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予測市場ポリマーケット(Polymarket)とは?仕組み・法的位置づけと日本の現在地

基礎情報

01予測市場の基本

ポリマーケットとは

予測市場とは何か

ポリマーケットは、選挙や経済指標、スポーツの結果といった現実世界の出来事に対し、「起きるか・起きないか(Yes/No)」の契約を参加者が売買するプラットフォームである。契約の取引価格は、そのまま出来事が起きる確率として読み取れる。

こうした仕組みはブロックチェーンを用いた「分散型予測市場」と呼ばれる。ただし、ポリマーケットの全てがブロックチェーン上で完結しているわけではない。

グローバル版では、注文の管理を運営側のオフチェーンのシステムが担い、約定とポジションの決済のみをポリゴン(Polygon)チェーン上で処理するハイブリッド型の構成をとる。

担保にはステーブルコインが用いられ、2026年4月28日以降は独自ステーブルコインの「Polymarket USD(pUSD)」へ移行した。約定や保有ポジション、決済までの記録がチェーン上に公開されるため、価格がどのように形成されたかを第三者が検証できる点が特徴だ。

一方、米国版の「Polymarket US」はブロックチェーンを用いない構成で運営されており、予測市場という仕組み自体がブロックチェーンを前提とするわけではない。

ポリマーケットの成り立ち

創業は2020年。シェーン・コプラン(Shayne Coplan)氏が、コロナ禍の情報混乱を背景に「偏りのない透明な事実抽出の仕組み」として構想し、同年6月に最初の予測市場を開設した。市場そのものも拡大しており、主要な予測市場プラットフォームの月間取引高は2026年7月に合計で約530億ドルへ達している。

情報インフラとしての広がり

ポリマーケットは、取引の場にとどまらず、世の中の見通しを測る情報源としても使われ始めている。2025年11月にはグーグルがGoogle Financeに予測市場のデータを統合したと報じられた。

2026年1月には米ダウ・ジョーンズと独占提携を結び、傘下の主要経済メディア上に予測データが表示されるようになった。ニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)も、機関投資家向けにこのデータを配信している。

予測市場という発想自体は新しいものではない。米アイオワ大学のティッピー・カレッジ・オブ・ビジネスが1988年の米大統領選を対象に開設した「アイオワ電子市場(Iowa Electronic Markets、IEM)」は、研究・教育目的で運営される実際の資金を用いた予測市場で、選挙結果の予測において世論調査を上回る精度を示した例が学術的に報告されてきた。

価格が社会に分散した情報を集約するという考え方は、経済学者フリードリヒ・ハイエクの知識分散の議論にさかのぼる。予測市場は投機の場としてだけでなく、情報集約の仕組みとして長く研究の対象になってきた領域である。

02仕組み

予測市場の仕組み

予測市場では、出来事の結果をめぐる「契約」が売買され、その価格が確率の目安として読み取れる。例えば「クラリティ法(H.R.3633、米国の仮想通貨市場構造法案)が2026年内に成立するか」という市場で、「はい(成立する)」の契約が17セントで取引されていれば、市場参加者全体はその実現確率を約17%と見込んでいることになる。

価格は取引のたびに動くため、表示される確率はあくまでその時点の見立てである。

クラリティ法(H.R.3633)の2026年内成立を対象とするポリマーケットの市場画面。確率17%とその推移を示すチャートが表示されている

クラリティ法の成立可否を対象とする市場の画面例。表示される%は、参加者が見込む確率の目安を示す(2026年9月8日時点)

「シェア」とは何か

シェア(持ち分)が1ドルまたは0ドルで決済される仕組みの図解

結果ごとに「シェア(持ち分)」という契約単位がある。1シェアは、対象の結果が起きれば1ドル、起きなければ0ドルで決済される。価格は0〜100セントの範囲で動く。

価格が「確率」になる理由

シェア価格が確率を表すしくみの図解

1ドルで決済されるシェアが61セントで取引されていれば、市場全体としては約61%の確率を織り込んでいることになる。表示される「61%」は確定的な予測ではなく、参加者の資金が示す見込みにすぎない。

