イタリア、デジタルユーロの実証実験開始

2つの方向でデジタルユーロを検討

イタリア銀行協会(ABI)がユーロ圏の中銀発行デジタル通貨である「デジタルユーロ」の実験を開始した。

ABIは700以上のイタリアの銀行機関から成り、今回のデジタルユーロ実験は、希望するすべての銀行が参加できるものとなる。

実証実験の目的には、「イタリアで事業を行う銀行が将来のシナリオに備えやすくすること」や「分散型元帳テクノロジー(DLT)ブロックチェーンに基づくデジタルユーロの技術的実現可能性を実証すること」などが挙げられた。

実験プロジェクトは2つの分野で行われる。1つ目は、インフラストラクチャと流通のモデルについて、技術的な実現可能性を分析すること。2つ目は、デジタルユーロをすでに存在している電子決済と区別できるユースケースを試すことだ。

1つ目の分野については、すでにイタリアに100のアクティブノードを持つブロックチェーン・インフラストラクチャを活用しているとした。

イタリアでは「Project Spunta」という、銀行間決済におけるミスマッチの解消を目的にしたプロジェクトが実施されており、R3社のCordaブロックチェーンを利用して銀行間で取引を自動照合することが行われている。

この「Project Spunta」を開発したNTTデータ(イタリア子会社)や、コンサルティング企業PwC、テクノロジー企業Replyも今回のデジタルユーロ実験の参加メンバーだ。

関連:R3社ブロックチェーンCorda、イタリア全銀行で大規模導入

デジタルユーロの本格立ち上げ検討は2021年

ABIはデジタルユーロ発行を検討することの戦略的理由として、「ヨーロッパ経済のデジタル化をサポートすること」や「民間のデジタル通貨、あるいは他国の中央銀行によって発行されたデジタル通貨が広範に普及した場合、効果的に対抗できるようにすること」を挙げた。

どちらも、欧州中央銀行(ECB)が提唱しているもので、「民間のデジタル通貨」は主にFacebook主導のステーブルコイン計画、「他国のデジタル通貨」は中国が進めるデジタル人民元計画を念頭に置いたものとみられる。

12月にECBの責任者が発言したところによれば、デジタルユーロのプロジェクトを本格立ち上げするかどうかは、2021年半ばに検討する予定だという。ただ国際的にCBDCが使われる場合、資本フローを管理することが難しくなるなど検討すべき課題もあり、プロジェクトを立ち上げても、すぐに発行を決定する訳ではないとしている。

関連:デジタルユーロ、2021年中に方針決定

フランスではテゾスのブロックチェーンを実験に導入

デジタルユーロの実験はフランスでも行われている。2020年5月にも4000万ユーロ分のカバードボンド(裏付けとなる資産がある債券)をセキュリティトークンとしてブロックチェーン上で発行、債券の決済をデジタルユーロで行なった。

また、7月にフランスの中央銀行は、ソシエテ・ジェネラルを実験に携わる事業者の一つとして選定。ソシエテ・ジェネラルは、実験に活用するブロックチェーンに「テゾス」のチェーンを選択した。有価証券におけるデジタル決済と受渡しを、デジタルユーロで行う方法などを探るという。

デジタルユーロを発行する場合、どのブロックチェーンを採用するかについても現在EU各国で手探りしている状況が窺える。

関連:フランスのデジタルユーロ実験、テゾス(XTZ)ブロックチェーンも参画へ

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