仮想通貨流出リスク対応、顧客の返還請求権を『優先弁済対象』へ|金融庁に内閣府副大臣ら出席
- 金融庁新議会で内閣府副大臣らが討議
- 金融庁は4日、内閣府副大臣らを招いて「金融審議会」を開催。弁済原資となる同種・同量以上のビットコインなどの仮想通貨保持、顧客の仮想通貨返還請求権を優先弁済対象とする提言が確認されたほか、国内レバレッジ規制による海外取引所利用についても言及された。
金融庁新議会で内閣府副大臣らが討議
平成31年3月4日(月)、金融庁に内閣府副大臣や政務長官を招き、「金融審議会総会・金融分科会」が開催された。主な議題としては以下のものがあり、今回は、仮想通貨に関係する分野での重要発言について、議事録資料より抜粋した。
- 情報の適切な利活用
- 決済の横断法制
- 情報と金融機関
- プラットフォーマーへの対応
金融制度スタディ・グループ
- 高齢社会における金融サービスのあり方について
- 仮想通貨に関して
市場ワーキング・グループ
金融市場全体に関して
日本の経済には、世界経済の下方リスクがある。
安倍内閣のこれまでの様々な施策、取組みにより、企業収益や雇用・所得環境が改善、経済の好循環は生まれている。政府としても、生産性向上の推進に傾注している。
金融庁としても、金融仲介機能の発揮や、国民の安定的な資産形成、これを促す施策を推進するなど、経済の好循環を確かなものとするよう、金融面からしっかりと支えていきたい。
金融を巡る環境変化を踏まえた機能別・横断的な法制の実現に向けては、金融制度スタディ・グループにおいて検討して貰っているところだが、2月13日に開催された「未来投資会議」においても、安倍総理から、『決済をはじめとする分野で早期に規制体系を再編成する法案の提出を検討したい』という発言があった。
麻生金融担当大臣からも、決済分野の横断化・柔構造化や、横断的な金融サービス仲介法制の実現に向けた検討をしていきたいとの発言があった。
○内閣府・長尾政務官
金融の役割は、経済を支え、景気回復の温かい風を全国津々浦々に届けていくという観点からも、非常に重要だ。
企業の成長に向けた資金が、すみずみまで行き渡るように、金融機関による金融仲介機能の十分な発揮や、資本市場の活性化を実現していく必要がある。
仮想通貨に関して
○小森市場課長(金融庁幹部)
2017年4月から仮想通貨と法定通貨の交換業者に登録制が導入され、マネーロンダリング、テロ資金供与規制の対象とされるとともに、利用者保護のための一定の制度的枠組みが整備された。
一方で、その後、顧客の仮想通貨の流出事案が発生したほか、当局の検査を通じて業者の管理態勢の不備が把握された。
また、仮想通貨の価格が乱高下し、仮想通貨が投機の対象となっている、との指摘もなされているほか、仮想通貨を用いた証拠金取引や資金調達といった新たな取引も登場している。
仮想通貨交換業等に関する研究会は、こうした状況を受け、昨年3月に、仮想通貨交換業等に関する制度的な対応を検討する場として設置をされたものだ。
金融庁の研究会は、「利用者に適正な自己責任を求める」ことを念頭に置きながら、仮想通貨を用いた様々な取引の機能に着目し、同様の経済的機能・リスクを有する場合には同様の規制を適用するという考え方を基本としつつ、制度的な対応のあり方について、11回にわたる議論を重ね、昨年12月に本報告書を取りまとめた。
○岩下委員(京都大学公共政策大学院教授)
ビットコインは、よくわからないけれども値上がりするもので、資産なのだということではなくて、何か通貨として使われているという1つのイリュージョンがあって、結果として値上がりしたという実態があるような気がする。
ビットコインの価格が比較的安定していた時期には特に、マネーロンダリングなどのイリーガルなことも含めて、国際的な取引ができていた。違う法律の制度・立てつけであっても、資金決済のようなものが出来たがゆえ、イリーガルに使われてしまった。
ビットコインが一旦国境の壁を乗り越えたかに見えたが、結局その後、ビットコインは乱高下してしまって、通貨ではなくなったため、もう使えないのでは。
ただ、今後は国境をまたいだ形での新しい仕組みのようなものが出てくるのではないか。出てきたときにどうするべきなのかというのも良いチャンスだ。