確率の合計が100%にならない理由

確率の合計が100%にならない理由を示す図解

二者択一の市場でも、表示される確率の合計は100%ちょうどにならないことがある。各選択肢が独立した気配値で表示され、買値と売値の差(スプレッド)があるためだ。ただし差が大きく開けば、その差を取ろうとする売買が入って埋められていく。板が厚く取引が活発な市場ほど、合計は100%に近づく。

オーダーブック(板)とは何か

オーダーブック(板)に買い注文と売り注文が並ぶしくみの図解

買い注文(ビッド)と売り注文(アスク)を価格ごとに並べた一覧。最も高い買値と最も安い売値の差がスプレッドで、注文が厚いほど価格は安定しやすい。

結果はどう決まるのか(決済)

決済の判定方法を示す図解

各市場には「ルール(市場コンテキスト)」が定められ、何をもって結果が確定するかが事前に明記される。資産価格を対象とする市場は終了時刻の価格データで機械的に判定される。選挙結果など単一のデータ源で決められない市場では、分散型オラクル「UMA」上で結果が提案され、異議が出た場合にトークン保有者の投票で決着する。

※本節は予測市場という仕組みの一般的な解説であり、特定サービスの利用方法を案内するものではない。2026年8月時点で、日本のユーザーはポリマーケットの公式サイト上で取引できず、閲覧のみが可能となっている。

03実際の見方

画面で読み解くポリマーケット

2026年8月時点で、日本のユーザーは公式サイト上で取引できないが、画面の閲覧(View only)はできる。ここでは実際の画面を例に、どこを見れば何が分かるかを整理する。操作の手順は扱わない。

観点 01

観点① トップ画面:出来事が「確率」で並ぶ

政治・スポーツ・仮想通貨・経済など、カテゴリ別に「質問」の形をした市場が並ぶ。各市場に表示される%は、その出来事が起きる確率の目安を示す。どのテーマに資金と関心が集まっているかを一覧から読み取れる。

観点 02

観点② 個別市場:確率の推移と決着のルール

個別の市場を開くと、確率の推移を示すチャートが表示される。同じページには「ルール(市場コンテキスト)」が明記され、何をもって「はい/いいえ」が確定するか、判定の根拠となるデータ元まで確認できる。

観点 03

観点③ オーダーブック(板):確率がどう形成されるか

買い注文と売り注文が価格ごとに並ぶ。注文が厚いほど価格は安定しやすく、逆に板が薄い市場では少額の注文でも確率表示が大きく動く。表示されている確率をどこまで信頼できるかは、板の厚みから見当がつく。

観点 04

観点④ コミュニティ:議論と大口の保有ポジションを追う

各市場には議論や大口の保有ポジションを示すタブがあり、参加者の見方を追える。誰がどちらの結果に資金を投じているかを追えるのは、記録がチェーン上に公開されているためだ。価格の数字だけでは見えない論点をつかむ手がかりになる。

04精度の検証

予測市場の精度はどの程度か

予測市場について最も多い問いは「実際に当たるのか」だろう。予測市場は高い的中率で知られており、2024年の米大統領選では世論調査を上回る精度を示したとされる。ただし、精度の評価は調査によって幅がある。

どれくらい当たっているのか

ポリマーケットは自社サイトで精度の検証ページを公開している。決済済みの市場について、予測が実際の結果からどれだけ離れていたかをブライアスコア(Brier Score)という指標で集計したものだ。

値は0に近いほど精度が高く、すべての質問に「50%」と答え続けた場合は0.25になる。結果が確定する4時間前の時点で見た全体の値は0.0627だった(2026年9月8日時点)。

