墺政府機関も参画する実証実験「Cycle4Value」とは サイクリングの習慣化にブロックチェーン技術は貢献しうるか?
環境配慮型プロジェクト
Jeluridaが開発するArdor(アーダー)ブロックチェーン上には、消費電力を抑えるPoSコンセンサスプロトコルを活用した、サステナブルかつ環境配慮型のプロジェクトが複数存在している。
本稿では、サイクリングの推進を目的として、ゲーミフィケーションによる報酬モデルを研究し、実証試験も行われているケースの一つとして、Cycle4Valueを取り上げる。
Cycle4Valueとは
ブロックチェーンベースのゲーミフィケーションプロジェクト「Cycle4Value」は、Ardorブロックチェーンを使い、定期的なサイクリング活動に報酬を付与するモデルを提示している。
Cycle4Valueは、Ardorのチャイルドチェーン「Ignis(イグニス)」上に実装。Ignisは、Ardorプラットフォーム上の全てのトランザクションタイプおよび機能が利用できるよう設計されており、パーミッションレス型で制限のない分散型チェーンとして機能している。
Cycle4Valueプロジェクトには、サイクリングアプリ開発の「BikeCitizens」、オーストリア政府機関の「オーストリア研究振興機構(FFG)」など、主に4つのパートナー機関が参加。エネルギー効率の高いPoSブロックチェーンであるIgnisと、環境にやさしい自転車を移動手段として融合することで、環境汚染の軽減、サステナブルなモビリティ(人やモノの移動手段)の実現に取り組んでいる。
関連:NFTやブロックチェーンゲームなどの開発が活発化、アーダーエコシステム概説
ゲーミフィケーション応用の報酬モデル
このプロジェクトが従来のインセンティブモデルと異なる点は、サイクリングがもたらす経済的・環境面・健康面での利益が収益化につながることだ。
Cycle4Valueには、オーストリア・ドナウ大学の「Center for Applied Games Studies(ゲーム応用研究センター)」がパートナー機関の一つとして参加している。同センターはCycle4Valueのプロジェクトマネジメントとして、ブロックチェーンソリューションの開発を担当する。
2021年7月からは、オーストリアのグラーツとクレムスの2都市で実証試験が行われており、システムのユーザビリティ、受容性、スケーラビリティなどが分析されている。現在、クレムスのカフェ、グラーツのコーヒーショップといった提携店で、「Cycleトークン」がヘルシー飲料や軽食のクーポン券として交換されている。
関連:サステナブルなエコシステム構築を目指すアーダー(Ardor)、南米などでのユースケース解説
Cycleトークンとは
このプロジェクトにおいて、経済的・健康的メリットがシンプルで分かりやすい形として報酬されるのが「Cycleトークン」と呼ばれる仮想通貨だ。
CycleトークンはユーティリティトークンとしてIgnisチェーン上に実装され、スマートコントラクトを介してサービスや商品と交換することが想定されている。
「BikeCitizensアプリ」と呼ばれるデジタルウォレットに保存されたCycleトークンは、アプリ内に設置されたマーケットプレイスで払い戻しも可能となる。
オーストリア政府機関が推進
Cycle4Valueプロジェクトは、イノベーション推進プログラム「Mobility of the Future」の一環として、オーストリア連邦気候保護省から資金提供を受けたオーストリア研究振興機構(FFG)が運営している。ヨーロッパの主要な自転車アプリの一つであるBike Citizensは、ドナウ大学クレムス校、Verkehrsplanung、Seewald Solutionsなどの技術パートナーと協力して、Cycle4ValueプロジェクトをBike Citizensアプリに統合している。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します