イタリアの銀行間決済にCordaを採用
SBIホールディングスと提携するブロックチェーン開発企業、R3社のDavid E. Rutter CEOが、米メディアCNBCの金融番組に出演、「2020年は、イタリアの銀行システムすべての銀行間決済をCordaブロックチェーン上で行う。何億件もの取引がCorda上で処理される。」と明らかにした。
🔥 "The entire Italian banking system will be on Corda for inter-bank payments this year"
— 🌹Roses On The Moon🌹 (@RosesOnThaMoon) January 8, 2020
– David E. Rutter, CEO of R3
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2020年3月からの運用を想定
SBI R3 Japan ビジネス開発部長の山田宗俊氏は、コインポストの取材に応じ、次のように背景を語った。
今回のCordaブロックチェーンの採用は、イタリアの「Project Spunta」によって準備されたものだ。「Project Spunta」は、銀行間決済におけるミスマッチの解消を目的にしたプロジェクトである。
2017年12月から2年以上継続しており、ABI(the Italian Banking Association)と呼ばれるイタリアの「全銀協」が推進し、NTTデータ(イタリア子会社)が設計・開発を手掛けている。
イタリアでは、日本の全銀ネットのような集中型システムが存在しないため、各銀行が独自のフォーマット、業務フローで取引を処理し、台帳管理している。しかも銀行間のコミュニケーションは電話やEメールが主流である。
そのため、銀行間において取引内容の不一致が避けられず、結果として決済に時間が掛かってしまっている。
このような課題は、異なるエンティティが別々に維持する台帳を論理的に一元管理する目的で開発されたCordaにとって「完璧な」ユースケースと言える。
今回の取組みにより、フォーマット、プロセス、ルールを共通化し、取引の自動マッチングを実現する。
2020年3月からの本番運用を想定しており、1年分の取引量に相当する2億件のテスト取引も完了しているという。
日本での大規模採用は可能か
日本でも、このようなシステムが採用されることが可能かについて、山田氏は続けて以下のように説明した。
日本とイタリアでは既存レガシーシステムの成熟度が異なるため、この仕組みをそのまま日本でも応用出来るとは言い切れない。
しかし、このユースケースに含まれるエッセンス、すなわち企業間でサイロ化(独自の環境として孤立)された台帳が個別管理されている状況は、金融・非金融に限らず様々な業界で共通しており、現場レベルでは課題認識もしている。
山田氏は続けて、「ブロックチェーンは決して”課題を探しているソリューション(A solution looking for a problem)”ではない」と、ブロックチェーンには課題解決能力があることを確認する。
「問題は、ブロックチェーンを個社だけでは導入出来ない(導入しても意味がない)と悟った時点で、課題がそのまま放置されてしまうことだ(A problem waiting for a solution)」という。
この点、イタリアでは銀行の連盟組織であるABIが銀行を主導することで、長い道程の果てに目標達成に辿り着こうとしている。
日本でも同様に、国や業界団体が主導してコンソーシアムを形成し、民間である個社だけでは解決出来ない課題に対し、全体から最適な視点で取り組む必要がある。少なくともまずはスタートラインに立つべきだ、と山田氏は強調した。
25か国70社を超える大規模試運転も
R3社は昨年末、Corda上で大規模な貿易金融試験を完了している。Cordaを基盤とするコンソーシアム、Marco Poloのプラットフォーム上で売掛金金融商品に焦点を当てたものだった。
試運転には、日本のSBIホールディングスなどの金融大手を含む25か国70社を超える組織が参加し、最大規模の国際的なトライアルとなった。金融サービス、情報技術、通信、物流、海事産業、不動産、ホスピタリティ、自動車産業など様々な分野から340以上の企業関係者らが参加した。
トライアルは7週間にわたって行われ、試験に伴って実施されたアンケートによると、回答者の100%が、ブロックチェーンに基づく貿易金融と運転資本ツールは、売掛金の割引プロセスを加速し、銀行と企業の両方のコストを削減する可能性があることに同意した。
また、回答者の75%は、5年以内にこうしたプロセスが実際に導入されると予測していた。イタリアでの大規模導入という前例が出来たことで、これからCordaの採用が促進されそうだ。