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ソニーや三井物産ら4氏が語る、実業資産をトークン化する狙い

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Blockchain Summit 2026 Autumn|セッションレポート
ソニーや三井物産ら4氏が語る、実業資産をトークン化する狙い

波多野和人 × 和歌伸介 × 上野直彦 × 岩瀬純太郎

金融機関や大手事業会社が集まるブロックチェーンの国際カンファレンス「Blockchain Summit 2026 Autumn」(主催:Pacific Meta Group)が10月5日、東京で開かれた。
パネルディスカッション「『日本の実業資産』オンチェーン化の最先端 大手事業会社と金融の波」には、ソニーグループ、三井物産、Toyota Blockchain Lab、OP Labsから4氏が登壇した。
エンタメIP、貴金属と不動産、自動車と社債、そしてそれらを支えるインフラという異なる立場から、本業の資産をブロックチェーンにどう載せ、顧客とどうつながるかを議論した。
ソニーグループ株式会社波多野和人事業開発プラットフォーム オンチェーン事業戦略部門 部門長
三井物産株式会社和歌伸介参与
Toyota Blockchain Lab上野直彦アナリスト
Optimism / OP Labs岩瀬純太郎日本・東南アジア担当マネージングディレクター
Onigiri Capital木村圭佑ベンチャーパートナー

各社がオンチェーンに載せる資産

モデレーターの木村氏は冒頭、オンチェーン化された現実資産(RWA)の規模がグローバルで約390億ドル(約6兆円)に達し、毎年右肩上がりで伸びていると紹介した。そのうえで各登壇者に、ブロックチェーン上に何を載せているのか、なぜその資産を選んだのかを尋ねた。
波多野和人
ソニーは2年半ほど前から、事業探索の一環としてブロックチェーンのプロジェクトを進めてきた。取り組みは主に3つある。1つ目は暗号資産交換業者の買収、2つ目はOP(Optimism)の協力を得たレイヤー2(イーサリアムの処理を補う拡張ネットワーク)チェーンの運営、3つ目はそのチェーン上で展開するアプリケーション(dApps)だ。
チェーン上にはDeFi(分散型金融)のプロジェクトにも積極的に参加してもらっているが、我々はエンターテインメントの会社なので、エンタメ関連のアプリケーションを中心にオンチェーン化を進めている。
補足:ソニーグループは2023年に暗号資産交換業者のAmber Japan(現S.BLOX)を買収した。2025年1月には、Optimismの開発基盤「OP Stack」を採用したイーサリアムのレイヤー2「Soneium」のメインネットを公開している。
和歌伸介
商社として、コモディティや不動産のアセットマネジメント、開発を手がけている。オンチェーンでは2022年に金の暗号資産を発行して交換業者を通じて販売し、その後は銀やプラチナもトークン化した。不動産では、三井物産デジタル・アセットマネジメントの「ALTERNA(オルタナ)」を通じて小口投資の機会を提供している。
コモディティの中で金を選んだのは、投資商品としての性質からだ。エネルギーは燃えればなくなるが、金は元素としてほとんど変わらない。しかも1グラムといった小さな単位から買える。
不動産では、オンチェーンの技術を使って銀座4丁目のホテルに10万円から投資できるようにした。証券として金融庁のルールに則って運用するので、安心感も持ってもらえる。何でもよかったわけではなく、売り方の狙いを定めて資産を選んだ。
補足:三井物産デジタルコモディティーズは2022年2月、金価格に連動する仮想通貨「ジパングコイン(ZPG)」を発行した。その後、銀に連動する「ジパングコインシルバー(ZPGAG)」、プラチナに連動する「ジパングコインプラチナ(ZPGPT)」も発行している。
Toyota Blockchain Labの上野氏は、発言はトヨタではなく個人としての見解だと断ったうえで説明した。
上野直彦
トヨタは2014年ごろからブロックチェーンの研究を始め、ラボができたのは2019年と聞いている。取り組みは2つある。
1つは、自動車の所有権をトークン化して流通させることだ。ラボのホームページで公開しているテックペーパーの後編では「モビリティ・オーケストレーション・ネットワーク(MON)」という名称で、その入り口となる構想を示した。1年半ほど前に出したもので、国内外で大きな反響があった。
もう1つは、セキュリティトークン(ST)社債の発行だ。自動車業界では初めてだと思う。第1弾、第2弾とも好評で、即完売に近い状態だった。ST社債のようなデジタル金融の取り組みは、発行額でみればまだ小さいが、今後は規模を大きくしていきたい。
岩瀬純太郎
我々はイーサリアムのレイヤー2の基盤を提供し、企業のエンタープライズチェーンの立ち上げも支援している。特定のアセットを載せたいという意思はなく、各社のトークン化やオンチェーン化を成功に導くインフラという立場で、支援先はアジア、米国、欧州に広がる。
直近の取り組みは3つある。1つ目はKB証券、Securitizeとの3者で結んだ覚書で、韓国の規制に則ってまずはMMF(マネー・マーケット・ファンド)から始め、株式やADR(米国預託証券)、国債などへの展開も視野に入れている。2つ目は、韓国でいえばPayPayのような存在で、国民の6割ほどが使うアプリのTossだ。ユーザーがプリチャージ済みの地域商品券を使って加盟店で買い物をすると、1件のスマートコントラクトで支払いと加盟店への入金が即時に完了する。その仕組みを検証し、あわせてプライバシーの検証も行った。
補足:KB証券、Securitize、Optimismの3者は9月23日、韓国の機関投資家向けトークン化証券に関する覚書(MOU)の締結を発表した。株式や社債、韓国国債への拡大は、同国のST制度の整備を踏まえて検討するとしている。
岩瀬純太郎
3つ目は、韓国ブロックチェーンウィーク(9月29日〜10月1日)にあわせて発表した、SoneiumによるOP Enterprise(Optimismの企業向けサービス)の採用だ。オンチェーン事業を始める企業はビジネスモデルや成長戦略など、注力すべきことが多い。インフラ側は任せてほしいという取り組みだ。
補足:Soneiumは9月30日、OP Enterpriseのフルマネージド型サービスの採用を発表した。シーケンサーやノードの運用はOP Labsが担い、チェーンの所有権とロードマップの決定権はSoneiumが持ち続ける。