ポリマーケットの精度検証ページのグラフ。予測確率の帯ごとに、市場が示した確率と実際に起きた割合がほぼ一致している

予測確率の帯ごとに、市場が示した確率と実際に起きた割合を並べたもの。決済の4時間前時点

つまり、市場が示す確率は実際に起きた割合とおおむね対応している。確率が20%と表示されていた市場のうち実際に起きたのはおよそ2割、80%の市場ではおよそ8割で、どの確率帯でも大きなずれは見られない。

精度を支えているのは誰か

ロンドン・ビジネススクールとイェール大の研究者によるワーキングペーパー「Prediction Market Accuracy: Crowd Wisdom or Informed Minority?」(2026年4月、SSRN)は、ブロックチェーン上に公開されたポリマーケットの2023年から2025年までの取引記録を全数分析した。172万アカウント、取引総額137億6,000万ドルにのぼる。

同研究は、予測市場が高い精度を示すこと自体は認めたうえで、その源泉を「群衆の知恵」ではなく「情報を持つ少数派」に求めている。統計的に実力を示せたのは全体の約3%で、この層が公開情報に素早く反応し、割安・割高を修正することで価格が実現する結果に近づいていくという整理だ。表示される確率は参加者全員の見方を平均したものではなく、情報の更新に反応した売買の積み重ねとして形づくられている。

どんな市場で精度が高いのか

研究チームは、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果公表と四半期決算という日時が確定した出来事で検証している。実力があると分類された参加者は、最終的に実現する側へ価格を動かし、発表直後の反応も他の層より速かった。

裏を返せば、精度は公開情報の処理速度に支えられている。参照すべき情報が乏しい市場、期限が遠く情報が更新されない市場、板が薄く少額の注文で価格が動く市場では、同じ精度は期待しにくい。表示された確率をどこまで信頼できるかは、市場ごとに見極める必要がある。

ポリマーケットの精度検証ページのデータもこれと整合する。ブライアスコアは市場の出来高帯ごとに示されており、取引が活発な市場ほど低い。取引高が100万ドルを超える市場では、決済1日前の時点で0.016前後まで下がる。スポーツのブックメーカーが長年達成してきた0.18〜0.22という水準と比べても桁が違う。

出来高帯ごとのブライアスコアを示すグラフ。取引高が大きい市場ほどスコアが低い

出来高帯ごとのブライアスコア。値が小さいほど精度が高い

全体の0.0627には、ほぼ結果の決まった市場も含まれている。誰が予測しても当たるぶん、値は低く出る。算出根拠のダッシュボードには、確率が99%を超える市場と1%を下回る市場を除いた数値もあり、そちらは0.12前後だ。予測が割れている市場では、こちらが目安になる。

(出典)ポリマーケットの精度検証ページ、および同ページが算出根拠として挙げるDune上の公開ダッシュボード。数値は2026年9月8日時点。

05規模と資本

ポリマーケットの規模と資本背景

取引高はどこまで伸びたか

前掲のワーキングペーパーによると、月間取引高は2023年12月に330万ドルだった。そこから2年余りで桁が変わっている。ただし伸びは一本調子ではない。2024年11月の米大統領選で取引は急増し、投開票直後には1日あたり4億ドル近くに達したが、その後は大きく落ち込んだ。2025年半ばから再び増加に転じている。

2026年4月の月間取引高は米国版を含めて約103億ドルで、前月から約9%減った。8カ月続いた増加が止まった形である。同社は4月28日に実施した取引基盤の刷新で一時的に取引が止まったことを理由に挙げたが、同月に取引した利用者数も約73万人から約64万人へ12%減っている。

その後は再び持ち直し、2026年6月には国際版が108億ドルと過去最高を記録。米国版と合わせた取引高は約133億ドルに達した。なお予測市場の主要3プラットフォーム(カルシー、ポリマーケットの国際版と米国版)の月間取引高は、2026年7月に合計で約530億ドルへ達している。

ICEによる出資と評価額

資本面では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)が支援する。

ICEは2025年10月7日、最大20億ドルを出資すると発表。出資前の企業価値は約80億ドル、出資後は約90億ドルとされた。2026年3月27日に実施された6億ドルの現金出資はこの枠内での払い込みであり、別枠の追加出資ではない。

