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金商法移行で仮想通貨業界はどうなる? 有識者に聞くポジティブな影響と懸念点

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

暗号資産業界を規制する法律が、資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行する方針だ。2026年度税制改正大綱に盛り込まれた申告分離課税導入の前提条件としても、金商法改正が明記されている。

資金決済法は2017年施行当時、暗号資産を「決済手段」として位置づけていた。しかし市場の実態は投資・資産運用が中心となり、法規制と現実の乖離が課題となっていた。金商法への移行により、暗号資産は株式や債券と同じ「金融商品」として扱われることになる。

この法的枠組みの転換は、業界にどのような影響をもたらすのか。規制強化による投資家保護の充実が期待される一方、事業者のコスト増加や新規参入の障壁といった懸念も指摘されている。

本特集では、業界リーダーへの取材を通じて、金商法移行がもたらすポジティブな側面と懸念点(課題)を多角的に検証する。

「金商法移行」への期待と懸念

※名前は五十音順、敬称略
小田玄紀 @genkioda
SBIホールディングス常務執行役員|JVCEA代表理事
ポジティブな影響
日本の暗号資産口座数が1300万口座を超えるまでになったとはいえ、暗号資産はこれまでは金融商品としての評価は受けてこなかった。今回、金商法となることで個人所得税が分離課税になったり、暗号資産ETFの解禁やレバレッジ倍率の見直しなどが進んでいくことが期待される。かつては日本の暗号資産市場シェアは世界全体の50%近くあったが、今ではたった1%となってしまった。一連の改正が進むことで、市場シェアが15~20%近くなる可能性もあり、このことで日本の暗号資産市場が活性化するだけでなく、日本の経済・財政にも貢献できると考えている。
懸念点
事業者の中には金商法移行に耐えられない事業者がいるかもしれない。しかし、法律・ルールで求められることを遵守することは事業者として当然に求められることであるため、適切な対応を求めていきたい。また、JVCEAとしても金商法における認定自主規制団体となるため、これまで以上に抜本的なガバナンス体制の強化を実現していく必要がある。
加納裕三 @YuzoKano
bitFlyer Holdings 代表取締役CEO|JBA代表理事
ポジティブな影響
金商法への移行は業界全体の信頼性向上に繋がる重要なステップだ。規制が整備され、取引所は厳格な法的枠組みの下で運営されるようになる。規制整備により、機関投資家や金融機関を含む投資家層が拡大すると考えられる。また、消費者保護や市場操縦、不正取引の防止が強化され、公正でフェアな取引環境が提供され、市場の成熟が期待される。さらに、暗号資産取引から生じる所得に分離課税が適用される方針も示され、影響は大きい。
懸念点
金商法への移行により、暗号資産交換業者の規制対応コストは増加する。特に中小の取引所にとっては、コンプライアンス体制の強化が経営負担となるだろう。また、これまでも暗号資産デリバティブは金商法下で運用されていたが、暗号資産現物も金商法の下で整理されることで、様々な論点が浮上する可能性がある。利用者保護を第一にしつつも、イノベーション促進の観点から業界全体として丁寧な整理を継続していきたい。
齊藤達哉 @tatsu_s1203
Progmat 代表取締役CEO
ポジティブな影響
大手金融グループから暗号資産ETFが提供される。中小独立系の暗号資産交換業者の一部は大手傘下入りし、カストディ前提の投資家の取引安全性が向上する。既存金融商品と暗号資産の垣根が低くなり、TradFiのDeFi拡張が進む。
懸念点
規制業者による暗号資産取引(CeFi)は、既存金融商品と同様、取引安全性・公平性が最重視される。したがい、イノベーションの中心地はDeFiがほぼ唯一の選択肢に。DeFi規制も重くなると、革新的な体験創出は絶望的になる。
白石陽介 @YosukeShiraishi
ARIGATOBANK 代表取締役|JCBA副会長
ポジティブな影響
一年以上にわたり金融庁と議論を重ねてきた。税制改正を実現するには、暗号資産が国民の資産形成に資する健全な資産クラスとなることが必要であり、ガバナンスやセキュリティ、投資家保護、顧客本位の業務運営の高度化が欠かせない。今回の改正で市場の公平性・透明性と業界の規律水準が高まり、新たな投資家層の参入が期待される。また、web3関連事業者にとっても、国内でのトークン発行・流通の論点が整理され、日本市場での展開可能性を評価しやすくなる。
懸念点
暗号資産が国民の資産形成に資する健全な資産クラスとして定着するためには、金商法における位置付けが不可欠である一方、金商法移行に係る実務負担は大きく、コスト負担と審査の高度化によるIEOや新規上場銘柄数の減少という両面から事業基盤が圧迫され、業界の再編が進む可能性がある。また、この過程では、web3事業者による国内でのトークン調達が抑制され、日本発のweb3サービスが海外やDeFiでの展開や上場を優先する動きが強まることを懸念している。
廣末紀之 @bitbank_inc
ビットバンク 代表取締役社長CEO|JCBA 会長
ポジティブな影響
金商法に移行することで、投資家保護が強化され、より信頼性の高い利用環境が整備される。また、同じ法体系の中で、暗号資産業界と既存金融業界との接続が進むことで、ETFなどの金融商品の誕生や既存アセットクラスのトークン化(RWA)の流れが加速し、新しいタイプの金融商品の登場が期待される。
懸念点
法施行までの時間が限られている中で、情報開示や不公正取引対応、セキュリティ水準の更なる向上など、個社だけでなく業界全体で整備する必要があり、全体としての態勢整備が間に合わない可能性がある。また、流出リスクに対する責任準備金の決定方式次第で、事業者の財務負担が増加する可能性がある。
渡辺創太 @SotaOnchain
Startale Labs CEO
ポジティブな影響
金商法により暗号資産のアセットクラスとしての進化と機関投資家の参入が期待される。
懸念点
過度な規制はイノベーションを衰退させるため、アメリカをベンチマークにアメリカよりも厳しい規制を作らないことが何よりも重要である。

今後の展望と課題

2026年度税制改正大綱により、暗号資産の制度整備は新たなフェーズに入った。申告分離課税20%と3年間の繰越控除が明記されたことで、日本の暗号資産市場は大きな転機を迎える。小田氏が指摘するように、暗号資産業界における日本市場のプレゼンスは相次ぐ規制強化で大きく縮小してきたが、制度整備が進めば、再び成長が期待される。

一方で、金商法移行に伴う実務負担の増大は業界再編を促す可能性がある。廣末氏は法施行までの時間的制約と態勢整備の課題を、加納氏は中小取引所のコンプライアンス負担を、白石氏はIEOや新規上場銘柄数の減少とweb3事業者の海外流出をそれぞれ懸念点として挙げた。

また、海外事情を熟知する渡辺氏は、米国をベンチマークに過度な規制偏重を避け、国の将来を担うスタートアップ企業を念頭にイノベーションを促すことの重要性を指摘した。

なお、暗号資産の申告分離課税については、金商法改正との連動や制度整備の進捗により、適用開始時期が変動する可能性がある。詳細は今後の国会審議等で明らかになる見込みだ。

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