FOMCの早期テーパリング示唆で金融市場は軟調、ビットコインのデッドクロス迫る中
ビットコイン相場と金融マーケット
米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、米経済回復を背景に「量的緩和の縮小(テーパリング)」について議論を始めることを明らかにした。
金融引き締め(利上げ)の開始時期の議論については「現時点では、極めて時期尚早」と改めて述べたが、FRBによる金利予測分布図(ドットチャート)の予想中央値では、「2023年末までに2回の利上げを見込んでいる」ことを示した。市場もある程度織り込んでいたことではあるが、従来よりも約1年前倒しされたことになる。
米金融当局は、過去の教訓から軟着陸を図ってはいるものの、過去類を見ない規模で行った金融政策の正常化は今後避けて通れぬ道であり、今回は議論を始める時期を示唆したに過ぎない。毎月発表される米雇用統計や消費者物価指数(CPI)の動向を含め、要人発言や経済指標など、ふとした弾みで金融市場が動揺するような不安定な情勢は、今後も長引くことが想定される。
FOMCを受けて米長期金利が上昇し、ダウ平均は前日比0.77%安の265ドル安に。東京株式市場では、日経平均株価は前場時点で前日比1.31%安の384円下落した。
15日までに回復基調にあったビットコインなど仮想通貨市場も上昇を一服すると、FOMCへの警戒感などから昨日より反落。16日3時頃に直近高値の41,322ドルを付ける場面もあったが、41,000ドル付近では上値の重さが目立つ格好に。17日8時頃にかけて38,100ドルまで値を下げ、その後やや持ち直している。
日足のデッドクロス間近
3年前の相場同様、このまま仮想通貨バブル崩壊となるのか、あるいは強気トレンドの回帰は可能か否か市場の見解が別れる中、日足の50日(中期)移動平均線と200日(長期)移動平均線の「デッドクロス」が迫っている。このまま推移すれば、6月下旬に形成される見込み。(上図:①)
関連:「仮想通貨バブル崩壊か、強気トレンド継続か」ビットコインなど大幅反発も市場の見解別れる
単純移動平均線(SMA)は、株式市場など他の相場分析でも利用される最もよく使われる指標である。デッドクロスは、上昇の後に生じる現象で、長期的な値動きに対して、短期的な値動きが強く下落している場合に出現する売りシグナルのひとつ。
以下のチャートは、2017年〜2019年夏頃までのビットコイン/米ドルの日足のチャートだが、デッドクロスは売りシグナルを、ゴールデンクロスは買いシグナルを示唆していることがわかる。
2019年の強気相場でも、19年6月に14,000ドルに達した後急落。19年10月下旬にデッドクロス(下図:赤丸左)を付けた後、同年12月には6,400ドル台まで下落した。
デッドクロスから続伸し続けた例も
一方、20年3月のコロナ・ショック時は、底値の1BTC=3,800ドル台から7,000ドル弱まで回復した時点で、移動平均線がデッドクロス(下図:赤丸右)を形成した。
しかし、歴史的暴落からすでに底打ち反転していたことに加え、米国の大規模金融緩和やビットコイン「半減期」の材料を手掛かりに20年5月にかけてBTC価格は大幅続伸。そのままゴールデンクロスを形成すると、同年夏の第一次DeFi(分散型金融)ブームを経て、年末の大相場へと繋がった。
このように、必ずしも一つのシグナルで相場動向を決するものではなく一概には言えないが、抑えておきたい指標の一つと言える。
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PanteraCapitalの最高経営責任者であるダン・モアヘッド氏は、14日発行のレターの中で大口の売り圧力は鈍化していると指摘。過去11年間の指数関数的トレンド・チャートを根拠に、「パニックが沈静化したタイミングは、買い場となり得る」と、強気の見立てを示している。
直近では、エルサルバドルの法定通貨法案可決など好材料を背景に二番底を付け大幅反発しており、42,000〜43,000ドルを上抜ければ、強気トレンド再開の目も見込まれる。
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