ポリマーケットとは
予測市場とは何か
ポリマーケットは、選挙や経済指標、スポーツの結果といった現実世界の出来事に対し、「起きるか・起きないか(Yes/No)」の契約を参加者が売買するプラットフォームである。契約の取引価格は、そのまま出来事が起きる確率として読み取れる。
こうした仕組みはブロックチェーンを用いた「分散型予測市場」と呼ばれる。ただし、ポリマーケットの全てがブロックチェーン上で完結しているわけではない。
グローバル版では、注文の管理を運営側のオフチェーンのシステムが担い、約定とポジションの決済のみをポリゴン(Polygon)チェーン上で処理するハイブリッド型の構成をとる。
担保にはステーブルコインが用いられ、2026年4月28日以降は独自ステーブルコインの「Polymarket USD(pUSD)」へ移行した。約定や保有ポジション、決済までの記録がチェーン上に公開されるため、価格がどのように形成されたかを第三者が検証できる点が特徴だ。
一方、米国版の「Polymarket US」はブロックチェーンを用いない構成で運営されており、予測市場という仕組み自体がブロックチェーンを前提とするわけではない。
ポリマーケットの成り立ち
創業は2020年。シェーン・コプラン(Shayne Coplan)氏が、コロナ禍の情報混乱を背景に「偏りのない透明な事実抽出の仕組み」として構想し、同年6月に最初の予測市場を開設した。市場そのものも拡大しており、主要な予測市場プラットフォームの月間取引高は2026年7月に合計で約530億ドルへ達している。
情報インフラとしての広がり
ポリマーケットは、取引の場にとどまらず、世の中の見通しを測る情報源としても使われ始めている。2025年11月にはグーグルがGoogle Financeに予測市場のデータを統合したと報じられた。
2026年1月には米ダウ・ジョーンズと独占提携を結び、傘下の主要経済メディア上に予測データが表示されるようになった。ニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)も、機関投資家向けにこのデータを配信している。
予測市場という発想自体は新しいものではない。米アイオワ大学のティッピー・カレッジ・オブ・ビジネスが1988年の米大統領選を対象に開設した「アイオワ電子市場(Iowa Electronic Markets、IEM)」は、研究・教育目的で運営される実際の資金を用いた予測市場で、選挙結果の予測において世論調査を上回る精度を示した例が学術的に報告されてきた。
価格が社会に分散した情報を集約するという考え方は、経済学者フリードリヒ・ハイエクの知識分散の議論にさかのぼる。予測市場は投機の場としてだけでなく、情報集約の仕組みとして長く研究の対象になってきた領域である。
予測市場の仕組み
予測市場では、出来事の結果をめぐる「契約」が売買され、その価格が確率の目安として読み取れる。例えば「クラリティ法(H.R.3633、米国の仮想通貨市場構造法案)が2026年内に成立するか」という市場で、「はい(成立する)」の契約が17セントで取引されていれば、市場参加者全体はその実現確率を約17%と見込んでいることになる。
価格は取引のたびに動くため、表示される確率はあくまでその時点の見立てである。
クラリティ法の成立可否を対象とする市場の画面例。表示される%は、参加者が見込む確率の目安を示す(2026年9月8日時点)
「シェア」とは何か
結果ごとに「シェア(持ち分)」という契約単位がある。1シェアは、対象の結果が起きれば1ドル、起きなければ0ドルで決済される。価格は0〜100セントの範囲で動く。
価格が「確率」になる理由
1ドルで決済されるシェアが61セントで取引されていれば、市場全体としては約61%の確率を織り込んでいることになる。表示される「61%」は確定的な予測ではなく、参加者の資金が示す見込みにすぎない。
確率の合計が100%にならない理由
二者択一の市場でも、表示される確率の合計は100%ちょうどにならないことがある。各選択肢が独立した気配値で表示され、買値と売値の差(スプレッド)があるためだ。ただし差が大きく開けば、その差を取ろうとする売買が入って埋められていく。板が厚く取引が活発な市場ほど、合計は100%に近づく。
オーダーブック(板)とは何か
買い注文(ビッド)と売り注文(アスク)を価格ごとに並べた一覧。最も高い買値と最も安い売値の差がスプレッドで、注文が厚いほど価格は安定しやすい。
結果はどう決まるのか(決済)
各市場には「ルール(市場コンテキスト)」が定められ、何をもって結果が確定するかが事前に明記される。資産価格を対象とする市場は終了時刻の価格データで機械的に判定される。選挙結果など単一のデータ源で決められない市場では、分散型オラクル「UMA」上で結果が提案され、異議が出た場合にトークン保有者の投票で決着する。
※本節は予測市場という仕組みの一般的な解説であり、特定サービスの利用方法を案内するものではない。2026年8月時点で、日本のユーザーはポリマーケットの公式サイト上で取引できず、閲覧のみが可能となっている。
画面で読み解くポリマーケット