評価額はその後も上がっている。2026年4月に完了したラウンドでは約150億ドル、8月末には1789キャピタルなどから約10億ドルを調達して約210億ドルと報じられた。ICEは2025年10月以降で計26億ドルを投じ、発行済み株式の約22%を持つ筆頭株主になったとされる。

ただし直近のラウンドについては、交渉が継続中で未完了とする報道もある。

出資の狙いは株式の取得そのものよりデータにある。ICEはポリマーケットのイベント駆動型データを機関投資家へ独占的に配信する立場を得ており、既存の市場データ事業に予測確率という新しい層を重ねる構図になっている。ポリマーケットの収益源も、2026年3月に導入したカテゴリ別の取引手数料、市場に預けられたステーブルコイン担保の運用益、そしてこのデータ配信の三つが柱とされる。

運営会社の概要

名称Polymarket(ポリマーケット)
創業2020年6月/米国・ニューヨーク
創業者・CEOシェーン・コプラン(Shayne Coplan)氏
基盤グローバル版(polymarket.com)はポリゴン(Polygon)チェーン上で稼働。担保は2026年4月28日以降、独自ステーブルコインの「Polymarket USD(pUSD)」を使用(従前はUSDC)。米国版(Polymarket US)はブロックチェーンを用いない構成
米国での体制QCX LLCが2025年7月9日に指定契約市場(DCM)の指定を取得。ポリマーケットは同月、QCX LLCと清算機関QC Clearing LLC(総称QCEX)の持ち株会社を1億1,200万ドルで買収し、2025年12月に「Polymarket US」としてサービスを開始
主な出資者インターコンチネンタル取引所(ICE、ニューヨーク証券取引所の親会社)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、ゼネラル・カタリスト(General Catalyst)、ポリチェーン・キャピタル(Polychain Capital)ほか

主な出来事

2020年6月
プロダクト
サービス開始
2022年1月
規制
CFTCと和解、140万ドルの制裁金を支払い米国から撤退
2025年7月
規制
DCM指定を得たQCEXを買収し、米国再参入の枠組みを取得

QCX LLCへのDCM指定は7月9日、買収完了は同月21日。米国向けサービスの開始は同年12月。

2025年10月
提携
ICEが最大20億ドルの出資を発表
2026年1月
提携
ダウ・ジョーンズと予測データ配信で独占提携
2026年3月
提携
MLBの公式予測市場パートナーに。MLBとCFTCが覚書を締結

米プロスポーツリーグと連邦機関の覚書としては初の事例。八百長リスクのある市場を共同で制限する枠組みも設けた。

2026年4月
プロダクト
対象資産の拡大と取引基盤の刷新

オラクル「Pyth」を統合し、金・銀や米国株などの伝統的金融資産へ拡大。照合エンジンを刷新し、4月28日には担保を独自ステーブルコイン「Polymarket USD(pUSD)」へ移行した。無期限先物への参入も予告した。

2026年5月
プロダクト
未上場企業を対象とする予測市場を新設

評価額やIPOの時期などを対象とし、判定データはナスダック・プライベート・マーケットから独占的に取得する。

2026年9月
プロダクト
無期限先物「Perps」の提供を開始

3日に開始。ビットコインやブレント原油、金・銀、米国株や指数などを対象とし、開始時の10市場から67市場へ拡大した。レバレッジは最大20倍。米国のユーザーは対象外で、Polymarket US側では提供されない。

(出典)2023年12月の数値は前掲ワーキングペーパー。2026年3月以降の数値はオンチェーンデータの集計に基づく報道および同社提供データ。主要3プラットフォームの合計はThe Blockの集計による。ICEの出資条件と評価額は同社の公式発表および報道による。

