたが、みなさんがこれをWeb3だと意識しないで使っている。これが理想形だと思っています。インターネットを使って何かしよう、とは今の時代誰も言わない。Web3もそういう存在になっていくことが大切です。

市民参加が生む熱狂と経済効果

2025年には北海道・函館でのイベント「ピクトレまちバトル in 北海道」を開催。市民の反応は関係者の予想を超えるものだった。
大泉潤
初日に参加しましたが、歴史的な瞬間だと感じました。たくさんの市民が参加してパシャパシャ写真を撮るだけなのに、子どもも、お孫さんもいて、家族で参加するケースもあって、笑顔が弾けていました。ゲームの世界観に没入している雰囲気もあるし、ものすごい達人が現れてスターになっていく。小さな一人ひとりの行動の集合体が社会課題を解決しているということに驚きました。
鬼頭和希
もっと実利に近い話をすると、ピクトレで2年間で100万円以上稼いでいるユーザーがいます。そういった経済的なメリットもあって、メディアさんにも取り上げていただいています。ブロックチェーンはあくまで手段に過ぎない。ピクトレを世に出した際の記者会見で、「チェーンは何ですか」「レイヤーは何ですか」という質問が一切なかった。これが本来あるべき形で、目指すべきところだと思っています。
大泉潤
地域貢献したいという市民も、ソリューションを求めている自治体も、気持ちはあってもなかなかつながらない。その橋渡しをしているのが、物語の力とゲーム性とエンタメ性です。そこが本当にすごいと思っています。

課題先進国から世界へ

WebX2026 電力・自治体DXセッション写真
議論は日本国内の課題解決にとどまらず、グローバル展開への視野に広がった。大石氏が指摘したように、日本が先行して経験している少子高齢化・インフラ老朽化の課題は、遅かれ早かれ東南アジア各国も直面する問題だ。
大石峰士
東南アジアの関係者と話すと、「実績のあるソリューション」が欲しいという声をよく聞きます。日本で適用して成果が出ているものは、彼らにとって取り入れやすい。今まさに実績を作っているところで、それがそのまま東南アジア各国でも適用できると考えています。
吉田修一郎
以前タイに赴任していたとき、日本の省エネ技術を売り込んだ際に「7〜8年でペイできます」と言ったら、タイ政府の担当者から「タイ人は7〜8年も待てません、せいぜい2〜3年です」と言われました。日本人の感覚だと当然なのですが、こうした国民性の違いも意識しながら、各地域に合った形でアレンジしていくことが普及の鍵だと思います。タイのような国には、日本での実績のあるピクトレは非常にマッチするのではないかと感じています。
鬼頭和希
まさに今、タイで展開しようとしている真っ最中です。構造物が老朽化している国にはすべて適用できるソリューションですので、アメリカやヨーロッパにも種をまいて、どこかで芽が出るまでやり続けています。日本のエンタメはまだ世界に誇れる数少ない武器。それを日本から世界に発信していきたいと心から思っています。
大泉潤
私が掲げているスローガンは「世界を函館に、函館を世界に」です。観光だけでなく、函館というフィールドを課題解決の実験場として世界のプレイヤーに使ってもらい、そこで生まれたものを世界に展開していく。ピクトレがまさにそれでした。

セッション総括

各登壇者はセッションの締めくくりとして、それぞれのビジョンを語った。
大石副社長は「これまでは自前主義で安定供給に責任を持ってきたが、今後は消費者の皆さん、地域の皆さんと共にインフラを守り作っていく形に変わっていく。そういう世界を目指したい」と述べた。
大泉市長は「一人ひとりが写真を撮るという小さな行動の集合体がインフラを守っている。これは日本人ならではの強みではないか」と話し、市民全員が関わることで生まれるプライドの価値を強調した。
吉田室長は「Web3の技術ならではの強みと、日本人らしさの良さを組み合わせて海外に打って出ていければ、日本政府の人間として非常に誇らしい技術になると思う。そのお手伝いを今後もしていきたい」と締めた。
鬼頭氏は「インフラを民主化していく、それが私の目指す未来です。市民がそこに住んでいる街のものを自分で守っていく世界は本当に作れると思っています。日本から、そして世界に」と力強く宣言し、セッションを締めくくった。
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