2026年8月時点で、日本のユーザーは公式サイト上で取引できないが、画面の閲覧(View only)はできる。ここでは実際の画面を例に、どこを見れば何が分かるかを整理する。操作の手順は扱わない。
観点① トップ画面:出来事が「確率」で並ぶ
政治・スポーツ・仮想通貨・経済など、カテゴリ別に「質問」の形をした市場が並ぶ。各市場に表示される%は、その出来事が起きる確率の目安を示す。どのテーマに資金と関心が集まっているかを一覧から読み取れる。
観点② 個別市場:確率の推移と決着のルール
個別の市場を開くと、確率の推移を示すチャートが表示される。同じページには「ルール(市場コンテキスト)」が明記され、何をもって「はい/いいえ」が確定するか、判定の根拠となるデータ元まで確認できる。
観点③ オーダーブック(板):確率がどう形成されるか
買い注文と売り注文が価格ごとに並ぶ。注文が厚いほど価格は安定しやすく、逆に板が薄い市場では少額の注文でも確率表示が大きく動く。表示されている確率をどこまで信頼できるかは、板の厚みから見当がつく。
観点④ コミュニティ:議論と大口の保有ポジションを追う
各市場には議論や大口の保有ポジションを示すタブがあり、参加者の見方を追える。誰がどちらの結果に資金を投じているかを追えるのは、記録がチェーン上に公開されているためだ。価格の数字だけでは見えない論点をつかむ手がかりになる。
予測市場の精度はどの程度か
予測市場について最も多い問いは「実際に当たるのか」だろう。予測市場は高い的中率で知られており、2024年の米大統領選では世論調査を上回る精度を示したとされる。ただし、精度の評価は調査によって幅がある。
どれくらい当たっているのか
ポリマーケットは自社サイトで精度の検証ページを公開している。決済済みの市場について、予測が実際の結果からどれだけ離れていたかをブライアスコア(Brier Score)という指標で集計したものだ。
値は0に近いほど精度が高く、すべての質問に「50%」と答え続けた場合は0.25になる。結果が確定する4時間前の時点で見た全体の値は0.0627だった(2026年9月8日時点)。
予測確率の帯ごとに、市場が示した確率と実際に起きた割合を並べたもの。決済の4時間前時点
つまり、市場が示す確率は実際に起きた割合とおおむね対応している。確率が20%と表示されていた市場のうち実際に起きたのはおよそ2割、80%の市場ではおよそ8割で、どの確率帯でも大きなずれは見られない。
精度を支えているのは誰か
ロンドン・ビジネススクールとイェール大の研究者によるワーキングペーパー「Prediction Market Accuracy: Crowd Wisdom or Informed Minority?」(2026年4月、SSRN)は、ブロックチェーン上に公開されたポリマーケットの2023年から2025年までの取引記録を全数分析した。172万アカウント、取引総額137億6,000万ドルにのぼる。
同研究は、予測市場が高い精度を示すこと自体は認めたうえで、その源泉を「群衆の知恵」ではなく「情報を持つ少数派」に求めている。統計的に実力を示せたのは全体の約3%で、この層が公開情報に素早く反応し、割安・割高を修正することで価格が実現する結果に近づいていくという整理だ。表示される確率は参加者全員の見方を平均したものではなく、情報の更新に反応した売買の積み重ねとして形づくられている。
どんな市場で精度が高いのか
研究チームは、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果公表と四半期決算という日時が確定した出来事で検証している。実力があると分類された参加者は、最終的に実現する側へ価格を動かし、発表直後の反応も他の層より速かった。
裏を返せば、精度は公開情報の処理速度に支えられている。参照すべき情報が乏しい市場、期限が遠く情報が更新されない市場、板が薄く少額の注文で価格が動く市場では、同じ精度は期待しにくい。表示された確率をどこまで信頼できるかは、市場ごとに見極める必要がある。
ポリマーケットの精度検証ページのデータもこれと整合する。ブライアスコアは市場の出来高帯ごとに示されており、取引が活発な市場ほど低い。取引高が100万ドルを超える市場では、決済1日前の時点で0.016前後まで下がる。スポーツのブックメーカーが長年達成してきた0.18〜0.22という水準と比べても桁が違う。
出来高帯ごとのブライアスコア。値が小さいほど精度が高い
全体の0.0627には、ほぼ結果の決まった市場も含まれている。誰が予測しても当たるぶん、値は低く出る。算出根拠のダッシュボードには、確率が99%を超える市場と1%を下回る市場を除いた数値もあり、そちらは0.12前後だ。予測が割れている市場では、こちらが目安になる。
(出典)ポリマーケットの精度検証ページ、および同ページが算出根拠として挙げるDune上の公開ダッシュボード。数値は2026年9月8日時点。
ポリマーケットの規模と資本背景
取引高はどこまで伸びたか
前掲のワーキングペーパーによると、月間取引高は2023年12月に330万ドルだった。そこから2年余りで桁が変わっている。ただし伸びは一本調子ではない。2024年11月の米大統領選で取引は急増し、投開票直後には1日あたり4億ドル近くに達したが、その後は大きく落ち込んだ。2025年半ばから再び増加に転じている。