※本記事について

※本記事は、予測市場およびポリマーケットに関する情報提供・解説を目的としたものであり、特定のサービスの利用や取引を勧誘・推奨するものではありません。記載内容は2026年9月8日時点の公開情報に基づきます。

※2026年8月時点で、日本から公式サイト上でポリマーケットの取引はできず、閲覧(View only)のみが可能です。CoinPostは日本のユーザーに対し、本サービスの利用を推奨しません。

※規制・法的評価および提供状況は変動します。日本での提供状況に変更があった場合、本記事の内容を見直します。最新の状況は、公的機関の公表情報等をご確認ください。

注目情報

01規制対応と課題

規制対応と指摘される課題

米国での制裁と再参入

ポリマーケットは2022年1月、未登録のデリバティブ取引所を運営していたとしてCFTC(米商品先物取引委員会)と和解した。140万ドルの民事制裁金を支払い、米国ユーザーを遮断する措置をとることに応じている。2025年7月にはCFTCライセンスを持つ取引所QCEXを買収した。QCX LLCは同月9日に指定契約市場(DCM)の指定を受けており、米国向けのサービスは同年12月に始まっている。

DCMとは、CFTCの指定を受けて先物・オプションなどのデリバティブを上場できる取引所の区分である。米国において、ポリマーケットの提供する契約が賭博ではなく金融商品(先物取引)として扱われていることを意味する。Polymarket USで扱われるのは全額担保付きの契約に限られ、証拠金取引やレバレッジは提供されていない。

決済(レゾリューション)をめぐる紛争

資産価格を対象とする市場は参照データで機械的に決着するが、それ以外の市場は分散型オラクルUMA上での投票で決まる。

この仕組みが揺らいだのが2025年3月の事例だ。「ウクライナが4月までにトランプ氏の鉱物資源合意に応じるか」という取引高約700万ドルの市場が、署名がないまま「Yes」で決着した。実際の署名は4月末である。オンチェーンの記録では、単一の保有者が3つのアカウントに分けて投票の約25%を占めていた。

価格の動き、決着の内容、投票権の集中はいずれも記録上の事実である。一方で、意図的な操作があったかどうかは指摘にとどまり、認定された事実ではない。ポリマーケットは「前例のない事態」としてUMA側と再発防止に取り組むと表明した。ルールの解釈に幅が残っていると、決着そのものが争いの対象になる。

インサイダー取引の懸念と監視体制

結果を左右する立場にある者や、公開前の情報に触れられる者が参加した場合、市場は「予測」ではなく「既知の事実の先取り」になる。ポリマーケットは内部情報に基づく取引を規約で禁じているが、2026年に入って利用者の摘発が相次いだ。4月には米陸軍特殊部隊の曹長(マスターサージェント)が機密扱いの作戦情報を用いたとして、5月にはグーグルの社員が公開前の年間検索ランキングの情報を用いたとして、それぞれ連邦検察に訴追された。

同社は2026年4月30日、ブロックチェーンデータ企業チェイナリシス(Chainalysis)と提携し、オンチェーン取引を監視して不正な取引を検知する体制を整えると発表した。取引記録が公開されているという予測市場の特性を、監視の側で活用する取り組みである。2026年8月には、内部情報の利用が疑われる数十のアカウントを自主的に司法省へ照会していたことも明らかになった。

02法的性質

予測市場は賭博か、金融商品か

予測市場をどう位置づけるかは、国によって判断が分かれている。ここでは結論を出さず、両方の論拠を整理する。

三つの性質の中間にある

予測市場には、金融商品・情報市場・賭博という三つの性質が同時に指摘されてきた。

金融商品としての面では、参加者はポジションを売買し、満期前でも売却して損益を確定できる。金・銀・米国株・ビットコインを対象とする契約は、価格変動に対するヘッジ手段として使える。

情報市場としての面では、市場価格を通じて社会の集合的な見通しが可視化される。ICE、ダウ・ジョーンズ、グーグルがこのデータを金融情報として配信していることが、その表れだ。

