日本取引所グループ、ブロックチェーン技術関連の中期経営計画を公開
ブロックチェーン技術も活用
日本取引所グループ(JPX)は3月31日、2024年度までの中期経営計画を発表した。ブロックチェーン技術を用いたデジタル証券に関する複数の方針を盛り込んだ。
今回発表された中期経営計画は、2030年までの長期ビジョン(下記)の実現に向けた準備を進める第1ステージとして位置づけられるもの。
- 幅広い社会課題に、資金調達・資金循環機能をはじめとしたソリューションを提供する
- グローバルな総合金融・情報プラットフォームへと進化し、持続可能な社会と経済発展の実現に貢献する
中期計画の軸である「マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現」では、「デジタル化・情報利用の高度化」を施策の1つに挙げ、「2024年度末までに市場創設、当該市場での新商品取扱い開始」を目標としたデジタル証券市場の創設に加え、「3か年で3件」を目標としたデジタル技術を活用した新規サービスの開発等に取り組むことを表明した。
また、日本におけるカーボン・ニュートラルの実現に向けたグリーン戦略の推進も計画しており、「市場メカニズムを活用したサステナビリティの推進」の一環として、デジタル証券を活用した「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に関する検討をしていくことも示した。
なお、「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」とは、22年2月にJPXが発表したデジタル環境債のこと。これまでの環境債で発行体・投資家双方で課題と認識されているグリーン投資にかかるデータの透明性やデータ収集にかかる作業の煩雑性に対し、ブロックチェーンなどデジタル技術を活用して、透明性の向上及びデータ収集の効率化を目指す仕組みとなっている。
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JPXの動向
JPXはこれまでにもブロックチェーン関連の研究・取り組みを行ってきた。
2017年には、証券ポストトレード業務へのブロックチェーン・分散型台帳技術の適用の検討を始め、ブロックチェーン技術を活用した顧客確認(KYC)業務の実証実験を14社の金融機関とともに開始。
2020年3月では、証券保管振替機構(ほふり)や野村証券、三菱UFJ銀行など19社の金融機関とともに、投信信託における事務作業の効率化を図る手段としてブロックチェーン技術を活用する実証実験を実施した。
そして21年11月に行われたグループの組織再編では、「株式会社JPX総研」という子会社を設立。背景として国内でブロックチェーンなど新しいデジタル技術を活用した市場創設の動きがみられるなど、急速に環境が変化していることを挙げた。
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