2026年4月の月間取引高は米国版を含めて約103億ドルで、前月から約9%減った。8カ月続いた増加が止まった形である。同社は4月28日に実施した取引基盤の刷新で一時的に取引が止まったことを理由に挙げたが、同月に取引した利用者数も約73万人から約64万人へ12%減っている。
その後は再び持ち直し、2026年6月には国際版が108億ドルと過去最高を記録。米国版と合わせた取引高は約133億ドルに達した。なお予測市場の主要3プラットフォーム(カルシー、ポリマーケットの国際版と米国版)の月間取引高は、2026年7月に合計で約530億ドルへ達している。
ICEによる出資と評価額
資本面では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)が支援する。
ICEは2025年10月7日、最大20億ドルを出資すると発表。出資前の企業価値は約80億ドル、出資後は約90億ドルとされた。2026年3月27日に実施された6億ドルの現金出資はこの枠内での払い込みであり、別枠の追加出資ではない。
評価額はその後も上がっている。2026年4月に完了したラウンドでは約150億ドル、8月末には1789キャピタルなどから約10億ドルを調達して約210億ドルと報じられた。ICEは2025年10月以降で計26億ドルを投じ、発行済み株式の約22%を持つ筆頭株主になったとされる。
ただし直近のラウンドについては、交渉が継続中で未完了とする報道もある。
出資の狙いは株式の取得そのものよりデータにある。ICEはポリマーケットのイベント駆動型データを機関投資家へ独占的に配信する立場を得ており、既存の市場データ事業に予測確率という新しい層を重ねる構図になっている。ポリマーケットの収益源も、2026年3月に導入したカテゴリ別の取引手数料、市場に預けられたステーブルコイン担保の運用益、そしてこのデータ配信の三つが柱とされる。
運営会社の概要
| 名称 | Polymarket(ポリマーケット) |
|---|---|
| 創業 | 2020年6月/米国・ニューヨーク |
| 創業者・CEO | シェーン・コプラン(Shayne Coplan)氏 |
| 基盤 | グローバル版(polymarket.com)はポリゴン(Polygon)チェーン上で稼働。担保は2026年4月28日以降、独自ステーブルコインの「Polymarket USD(pUSD)」を使用(従前はUSDC)。米国版(Polymarket US)はブロックチェーンを用いない構成 |
| 米国での体制 | QCX LLCが2025年7月9日に指定契約市場(DCM)の指定を取得。ポリマーケットは同月、QCX LLCと清算機関QC Clearing LLC(総称QCEX)の持ち株会社を1億1,200万ドルで買収し、2025年12月に「Polymarket US」としてサービスを開始 |
| 主な出資者 | インターコンチネンタル取引所(ICE、ニューヨーク証券取引所の親会社)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、ゼネラル・カタリスト(General Catalyst)、ポリチェーン・キャピタル(Polychain Capital)ほか |
主な出来事
QCX LLCへのDCM指定は7月9日、買収完了は同月21日。米国向けサービスの開始は同年12月。
米プロスポーツリーグと連邦機関の覚書としては初の事例。八百長リスクのある市場を共同で制限する枠組みも設けた。
オラクル「Pyth」を統合し、金・銀や米国株などの伝統的金融資産へ拡大。照合エンジンを刷新し、4月28日には担保を独自ステーブルコイン「Polymarket USD(pUSD)」へ移行した。無期限先物への参入も予告した。
評価額やIPOの時期などを対象とし、判定データはナスダック・プライベート・マーケットから独占的に取得する。
3日に開始。ビットコインやブレント原油、金・銀、米国株や指数などを対象とし、開始時の10市場から67市場へ拡大した。レバレッジは最大20倍。米国のユーザーは対象外で、Polymarket US側では提供されない。
(出典)2023年12月の数値は前掲ワーキングペーパー。2026年3月以降の数値はオンチェーンデータの集計に基づく報道および同社提供データ。主要3プラットフォームの合計はThe Blockの集計による。ICEの出資条件と評価額は同社の公式発表および報道による。
※本記事は、予測市場およびポリマーケットに関する情報提供・解説を目的としたものであり、特定のサービスの利用や取引を勧誘・推奨するものではありません。記載内容は2026年9月8日時点の公開情報に基づきます。
※2026年8月時点で、日本から公式サイト上でポリマーケットの取引はできず、閲覧(View only)のみが可能です。CoinPostは日本のユーザーに対し、本サービスの利用を推奨しません。
※規制・法的評価および提供状況は変動します。日本での提供状況に変更があった場合、本記事の内容を見直します。最新の状況は、公的機関の公表情報等をご確認ください。



WebX完全ガイド
TOP
新着一覧
取引所
WebX












