- 官邸主導「サイバー対処本部(仮称)」設置が柱
- 欧米の2030〜31年移行を踏まえPQC移行を加速
官邸主導の対処本部設置を提言
自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部(本部長:平将明衆院議員)がまとめた「サイバーセキュリティ対策の抜本的強化に関する提言」が22日、党の政調審議会で了承された。柱は官邸主導の「サイバー対処本部(仮称)」の設置。不正に取得された仮想通貨の追跡や、耐量子計算機暗号(PQC)への移行加速も盛り込んだ。
提言は同本部が20日付で取りまとめた。国内企業へのサイバー攻撃と個人情報の流出が相次ぐ現状を「サイバー有事前夜」と位置付けている。生成AIの普及で攻撃の自律化が進んでいる点も指摘した。AIが脆弱性を自動で突き、防御側の処理能力を超える規模で一斉に仕掛ける「AIのサイバー飽和攻撃」について、近い将来に現実になると警告している。
政府全体に対しては、対処本部を司令塔とし、重大な被害が出た際には速やかに本部会議を開くよう求めた。上場企業の経営層には平時からの体制構築を促す。ホワイトハッカーなど民間の高度人材を市場価値に見合う待遇で迎えられるよう、公務員の人事・給与制度を新設することも挙げた。
次世代AIの悪用リスクと米AI企業連携
国家サイバー統括室(NCO)向けの項目では、次世代AIモデルの悪用によって攻撃の自律化・高度化が進むリスクを、いわゆる「Mythos問題」と表現した。対抗策として、防御側もAIで脆弱性の早期発見と対応を進める「Project YATA-Shield」を推進し、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)と連携する方針を示している。
オープンAIやグーグルなど米国の主要AI事業者との直接の連携窓口を設けることも求めた。政府機関の情報システムの点検にAIを使い、脆弱性診断を迅速化する狙いだ。AISIに対しては、AIによる診断にとどまらず、脆弱性の修正(パッチ適用)の自動化・自律化の確立を目指すよう求めた。
仮想通貨の追跡と耐量子暗号への移行
仮想通貨に直接触れた記述は警察庁の項目にある。FBI(米連邦捜査局)やユーロポールなど各国の法執行機関との国際共同捜査に、主導的に参画するよう求めた。犯罪者が使う指令サーバーなどのインフラの無害化と、不正に取得された仮想通貨の追跡を積極的に実行し、日本を狙う攻撃は割に合わないと示す抑止力を発揮すべきだとしている。
NCOには、PQCへの移行を急ぐよう求めた。欧米主要国は影響の大きいシステムを2030年から31年頃までに移行するとされる。これを踏まえ、政府機関でも優先度の高いシステムについて早期の期限を定めるべきだとした。総務省には、量子暗号通信(QKD)をPQCと組み合わせた二重の防護技術として、社会実装を急ぐよう提言している。
PQCは、量子コンピュータが実用化されても解読が難しいとされる暗号方式の総称。現在広く使われている公開鍵暗号は将来の量子コンピュータで破られる恐れがあり、ビットコイン(BTC)の電子署名にも同様の課題が指摘されている。
デジタル庁の項目では、情報漏洩に強く改ざん耐性のある「web3時代のトラスト基盤」として、分散型ID(DID)と検証可能なクレデンシャル(VC)の有用性を検証するよう求めた。2027年4月には犯罪収益移転防止法などに基づき、対面の本人確認でマイナンバーカード等のICチップ読み取りが義務化される。これを踏まえ、民間でのカード活用の加速と、カード取得の義務付けの検討も盛り込んだ。
金融庁などに対しては、金融機関が経営陣の関与の下で、5月22日の要請文に示した「短期的な対応」を着実に進めるよう促すことを求めた。業界横断のサイバー演習や、金融機関が脅威情報を共有する金融ISACを通じた取り組みの強化も挙げている。
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