「過去10年のあらゆる金融商品で最大のリターン」著名アナリストPlanB氏が語るビットコインの資産価値
S2Fモデル考案のPlanB、匿名でカンファレンス参加
著名アナリストのPlanB氏がオンラインカンファレンスのSALT Talksに登壇、仮想通貨(暗号資産)ビットコインのポテンシャルやリスク、また量的緩和(QE)に伴うインフレヘッジとしての有用性について語った。
ツイッター上で17万人フォロワーを持つPlanB氏は自身の考案した「ストック・フロー比率」で定評があるが、表の顔はオランダの機関投資家。現在も数十億ドル(数千億円)規模の資産を運用する投資チームの投資マネージャーを務めている。
投資家向けのTED Talkとも言えるSALT Talksは、過去には米国のブッシュ元大統領やクリントン元大統領をはじめとする政治・経済のリーダーをホストした事もあるが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で初のオンライン開催となり、PlanB氏が参加する形となった。
「過去10年間で最もリターンの高い資産」
PlanB氏は、「ビットコインは過去5年〜10年間のスパンで見ると最もリターンが高い金融資産だ」と説明。グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)の総称である”GAFA”株や10年物国債のリスク(ボラティリティ)とリターンを比較し、ビットコインが最もリターンが大きいとした。
またPlanB氏は、過去25年間にみてきた資産の中でビットコインは最も高いシャープ比率(レシオ)を持つと発言。一般的にシャープ比率は1.0を超えていると優秀な資産と判断されるが、ビットコインの同指標は2.5もの高水準にあり、極めて優良な資産だと指摘した。
シャープレシオとは
投資リスクに対しどれだけ収益が見込まれるかを示す指標で、投資信託を選ぶときの指標の一つ。リスクの無い債券(bond)と比較してどれだけの収益があるかを可視化したもので、1963年にウィリアム・シャープ氏によって考案された。
ビットコインのリスクとして一般的に挙げられる高いボラティリティさえも上回るリターンを持っていることから、高い価格変動率のリスクをかき消すほど魅力的だとしている。
過去10年間の金や不動産など(他の希少資産)と比較すると、ビットコイン価格はこれからさらに10〜20倍上昇してもおかしくはない。来年のクリスマス前にBTC価格が10万ドル以上いくこともあり得る。過去そのような信じられないような値動きは3度も起こっている。
さらに、20年5月の半減期以降に価格上昇が発生しているとも説明。4年ごとにブロックの採掘に伴う新規発行数が減少する仕組みが、必然的に供給量を限定することから、「これまでにない希少な資産」と形容した。
ビットコインのリスク
その一方でビットコインに最も影響を与えかない外的要因についてもPlanB氏は解説。以前17万人以上いる自身のフォロワーを対象に行ったアンケートでは、以下のような結果が出たという。
- 政府による規制:34%
- 量子コンピューター:21%
- マイニングの中央集権化(中国):18%
- ソフトウェアのバグ・ハッキング:14%
- デリバティブ・先物取引:7%
- フォーク・「新しいより優れたビットコイン」:5%
最大のリスクとして挙げられたのが「政府による過度な規制」だ。
PlanB氏は、各国政府はデジタル通貨に対しても否定的だったと述べ、Facebook主導のリブラも同じ状況にあると説明した。対照的にビットコインはサトシ・ナカモトが匿名であることなどから、政府がネットワークをシャットダウンすることは不可能であると指摘した。
また2位にランクインする仮想通貨の「秘密鍵」解読のリスクが懸念される「量子コンピューター」については、大きな懸念ではないと発言。
一般的に量子コンピューターによる有用なユースケース実現は、2025年〜2035年に起こると予想されているが、仮想通貨及びビットコインの前に世界の銀行システムに対するリスクの方が勝るとして、プライベートキーのハッキングを懸念するには時期尚早との見解を示した。
量的緩和に対するヘッジ
2008年の世界金融危機以降、経済再生の主要政策として量的緩和(Quantitative Easing)が実施されてきたが、これに変わる「Plan B」(代替案)としてビットコインを推奨するPlanB氏。
同氏は、2013年にビットコインのホワイトペーパーを読み、まず着眼したのが仮想通貨特有の「最大発行量」が2100万枚に定められていることから起きる希少性だという。
量的緩和による将来的な法定通貨の価値低下リスクなどを受け、これまで投資家や企業は資「金や不動産」など希少性の高い資産に目をつけてきた。PlanBは、その中でもビットコインの需給面に注目。さらなる価格上昇につながると考えている。
直近では、米NASDAQ上場企業のMicroStrategy社が企業資金をビットコインに投じて大量保有に踏み切った。同社株の保有は間接的に仮想通貨へのエクスポージャーとなるからPlanB氏は「実質的なビットコインETF」と形容する。またグレースケール社などのビットコインなどの仮想通貨投資信託などの提供により、大手企業の参入障壁は減少している。
MicroStrategy社のMichael Saylor会長は、量的緩和(QE)から発生するインフレで株や債権などの価値減少を危惧、「ビットコインを主要な予備資産として使用すべき」と言及している。
関連:下落トレンド否定のビットコイン大幅反発、MicroStrategy会長「すべての企業財務はBTCを予備資産に組み入るべき」
依然として米証券取引委員会(SEC)による「ビットコインETF」の認可が下りない状況にあるが、同氏は仮想通貨の規制面でも楽観的な観測を述べている。
車が発明された当初、歩行者のリスクを懸念するあまり「車の先頭に赤い旗を持った人が歩かなければならない」という信じられない法律が米国にあった。新しい技術には自ずと愚かな規制が伴うが、最終的にはより合理的な規制へと改善されていくものだ。
参考:SALT Talks
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します