賭博規制が問題にしてきた面としては、将来の出来事の結果に応じて財産上の得喪が生じる点が挙げられる。とりわけスポーツの試合結果を対象とする市場は、スポーツベッティングと機能が重なる。この中間性が、各国の規制対応を難しくしている。どの性質に重きを置くかによって、適用される法律も、規制の担当官庁も変わるためだ。

規制当局の判断は国によって分かれる

米国連邦レベルでは、CFTCが予測市場の契約を先物取引(金融商品)と位置づけている。この立場が最も明確に表れたのが州との対立だ。ミネソタ州が2026年5月18日、予測市場の運営を重罪とする全米初の法律を成立させると、CFTCは翌19日に差し止めを求めて提訴した。2026年7月には連邦地方裁判所が施行を仮に差し止めている。

規制当局自身が「賭博ではない」側に立って州を訴えている構図である。

一方、これとは異なる判断を示した国もある。フランスの国家賭博監督機関(ANJ)、ベルギーのゲーム委員会、シンガポールの賭博規制庁(GRA)、オランダの賭博監督機関(KSA)などが、それぞれ自国の賭博規制を根拠に遮断や停止を命じてきた。英国も同社に免許を与えていない。いずれの判断も、予測市場を自国の賭博規制の対象とみるかどうかという一点に集約される。日本もポリマーケットの利用制限の対象に含まれる。

予測対象によって評価は変わる

同じプラットフォームの中でも、何を予測の対象にするかによって性質は大きく異なる。「予測市場」として一括りには評価できない。

予測の対象金融商品としての性質賭博規制での扱われやすさ
金・銀・米国株・BTCの価格 強い(既存デリバティブと同型) 低い
FOMC・経済指標 中(マクロヘッジ機能あり) 中
選挙結果 弱い 中
スポーツの試合結果 弱い 高い(スポーツベッティングと機能が重なる)

本記事による整理。同一プラットフォーム内でも、対象によって評価は一様ではない

ポリマーケットが2026年に進めた事業拡大は、この幅の両端に同時に踏み出すものだった。MLBの公式予測市場パートナー就任は賭博規制が問題にしやすい側へ、9月に始めた無期限先物は金融商品の側へ、それぞれ領域を広げる動きにあたる。プラットフォーム単位で「賭博か、金融商品か」を決めようとしても、どちらの結論も実態の一部しか説明できない。

03日本市場

ポリマーケットは日本から使えるのか

公式サイトでは取引できない

2026年8月時点で、日本から公式サイト上でポリマーケットの取引はできない。同社は一部の国・地域からの利用を制限しており、日本もその対象に含まれる。サイトの閲覧自体は可能だが、画面上で取引操作が制限され、注文の実行はできない状態である。

日本法における現在地

日本の当局は、予測市場が賭博にあたるかどうかの判断を示していない。法務省も法的位置づけへのコメントを避け、賭博と見なされうる行為は刑法に基づき個別に判断されるとの認識を示すにとどまる。ポリマーケット型のサービスを直接扱った公表裁判例も確認できない。

国内で合法に提供するための制度も、現時点では整っていない。選挙やスポーツのイベント契約は金融商品取引法の規制対象に当然には含まれず、登録を取れば提供できるという関係にない。スポーツ振興くじ(toto)が適法に実施されているのは、特別法によって実施主体や対象、払い戻しが定められているためだ。

関連する規制と当局の姿勢

予測市場そのものへの判断は示されていない一方で、オンライン上の賭博をめぐる規制は近年強化されている。参照すべき枠組みを整理する。

警察庁は、海外で適法に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行えば犯罪にあたるとの見解を示している。運営国での適法性は、日本国内にいる利用者の行為を正当化しないという立場である。

2025年9月25日に施行された改正ギャンブル等依存症対策基本法は、違法なオンライン賭博サイトを提示する行為、および同サイトへ誘導する情報を発信する行為を禁じた。運営者だけでなく、広告・宣伝や誘導を担う第三者も規制の対象に含まれる構成になっている。摘発も増えており、2025年に警察が摘発したオンラインカジノの賭博事件は158件で、前年の約3倍にのぼった。