日本と海外、オンチェーン化の違い

木村氏は、9月29日〜10月1日の韓国ブロックチェーンウィーク、10月7〜8日のシンガポールでのTOKEN2049と大型カンファレンスが続くなかで、インフラを手がける立場から見た日本と海外の違いを岩瀬氏に尋ねた。
岩瀬純太郎
チェーンの立ち上げではSoneiumが非常に早く、規制面でも金融庁が先行して進めてきた部分がある。ただ、実際にアセットを発行する段階になると、海外のほうが動きが速いと、9月29日〜10月1日の韓国ブロックチェーンウィークであらためて感じた。
香港を含むアジアの地域プレイヤーと話す機会が多かったが、さまざまなアセットクラスをトークン化し、自社の顧客基盤に届けようという動きが目立った。トークン化自体が目的ではなく、ディストリビューション(販売・流通)が非常に大事だ。どのアセットをトークン化し、どう戦略を組むかという相談を多く受けた。
対象はプライベートクレジット(非上場企業向けの融資)やプレIPO株(上場前の株式)などだ。地域によってトークン化や販売ができる範囲は異なり、それぞれ制約はある。それでも、トークン化の波はかなり活発になっている。イーサリアムが大きく伸びるなかで、そのレイヤー2として業界に貢献できる余地はまだ大きい。
続いて木村氏は、Optimismと連携してSoneiumのエコシステムを構築するソニーグループの波多野氏にも、国内外の違いについて意見を求めた。
波多野和人
ブロックチェーンは基本的に国を問わないのが特徴だが、規制が違うので、使い道は国によって変わる。我々はエンターテインメントの分野でどんな新しいサービスを展開できるかを考えている。特に日本では、おそらくアジアでも同じだと思うが、推し活プラットフォームをSoneium上でどう展開するかがテーマの1つになる。投資を通じてインキュベーションしている事例を紹介したい。
9月20日、我々が投資している推し活プラットフォームのYOAKE entertainmentが、新横浜でアイドルのファッションショーを開いた。ファンはブロックチェーンを意識することなく、UI/UXがきちんと設計されたアプリを使っている。ファンが推しに投票すると、推しが次のステップに進み、リワードもある仕組みだ。
こうしたサービスは、欧米ではまだ見ていない。欧米はリワードで終わることが多い。推し活をサービスとして成立させている点では、日本を含むアジアが強いのではないか。これはエンターテインメントならではの特徴だと感じている。
補足:YOAKE entertainmentは、ブロックチェーンを活用した推し活サービスを手がける国内スタートアップ。2026年2月には、ソニーグループの投資ファンド「Sony Innovation Fund」から約5億円を追加で調達している。
木村氏は、ここ1、2年のカンファレンスではオンチェーンやRWAが金融の文脈で語られることが多く、エンタメの話題はあまり出てこないと指摘した。そのうえで、推し活をするユーザーの目線から、どんなサービスなら推したいと思えるのかを上野氏に尋ねた。
上野直彦
自動車産業には中国の脅威もあるなかで、IPやコンテンツはこれからの日本の武器になり、稼ぐ手段になるという予感がある。
誰にでも、好きなコンテンツや欠かさず見るものがあるはずだ。そこにブロックチェーンという新しいテクノロジーを掛け合わせれば、大きな武器になると思う。

