イーサリアム考案者のヴィタリック氏、ロンドンHFのメリットを解説 10億円相当の手数料がバーン
ヴィタリック氏、ロンドンアップグレードを解説
5日夜に大型アップグレード「ロンドン」を無事完了した暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の考案者であるヴィタリック・ブテリン氏がガス代改善案などを盛り込んだ「EIP-1559」について、ブルームバーグのインタビューで見解を披露した。
昨日21時半過ぎに実装した「ロンドン」アップグレードについて、ブテリン氏は以下のようにコメントした。
EIP-1559はロンドンの中で最も重要な部分だ。
(ロンドン・アップグレード)はイーサリアム・エコシステムが重大な変更を行える証でもある。
EIP1559とは
EIPはイーサリアム改善案の略。以下の変更を加えることでネットワークの混雑解消、ガス代の低下などを図る。
・イーサリアムの第一価格オークション方式を廃止して、固定価格販売メカニズムを導入
・ブロック容量を倍増、取引量に応じて容量を変更するシステムに変更
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また、ロンドンハードフォークが完了したことで、PoSへの移行についてさらに自信が持てるとブテリン氏は述べ、長期的にはイーサリアム・ネットワークの電力消費量を99%削減する布石が整ったとした。
イーサリアムの消費電力99%削減
イーサリアムの開発に携わるイーサリアム財団は5月、PoS移行後にはイーサリアムの消費電力は現在の99.95%以下になると予測するレポートを公開。現在、PoWを採用しているイーサリアムは米国の一般家庭2,100世帯分の消費電力に相当する2.62MWのエネルギーを消耗しているが、ETH2.0移行後には現在の2,000分の1以下になるという概算を発表した経緯がある。
なお、調査を担当したBeekhuizen氏によれば、調査は正確なデータに基づいたものではないため、あくまで大まかな見積もりであると付け加えている。
関連:ETH2.0移行後は消費電力が99%削減か=イーサリアム財団の調査
オークション方式変更の背景
イーサリアムのガス代の支払いメカニズムの変更により、マイナーへの『ベース・フィー』がバーン(焼却)されるため、一部ではイーサリアムのデフレ資産化が期待されている。執筆時点では約3,200ETH(約10億円)がバーンされている。
バーンとは
仮想通貨のバーンは、株式の「自社株買い」に近い供給量を減らす仕組み。自社株買いをする企業は、発行している株式を自分たちのお金で買い戻す。買い戻されると市場に流通する株数が減少することで一株あたりの価値が向上し、株主に対してプラスの影響を与える。バーンをすることで、需要と供給の影響で、流通するETHの一枚あたりの価値が高まることになる。
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これまで需要に応じた変動性(オークション方式)がとられていた手数料モデルの代わりに、基本手数料(ベースフィー)とチップ(プライオリティフィー)という仕組みが新たに導入され、ベース・フィーとして支払われる手数料がバーンされる新システムに移行した。
EIP-1559の主な目的は、イーサリアムネットワークを利用する上で「いくら手数料を支払えばスムーズに取引できるか?」といった不透明な手数料のシステムに、ネットワークの混雑状況に応じてアルゴリズムで決定される「基本手数料」を設けることで支払うべき手数料が明確にすることだが、支払われた手数料がマイナーの収益になるのではなく、バーンされる仕組みとなっている。
取引処理の優先度を決めるのは、前述したマイナーに対するチップ(プライオリティフィー)が役割を担い、優先的に取引を処理する基準となっている。
メリットとしては、手数料を固定化し、バーンすることで、マイナーが意図的にガス代を釣り上げることが困難になることだ。それには、①想定以上の手数料高騰の抑制や②手数料バーンに伴うデフレ資産性へ近づく点がある。
ブテリン氏によれば、2013年当初にイーサリアムのホワイトペーパーを書いた際にはイーサリアムの供給量はビットコイン(BTC)同様、一定量に定められていた。しかし変更の余地はあり、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)への移行は当初から予定されていたと説明。PoS移行後はイーサリアムの経済システムが変更されると語った。
また、ガス代のオークション方式の変化の背景には2018年、参加した米コーネル大学での経済カンファレンスがあったと言及。当時イーサリアムで導入されていた第一価格オークション方式の非効率性に関する講義を聞いたといい、現在はEIP-1559が実装された影響でそのシステムは廃止となったという。
ETHマイナーの収益は、ブロック報酬+チップ(プライオリティフィー)に変更されるため、これまでETHマイナーの収益性に占める手数料の比率が高かったことなどを加味すれば、現時点での収益性は減少していると考えられるだろう。
イーサリアムのバーンの影響
また、投資家としての疑問になると思われるイーサリアムのバーン量は、ネットワークの取引状況に依存する。
今回のハードフォーク後のイーサリアムの新しい手数料システムは、ベース・フィーがネットワークの混雑状況に応じて変動。これまでは、混雑状況をユーザー側が判断して手数料を設定していたが、これをアルゴリズムが実行する仕組みになった格好だ。
実際のバーン量を見ていくと(午前10時41時点)、ロンドンハードフォークの実行ブロックから現在までの1ブロックあたりのバーン量は平均1.069ETHだった。現状のペースを維持すれば日別では(1日:5760ブロック)約6,157.44ETHがバーンされる見込みとなる。
日本円の換算で1ブロック辺り約328,000円相当、1日辺りでは18.8億円に上る計算となる。
ハードフォーク前のイーサリアムネットワークは過去24時間で59.7億円相当であったことを考えると、これまでの供給量から計算して約30%ほどバーンによる供給量の減少が影響する可能性も出てくる。
現時点ではまだ24時間のデータが取れていないため、ベース・フィーの変動率やトランザクション処理の状況、ハッシュレートへの影響など参考データに乏しい状況があるが、現時点ではイーサリアムの供給量減少への影響は投資家から重要視される水準で推移しているといっても過言ではないほど大きな比率になっている。
一方、大規模なバーンが長く続かない意見もみられた。DeribitのリサーチャーHasuはブロック容量(利用量)が減れば、バーンされるフィーも減ると指摘した。
また、現在バーン量が最も発生しているプラットフォームは、OpenSeaとUniswap V2だ。
ブロックサイズの変更
さらに、ブテリン氏はブロック容量の変更についても解説。以前はブロック容量は一定値で固定されていたが、EIP-1559では、ネットワークのトランザクション状況によってブロック容量の増減が可能に。
過去にはブロック容量がトランザクションを処理しきれず、ネットワークが渋滞する事例が発生。ガス代も急騰する場面もあったが、次のブロックで取引が処理されやすくなったことで、ユーザー体験の向上につながるとブテリン氏は述べた。
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