○小森市場課長(金融庁幹部)
仮想通貨交換業者を巡る課題への対応について、仮想通貨の流出リスクなどへの対応として、オンラインで秘密鍵を管理する顧客の仮想通貨相当額以上の純資産額及び顧客に対する弁済原資となる同種・同量以上の仮想通貨の保持を義務づけること。顧客の仮想通貨返還請求権を優先弁済の対象とすることなどの提言がある。
顧客の暗号資産返還請求権を優先弁済の対象とする仕組みについては、現在法案を準備しており、各府省と調整している。
「仮想通貨交換業者が顧客から預かった暗号資産、及び弁済原資として持っている同種・同量以上の暗号資産から、業者が破綻した際に一般の債権者に先立って顧客が弁済を受けることが出来る権利を持つ」といったような形で、今議論を進めている。
○山本(和)委員(一橋大学大学院法学研究科教授)
興味深いが、あまり前例がない。
倒産手続等に対しても影響が大きい仕組みのような気もするので、そういう手続的な観点にも配慮しながら、ほかの制度との整合性ということにも配慮していきながら、検討を進めていただければ。
○神田会長(学習院大学大学院法務研究科教授)
日本では多少特色のあるものだが、アメリカなどで言うファイナンシャル・アセットというのをより狭い範囲でというような発想だとは思うので、いろいろな意味で諸外国に例はあると言っていい。
○福田委員(東京大学大学院経済学研究科教授)
金融の新しい流れは非常に大きく変わってきて、かつては考えられなかったようなことが起こっている。
それに伴って2つの大きなことが起こっていて、1つは、利便性を向上させるようなイノベーションの可能性というのが非常に大きく膨らんでいる。他方で、それに伴って、これまでになかったようなリスクも大きく拡大している。
ある意味では、一方を推進すれば一方を犠牲にしなければいけないという相矛盾するようなことが同時に起こっている中で、どういう形で金融制度を見直していけばいいかということで議論されたのが、金融制度スタディ・グループの報告書であり、仮想通貨交換業者等に関する研究会の報告書だ。
海外の事例では、コールドウォレットで保管していた仮想通貨が、コールドウォレットから引き出すための「秘密鍵」を唯一知っていた管理者が急死してしまったことで、顧客資産を引き出せなくなってしまった事例もある。このような想定外も起こり得るため、頭をフレキシブルに持ち、不断に見直していく必要性がある。
○原田委員(中央大学商学部教授)
2点ほど確認したい。
仮想通貨の日本でのレバレッジが下がる、取引のレバレッジが下がると、主に投資家は若い世代の人たちであろうと思うが、例えば、海外の取引所で取引をするようになった場合には、海外の取引所で取引している人が被る損失などは、把握できないのか?
ICOに関して、一種業登録に言及されたが、どういう形であるのか?
また、私の所感では、仮想通貨の呼称について豪州の事例しか知らないが、向こうの学生は、仮想通貨ではなくクリプトアセットとして金融の授業で習っている。日本でも呼称変更を行うことは、混乱を避けるためにも望ましい。
○小森市場課長(金融庁幹部)
外国の取引業者に逃げる場合に何が起きるのか、といったことについては、日本国内の顧客に対して、例えば日本語のホームページ等を使って取引を誘引しようとするような場合については、日本国内においても登録をして業を営んでいただく必要がある。
それができない場合については、「無登録営業」ということで警告等の対象になっていく。
なお、ICOの一種業登録については、投資性ICOという、収益分配を約する形でそのトークンに権利を乗せるといったようなことも世界では行われている。投資性ICOの場合、収益分配を約する行為なので、仮にトークンでなかったとしても、それは金商法上の有価証券としての性質を帯びている。
有価証券の一部として位置づけて、現行の流通性の高い有価証券についてかかっている一種業登録を仲介業者に求めてはどうか、といった考え方を報告書に書いて頂いている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します