小口化とST社債、個人とつながる狙い

木村氏は三井物産の和歌氏に、ジパングコインやALTERNAといった小口化の取り組みをリリースしてみて、想定と違った点はあったかと尋ねた。
和歌伸介
2022年にパイロット的に立ち上げた。貴金属も不動産も法定通貨建ての投資商品はすでにあるが、反応はやはり違った。貴金属の伸びは当初の想定より鈍かった。ただ、2025年は金価格の上昇につれて、暗号資産としての金にも投資商品として注目が集まった。早めに銀とプラチナも出した。全体の量はまだ少ないが、プラチナも試してみよう、実は銀のほうが値上がりしていた、といった形で関心が広がる効果もあった。
不動産は今、月に1、2本のペースで出している。狙いは、1,000兆円ともいわれる日本の現金資産だ。その資金の投資先が少ないという問題意識から取り組んでいる。商社は多様な事業と海外のパートナーを持っているので、この仕組みを使って何かをしたいという相談も多く寄せられる。
世界の事例を見ても、ディストリビューションが大事だ。カーボンクレジットのトークンは世界中にあるが、流動性を保って使われ続けるのは難しい。技術的にはすぐにできても、その市場にオンチェーンで入る意味があるのか、Web2と違いがあるのかを重視して見ている。これがここまでの学びだ。慎重かつアグレッシブに、海外も含めて機会を探っていきたい。
続いて木村氏は上野氏に、トヨタグループが機関投資家向けに数兆円規模の社債残高を持つなかで、あえて個人向けに、自社アプリを通じた自己募集でST社債を発行した理由と、その教訓を尋ねた。
上野直彦
これは今も我々の課題だ。資金調達だけなら、証券会社を通じて機関投資家向けに発行すれば、これまでの信用で資金は集まる。ただ、自動車が売れなくなる時代は、そう遠くないうちに来るだろう。今の20代、30代は車を持っていない、興味がない、免許を取らない、あるいは経済的に持てない。こうした変化はじわじわではなく急に来るので、備えなければならないという危機感があった。
だからこそ、STを一口10万円にして、20代、30代に買ってほしかった。機関投資家だけでなく、そうした層を毎年少しずつ増やしていきたい。社債は償還日がわかるので、満期に合わせて新車を提案するなど、販売につなげられる。仮にその効果で売上が3%上がるだけでも、1,000万台規模で生産しているので、かなりの数になる。
もう1つは、機関投資家や証券会社に任せると、顧客の情報がわからないことだ。そのため今回は相応のコストをかけて自己募集という方法を取り、ユーザーに直接届けた。将来の価値を考えると、20代、30代と早いうちから接点を持ち、車に触れてもらう体験をしてほしい。単なる資産運用ではなく、利用促進やリテンション(顧客の維持)、ユーザーとつながることが大きな目的だ。
補足:トヨタファイナンスは2026年8月、第2回セキュリティトークン社債「TOYOTA Wallet つむぐボンド」の募集を開始した。トヨタグループ初の自己募集による公募型ST社債で、「TOYOTA Wallet」アプリから10万円から申し込める。年限は1年。同社は2025年3月に初のST社債を発行していた。
木村氏は、ブロックチェーンは本来、ユーザーと直接つながることで投資銀行への手数料を不要にする技術だと考えていたとして、トヨタがむしろコストをかけている点が意外だと指摘した。コスト削減より、個人とつながるマーケティング手段と捉えるべきかと重ねて聞いた。
上野直彦
結論としては、コミュニティをつくりたい。誰もが手の届くところにトヨタのサービスやウォレットがあり、決済しやすい手段としてブロックチェーンがある、そんな仕組みだ。これまでの方法が通用しなくなる時代はすぐそこまで来ている。先ほどの推し活の話と同じように、そうしたコミュニティを築ければと思う。

パブリックチェーンか許可型チェーンか

木村氏は岩瀬氏に、日本企業がRWAのオンチェーン化に取り組む際、パブリックチェーンか、コンソーシアム型や許可型(パーミッションド)チェーンかで迷う事業会社が多いとして、その見方を尋ねた。
岩瀬純太郎
私はもともとソーシャルメディアやコミュニティマーケティングに携わっていたので、今の話には大きな刺激を受けた。消費者と直接しっかりつながることは非常に大事だと、肌感覚でも感じている。
本題に戻ると、業種や手がけたいビジネスによって、規制とその進み具合は異なる。日本でブロックチェーンを導入するなら、プライバシーとコンプライアンスが非常に重要で、BIS(国際決済銀行)のガイダンスなどもある。その意味で、まず許可型のブロックチェーンを使うのは、非常に理にかなった選択だと個人的には思う。
導入が進めばブロックチェーンのハードルは下がり、若い層からオンチェーンに慣れていくだろう。許可型を導入した企業からは、国内外を問わず、もっとイノベーションを得たいという声を多く聞く。アセットをどうトークン化してパブリックチェーンに接続し、顧客接点を持てるかに、各社とも強い関心を持っている。どちらがよいかではなく、業界が発展していく過程の一段階と捉えている。私はパブリック側で支援する立場だ。