ただし、これらはいずれも予測市場を名指しした規制や注意喚起ではない。予測市場が「違法オンラインギャンブル等」に含まれるかどうかについて、当局は判断を示していない。したがって、オンラインカジノに関する見解をそのまま予測市場に当てはめて違法と結論づけることはできず、逆に無関係と断じる根拠も現時点では存在しない。

国内で提供されている代替の仕組み

現行法の下で予測市場に近い体験を提供する形として挙げられているのが、無償・非換金・非譲渡のポイント型サービスである。参加に金銭を要さず、獲得したポイントを換金・譲渡できない設計であれば、財産上の得喪を争う構図にはならないという考え方に基づく。

国内でも実際にこの形のサービスが立ち上がっている。2025年後半に公開された「ミライマ」は、広告視聴やログインで得たポイントで現実の出来事を予測し、的中するとギフト券などに交換できるポイントが貯まる。入金は必要ない。

この種のサービスは2026年6月に月間利用者100万人を超えたと報じられた。ゲーム大手のgumiも2026年3月、無償で参加でき的中者に特典ポイントを付与する予測データサービス「ヨソクヒロバ」を発表し、6月に提供を開始した。8月にはニュースアプリ「グノシー」のiOS版でも提供が始まっている。

もっとも、この形であれば問題がないと確定しているわけでもない。無償配布と表示していても換金・譲渡・商品交換が可能であれば同じ評価にはならず、名称ではなく参加者が実質的に価値を失うかで判断されるとの指摘もある。

04FAQ

よくある質問

2026年8月時点で、日本から公式サイト上でポリマーケットの取引はできません。同社が利用を制限する国・地域に日本が含まれるためです。閲覧(View only)は可能ですが、注文は実行できません。CoinPostは日本のユーザーに利用を推奨しません。

日本では当局が予測市場の法的位置づけを公式に示していません。法務省は、賭博と見なされうる行為は刑法に基づき個別に判断されるとの認識を示すにとどまります。イベント契約が当然に金融商品取引法上の金融指標に該当するわけでもなく、国内で合法に提供するための制度も整っていません。

国によって判断が分かれています。米国連邦ではCFTCが先物取引(金融商品)と位置づけ、予測市場を禁止した州法に対して差し止めを求めて提訴しました。一方、フランスやシンガポールなどの規制当局は、自国の賭博規制を根拠に遮断や停止を命じています。

予測市場は高い的中率で知られ、2024年の米大統領選では世論調査を上回る精度を示したとされます。ロンドン・ビジネススクールとイェール大の研究者による2026年4月の論文は、この精度が公開情報に素早く反応する約3%の参加者に支えられていると整理しました。

2026年3月30日以降、カテゴリ別のテイカー手数料がかかります。指値注文を出すメイカー側は無料で、リベートを受け取ります。地政学・世界情勢のカテゴリは無料のままです。手数料は確率が50%前後のときに最も高くなる設計です。

2026年9月8日時点で、ポリマーケットはガバナンストークンを発行していません。ただし同社の最高マーケティング責任者は2025年10月、トークンとエアドロップを実施する方針を明言しています。時期や配布条件は公表されていません。

※本記事について

※本記事は、予測市場およびポリマーケットに関する情報提供・解説を目的としたものであり、特定のサービスの利用や取引を勧誘・推奨するものではありません。記載内容は2026年9月8日時点の公開情報に基づきます。

※2026年8月時点で、日本から公式サイト上でポリマーケットの取引はできず、閲覧(View only)のみが可能です。CoinPostは日本のユーザーに対し、本サービスの利用を推奨しません。

※規制・法的評価および提供状況は変動します。日本での提供状況に変更があった場合、本記事の内容を見直します。最新の状況は、公的機関の公表情報等をご確認ください。

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