制裁準拠かステーキング事業停止か、コインベースCEOがPoS版イーサリアムへの葛藤示す
制裁準拠かネットワーク尊重か
米国の主要な暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースのBrian Armstrong CEOは19日、イーサリアム(ETH)のステーキングプロバイダーの立場から、当局の制裁措置への対応方針について言及。
「制裁に準じてネットワークを検閲する」よりも、「イーサリアムのステーキング事業を停止する」方を選択する意向を表明した。
発端は、米財務省がTornado Cashを利用したウォレットアドレスを8月初旬に制裁リストに追加した件について、イーサリアム開発者のLefteris Karapetsas氏がCoinbaseや米Krakenを含む集権型のステーキングオペレーターに投げかけた2択の質問だ。
Karapetsas氏は規制当局がバリデーターに対してイーサリアムをプロトコルレベルで検閲するように要求した場合、どう対処するかとして以下2つを挙げた。
- A:制裁に準じてネットワークを検閲する
- B:ネットワーク正当性を保護するため、ステーキング事業を停止する
この件は、中央管理者が不要で、サービスを止めることができない(検閲耐性)点を理想とする分散型ネットワークに、主要な事業者がどのように関与するかが焦点となっている。
前提として、9月15日前後に暫定的に予定されている「マージ」を迎えると、イーサリアムは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」ビーコンチェーンを統合し、完全なPoSに移行する。PoSでは、ETHをステークするノード(コンピューター)がトランザクションを検証し、ブロックを生成して報酬を得る「バリデーター(承認者)」の役割を担う。
そして、イーサリアムのPoSビーコンチェーンにおいて、Coinbaseが提供するステーキングサービスは14.7%のシェアを占めており、Lido(31%)やOthers(25.5%)に次いで主要なステーキングノードとなっている。
主要なステーキングプロバイダー
特に、ステーキングサービスはNASDAQ上場企業Coinbase(COIN)の主要事業の一つであるため、Armstrong同氏の発言は特に株価の面でも注目を集めた。
今週の顧客向けメモで、J.P.モルガンは「イーサリアムのステーキングサービスにより、マージはCoinbaseの株式(COIN)にとって強気」と指摘した。Coinbaseもまた、8月上旬に機関投資家向けにイーサリアムのステーキングサービスを提供し始めたことを、1週間前に株主に伝えていた。
Armstrong氏は制裁を受けたウォレットアドレスとの取引を検閲しない方針を示したが、「もっと良い選択肢(C)があるかもしれないし、より良い結果を得るために法的な挑戦ができるかもしれない」とも加えている。
分散型プロジェクトに対する制裁措置の法的妥当性を巡る議論も起こっている。米シンクタンク「Coin Center(コインセンター)」は15日に発表したレポートで、米財務省外国資産管理局(OFAC)が、自発的なコードを人間のように扱ったことは、法定権利を超えていると指摘した。
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ステーキングとペナルティ
最後に、「ネットワークを検閲する」という選択肢そのものが、イーサリアムのステーキングにおいてナンセンスとする指摘もある。Arcane AssetsのEric Wall最高投資責任者(CIO)は、そのような選択肢を支持する事業者があれば、ステーキングを完全にやめる必要があると説いた。
Coinbase、Krakenなどに、米国の財務省外国資産管理室(OFAC)への準拠は選択肢にないことを理解させよう。それは、顧客の預けた資産を削減させ、事業終了につながる。検閲への抵抗を支持するつもりがないなら、今すぐアンステークさせたほうがいい。
マージ後のイーサリアムにおいて、ネットワークの正当性を脅かすバリデーターの行為はスラッシュ(Slash)と呼ばれるペナルティを科され、ステーキングしたETHを削減される可能性がある。
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