次にオンチェーン化する資産と課題

終盤、木村氏は議論を将来に向け、日本企業と一緒にブロックチェーンに載せたい資産や、今後取り組みたいことを各氏に尋ねた。
岩瀬純太郎
ブロックチェーン側の究極の役割は、運用やメンテナンス、SLA(サービス品質保証)を含めて、壊れない、安心な基盤を提供することだ。面白さは、事業者が顧客とどうつながり、どんな事業をつくり、その先のビジョンをどう実現するかにある。
2019年から事業を続けてきたので、Web3企業とは幅広くつながっている。KB証券やSecuritizeとの取り組みのように、パートナーを組み合わせて知見を持ち寄り、企業のビジョンを実現することに我々の価値がある。だから特定のアセットにはあまりこだわっていない。
アセットを持つ立場の和歌氏には、業界として次にどんな資産があり得るか、海外からどんなニーズを聞くかを尋ねた。
和歌伸介
日本で始めた貴金属と不動産は出発点だと考えている。さまざまなコモディティを載せたい、不動産の次はインフラにも広げたいと発信し、検討を進めている。ただ、やはりディストリビューションが大事だ。投資家やユーザーは、オンチェーンかオフチェーンかを意識せず、メリットがあるから選ぶというのが基本だと思う。
だから、何を載せたいかより、何が求められているから載せるのかを考える。今の規制上必要なら許可型で、パブリックでやる場合も、大企業として担えるのはここまでと線を引き、その先は別のプレイヤーに任せるのも1つの方法だ。
銀座4丁目のホテルに日本の個人が10万円から投資できる機会は、オンチェーンがなければなかった。一方で、オンチェーンだからそのホテルに投資しようと考えた人も、おそらくいない。載せる側としては、ディストリビューションと市場のニーズ、テクノロジーの強みを十分に理解したうえで選ぶ。そこが一番大事だ。
IPやエンタメの話をしていた波多野氏には、オンチェーンとリアルワールドアセットが今後どうつながっていくと見ているかを尋ねた。
波多野和人
観点は2つある。1点目はアプリケーションだ。エンタメのアプリケーションを自分たちだけで作るより、投資活動を通じてスタートアップと出会い、よいアプリケーションを見つけることがまず重要だ。その成功事例をグループの事業部門に見てもらい、触ってもらうことで、イネーブラー(事業を後押しする存在)としての立ち位置を確立できる。
2点目はIPだ。コンテンツのIPにはクリエイターとファンがいて、プロが作るコンテンツと、ユーザーが作るコンテンツの2種類がある。チェーンの話では、我々はまずUGC(ユーザー生成コンテンツ)に注目している。二次創作、三次創作とコミュニティの中で広がっていくなかで、最終的に元のIPオーナーにどう収益を還元できるか。ここでブロックチェーンは非常に魅力的なツールであり、特に決済ではステーブルコインが魅力的なインフラになる。我々も積極的に実証を進めていきたい。
最終的には、金融インフラという土台の上に、エンターテインメントの事業が建つ形になる。エンタメのIPは、実は金融と密接につながっているという点が重要だ。
最後に木村氏は上野氏に、グローバルメーカーがブロックチェーンを採用して事業を進めるうえでの課題を尋ねた。
上野直彦
先ほどの補足になるが、ユーザーと直接つながるための投資は初期コストだ。今後3回目以降のSTがあれば、その仕組みを使ってユーザーとダイレクトにつながりたい。
自動車はこれから金融資産、金融商品になる。ロボタクシーもドバイなどですでに始まっており、その方向に進んでいくだろう。課題を挙げるなら、中古車販売大手の不正問題のような事態を二度と起こさない仕組みづくりだ。そのためには、自動車1台ごとにアカウントを持たせる仕組みが必要だ。8年かかっても10年かかっても構築すべきで、トヨタはそれを担うべき立場の会社だと思う。MONにもその使命がある。
地球上にはトヨタ車が1億台ほど走っているといわれ、そのすべてに持たせるのは途方もない話だ。それでも誰かが一歩を踏み出さなければならない。時間がかかっても実現させたいし、実現させなければならない。
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